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強い抗酸化力で注目される希少サプリメント成分 アスタキサンチンを核としたヤマハ発動機・バイオ事業の新たな展開について "世界初の培養技術"で高品質・安定供給を可能に

2005年07月6日発表

ヤマハ発動機株式会社では、1997年からバイオテクノロジー関連領域の研究開発を独自に進めてまいりました。その新たな展開として、数ある天然由来の物質の中でも特に強い抗酸化力を有することで注目される「アスタキサンチン」に着目し、このたび、これまで難しいとされてきた高品質で安定供給が可能な世界初の屋内培養による量産体制を確立しました。当社では、バイオ事業の新たな展開として、サプリメントメーカーや食品メーカー、化粧品メーカーなどに、アスタキサンチンの原料を供給するビジネスを、2005年より限定販売、2006年10月より本格販売を開始してまいります。

当社では、地球温暖化など環境問題への対策として、二酸化炭素(CO2)の低減を目指したエンジンの開発や燃費性能の向上(省燃費)、電動ビークルや燃料電池の開発など製品面での工学的研究を進める一方、約8年前から微細藻類を活用しCO2を吸収する技術(植物の光合成機能)に着目し研究を続け、一定の成果をあげてきました。さらに、このCO2吸収技術の研究開発過程に おいて、新たなバイオ事業展開の着想も得ました。それが、光合成によってつくられた機能性物質の有効活用であり、アスタキサンチンもそのひとつです。


アスタキサンチンは、微細藻類のヘマトコッカス藻等に含まれる抗酸化成分です。その強力な抗酸化力によって、抗炎症作用、免疫力の強化、皮膚の老化(シミ・シワ)抑制のほか、筋肉疲労の改善など多岐に渡る効果が期待され、健康食品市場だけでなくスポーツ市場、美容市場などでも注目されています。

当社では、このヘマトコッカス藻を人工光および高度な流体制御 技術を用いて屋内で培養する世界初の生産システム「ヤマハ高効率バイオリアクター」を開発。これによって、アスタキサンチンをより高濃度で含有するヘマトコッカス藻を、高品質かつ安定的に培養することが可能となりました。


また、アスタキサンチンの抽出工程では日清オイリオグループ株式会社とアライアンスを組み、現在、市場に流通している濃度5%抽出物より高い8%以上のものを提供可能とする体制を実現させました。このように、ヤマハのアスタキサンチンは、高品質のものを安定的に供給できることが 大きな特長です。当社は、年内より原料の限定販売を開始する一方、一般消費者向けサプリメントの先行販売を同じく年内を目途に進めてまいります。


この事業展開にともない、静岡県袋井市に取得した約3万7千m2の土地に建設中の、ヤマハバイオ事業の研究開発拠点となるライフサイエンス研究所(延床面積約3,000m2が今年7月26日に竣工。さらに、来年10月には、同敷地内に大規模生産工場も完成し、本格的な量産体制が整います。

当社では、今回のアスタキサンチン関連商品での 健康食品分野への参入を契機に、より一層研究開発に注力し、バイオ事業の本格的展開を図ってまいります。

バイオ事業の研究開発拠点
ライフサイエンス研究所



次の半世紀に向けた“挑戦”

当社は、去る7月1日に創立50周年という大きな節目を迎えました。1955年の創業以来、この半世紀は、企業目的である「感動創造企業」の実現を目指し、絶えず新たな夢と目標に取り組んできた“挑戦”の歴史でした。二輪車事業を皮切りに新たな“挑戦”が、事業の多軸化を推進し、多彩な事業分野で「新たな価値の創造」を生み、市場ニーズに適合する製品やサービスを提供できる今日のグローバルカンパニーとしての基盤を築いてきました。
50周年を迎えた今、当社は、新中期3ヶ年の経営計画“NEXT50-Phase”を本年より推進し、前中期3ヶ年で培ってきた「収益重視の企業体質への転換」に加え、「価値」「収益」「成長」のバランスのとれた経営戦略を進め、世界各国で“オンリーワン・ブランド”となることを目指しています。
今回のバイオ事業は、これら3つの経営課題のひとつである「成長」を図るための新規事業のひとつであり、また次の半世紀に向けたヤマハの新たな“挑戦”です。



■アスタキサンチンとは?

アスタキサンチンは、カロティノイドの一種で、赤い色をした天然色素成分です。ヘマトコッカス藻などの微細藻類に多く含まれるほか、オキアミやサケ、エビなどの甲殻類や魚類まで、自然界に 幅広く分布しています。
アスタキサンチンは、活性酸素・フリーラジカルを消去する抗酸化能力を持っています。活性酸素・フリーラジカルは体内において過剰に発生すると、老化や生活習慣病につながる危険性が指摘されています。過剰な活性酸素・フリーラジカルの消去によって、こういったリスクの軽減が見込まれ、さまざまな効果が期待されています。



■ヤマハバイオ事業における3つのキーテクノロジー

当社では、環境問題への対応として、より高効率にCO2を吸収するため、(1)高性能な微細藻類の探索と育種、(2)培養水の構成成分を最適条件とする水環境制御技術、(3)高効率で高濃度の 大量培養を可能とする光合成装置の開発・制御技術を開発しました。これら3つのキーテクノロジーが統合され、現在のバイオ事業の礎となっています。



■“世界初”屋内培養による量産体制の確立

当社では、ヘマトコッカス藻の育成において、当社が固有に培ってきたバイオ事業における3つのキーテクノロジーを活用し、世界初の生産システム「ヤマハ高効率バイオリアクター」の開発に成功しました。

バイオリアクターは、高さ約2m、長さ約9mのプレート形状で、内部は大量のヘマトコッカス藻が浮遊する培養液で満たされています。光合成は、「明反応」と「暗反応」のふたつの反応で成り立ち、この明反応と暗反応を適切な周期で繰り返すことが重要です。高効率バイオリアクターでは、側面から人工光を照射し、適度に培養液を攪拌・流動させることで、その周期をコントロールし、高効率の光合成を実現しています。
この様に、人工光を光源とし屋内型にしたことで、季節や天候の変化に左右されず、常に最適な光量を照射することが可能となりました。また、密閉式のため外的要因による培養液の汚染等のリスクもなくなり、高度な衛生管理のもとに高品質なヘマトコッカス藻の安定的な生産を可能にしました。
現在、袋井市に建設予定の大規模生産工場においては、このヤマハ高効率バイオリアクターを用いた生産体制を構築いたします。

新たに開発された
ヤマハ高効率バイオリアクター


光合成は、光エネルギーを利用して水を水素と酸素に分解すると同時に、酵素タンパク質の働きで化学エネルギーを生成・蓄積する「明反応」と、蓄積された水素と化学エネルギーと大気中から取り込んだCO2を使って糖、タンパク質など高付加価値物質を合成する「暗反応」(光エネルギーを必要としないのでこう呼ばれる)に分けられます。



■独自の製造技術により高品質なアスタキサンチンを安定的に供給

大量に培養されたヘマトコッカス藻は、分離、乾燥、破砕、抽出、ろ過といった製造工程を経て、高濃度のアスタキサンチンを含有する抽出物として商品化されます。このうち、屋内培養から破砕までを当社が、抽出以降をアライアンス先である日清オイリオグループ株式会社がそれぞれ担っています。アスタキサンチンは、抗酸化作用が強いという特長を有するが故に、酸化(劣化)しやすいという側面がありますが、当社は、高度な技術によって、高い品質を保ちながら商品化することを可能としました。工場では、医薬品と同等レベルの製造管理基準(GMP)の適用を目指し、培養から製品出荷まで生産出荷履歴を一貫して管理するトレーサビリティを確立します。

アスタキサンチンの製造工程



■アスタキサンチンの健康機能を研究

当社では、アスタキサンチンの有効性を検証するための研究にも取り組んでいます。独自に研究を進めるほか、バイオマーカーサイエンス社他の協力を得て研究ネットワークを構築しており、研究成果は、関連学会等で積極的に発表していきます。



■過去から未来へ 飛躍するヤマハのバイオ事業

当社では、バイオ事業をステージ1からステージ3までの3段階にわけて、展開しています。
まず、ステージ1において、希少水産飼料の開発に着手し、事業化に向けた第一歩を踏み出しました。高濃度での大量生産が非常に困難とされていた貝類・甲殻類の水産飼料「キートセラス藻」を、従来培養技術の6倍(6000万セル/ml)まで高濃度化し、効率的に大量培養することに成功しております。
そして、今回のアスタキサンチンによる事業展開がステージ2です。ステージ2では、アスタキサンチンのほか、甲殻類アレルギーのない藻類由来の「キチン」など様々な有用物質の研究開発・事業化も進めています。
ステージ3では、さらに技術開発、研究開発を重ね、新たな展開を計画しています。

当社では、このヤマハバイオの先進技術を活用し、企業目的である『世界の人々に新たな感動と豊かな生活を提供する』ために、国内のみならず、将来はグローバルに事業を展開し、10年後の売上高300億円を通過点とし、更なる拡大を目指してまいります。


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