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東京国際ボートショーにコンセプトモデルを参考出品 「16フィートトレーラブルボート」(新構造艇) 「UMV」(Unmanned Marine Vehicle)

2004年02月05日発表

 ヤマハ発動機株式会社では、マリン部門の最新技術を投入したコンセプトボートを第43回東京国際ボートショー(2月5日~8日/幕張メッセ)のヤマハブースに参考出品する。
 展示する参考出品モデルは新しい発泡構造「FOAMAP(フォアマップ)」(一体成型三重構造)によって製造した「16フィートトレーラブルボート」と自律航法システムを搭載した「UMV(Unmanned Marine Vehicle)」の2モデルで、特に「16フィートトレーラブルボート」については今春の商品化に向け(4月発売予定)、開発に取り組んでいるものである。



「16フィートトレーラブルボート」
 FOAMAP(一体成型三重構造)を導入し、開発したスタイリッシュなフィッシングボート。浮力と強度アップによる安心感の向上、高剛性化による乗り心地の向上を高いレベルで実現した。シーバスをはじめとするスポーツフィッシングに対応した多様な艤装が可能。センターコンソール、サイドコンソール、コンソール無しの3種類から好みのレイアウトを選択できる。

「16フィートトレーラブルボート」

全長

4.8m

全幅

1.9m

最大搭載馬力

44.1kW(60ps)



「UMV(Unmanned Marine Vehicle)」
 高度な自律航法システムにより、40ノットでの無人航行や遠隔操縦を可能とし、悪天候や危険区域での監視、測量等に安全性と省力化を提供する。エンジンの起動/停止、ステアリング、スロットルの遠隔操作が可能。またビデオカメラ等を搭載し、それらを遠隔操作して、静止画像や動画を陸上の基地局に送信することもできる。また有人での操船、航行も可能である。

「UMV(Unmanned Marine Vehicle)」

全長

4.44m

全幅

1.84m

最大搭載馬力

89.7kW(112ps)



参考1:16フィートトレーラブルボートに導入したFOAMAPについて

 「16フィートトレーラブルボート」は独自の「FOAMAP(フォアマップ)」(一体成型三重構造)によって製造したハルを採用している。


FOAMAPとは

 FOAMAPは、FRP積層板の間に高圧でウレタンを注入して一体成型したFRP+高密度ウレタンの三重構造で、従来のFRP単板構造やサンドイッチ構造に比べ、浮力、剛性の面で優れた特性を発揮する。
 こうしたことからFOAMAPを導入したボートは「安心」「快適」「便利」をユーザーに提供する。
 まず「安心」の面では三重構造となっているため艇体を傷つけても開孔しにくく、万が一、その一部が開孔し、浸水しても自走による帰港が可能なほどの浮力を有する。
 「快適」の面ではウレタン発泡体が充填されていることにより、波をたたく音が伝わりにくくなっている。
 「便利」の面では構造部材が不要なため、余裕の空間を提供できる。「16フィートトレーラブルボート」では、ワンクラス上の大型イケスの採用を可能にした。


FOAMAPの技術的特徴

 FOAMAPの技術的な特徴はハルの断面にある。デッキの下部全体にウレタン発泡体を充填したハル構造とせずに、FOAMAPではFRP外皮とFRP内皮で作られる厚みを出来る限り薄くし、浮力を確保するのみならず空間を得ることを狙った。そのためにウレタン材料やFRPの成型方法もFOAMAPのために改良、新たに開発した。その材料試験の結果をもとに構造解析を繰り返し、浮力と空間を確保する一体成型三重構造FOAMAPを作りあげた。


環境対応の面でも貢献

 FOAMAPによるハルの製造工程では2次接着工程を省略できることなどから、製造工程上発生する環境有害物質(VOC)を削減する、という地球環境の面においても大きな効果が得られる。また作業時のサンディングによる粉塵の減少の効果もあり、作業環境の改善にも効果がある。
※FOAMAP(フォアマップ)は「Foam Manufacturing Process」を語源とする造語。



参考2:UMVに導入した自律航法システムについて

 UMVは当社の無人ヘリコプターで定評のある自律航行システムをボートに移植し、自律航行と遠隔操縦を可能にした無人ボートである。当社ではすでに無人計測システムを搭載した低速・海洋型UMVを開発し(「かんちゃん」・東海大学所有)、2001年5月から2003年11月にかけての太平洋の無人観測航海において実績を納めた。今回ボートショーで参考出品するのは高速型のUMVで、40ノットの自律航行を可能にしたものである。用途としては海底火山など危険区域での探査や水質調査など広範囲での活用が見込まれている。


高速型UMVの基本性能

 東京国際ボートショーで展示している「UMV」は全長4.44mの艇体に89.7kW(122馬力)のエンジン、ウォータージェットを推進機とするパワーユニットを搭載している。パソコンと無線通信、GPS等の機器の組み合わせにより自律制御ユニットを操作することでプログラム航行、リモコン操縦が行え、40ノットの自動航行を可能とした。また、有人でのマニュアル操縦も可能である。
 エンジンの起動・停止の遠隔操作、ステアリング、スロットル、リバースバケットの操作はもちろん、風浪状態によって自律精度を調整することもできる。また仕様や目的に合わせ前方監視ソナー、ビデオカメラ等、各種センサが搭載でき、それらを遠隔操作し、静止画像や動画を陸上の基地局に送信することもできる。


自律航行/遠隔操作の仕組み

 UMVは無人ヘリコプターで培った技術をボートに応用したものである。基地局側の設定用パソコン、基地局コントローラー、無線通信システム、また海上側の自律制御ユニット、無線通信、カメラ、GPSシステムなどのうち、特に自動制御ユニットのソフトについて、UMV独自の工夫を施した。「自動制御ユニット」は基地局コントローラーからの指令やGPS等の情報を受け、アクチュエーターを操作し、ジェットボートのシステムやエンジンを制御するユニットである。制御ソフトはヤマハの約45年間に及ぶ小型高速ボート技術を凝縮したもので、特に保針性や自律航行時の安定性において優れている。風や波、潮流の影響を受けやすい小型ボートの特性を考慮した自律航行ソフトウェアは、UMVとして高い完成度を誇る。


艇体設計における技術

 UMVの開発に当たっては、制御ソフトの他、艇体についても「無人航行に適した船型、デザイン」を意識している。既に実用化した「かんちゃん」の艇体は当社のデザインしたセイリングクルーザーをベースに開発したものだが、上部構造物の形状、配置、舵やキール(センターボード)の位置などを決定する際、プレジャーボートの設計技術が大いに生かされた。今後の高速型UMVの実用化においても目的や用途によって同様のノウハウが注ぎ込まれることになる。


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