ヤマハ発動機(株)は、9月16日から開催の第60回『ミラノショー』(チクロ・エ・モトチクロ)において2004年欧州向け新製品、ヤマハ「Majesty400」を発表展示しました。新設計水冷4サイクルDOHC単気筒400cc・4バルブ・フュエルインジェクション採用CVTエンジンを搭載した次世代スポーツセダンです。
96年から欧州市場に導入の250ccスポーツセダン「Majesty」は、「スタイルの良さ」「スポーティな走り」「優れた居住性と実用性」などが評価され市場を牽引しました。その後本モデルはエンジン性能改良、新設計ボディ採用で熟成を図った第2世代Majestyへと進化し99年9月発表、翌年市場導入し引き続き幅広いお客様から支持を得ました。
今回の「Majesty400」は、上記の優れた扱い易さをそのままに『走行性能革新』をテーマとし高速域での一層の快適な走行性を達成するために、エンジン・車体とも全面新設計を行なったモデルです。「最速ミディアムコミューター」を提唱する第3世代Majestyとなります。
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2004年欧州向けモデル
ヤマハ「Majesty400」 |
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名称 |
ヤマハ「Majesty400」 |
発売日 |
2004年2月(欧州の各販売会社により異なります) |
カラーリング |
■シルバー3
■ダークパープリッシュブルーメタリックL
■ダークブルーイッシュグレーメタリック8 |
販売計画 |
10,000台(EU圏内、2004年・年間) |
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市場背景と製品概要 |
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欧州の126cc以上のスクーター市場は年間24万台規模で推移しています。特に欧州スクーター需要の中心であるイタリアにおいて、「Majesty」(250cc)は初代モデル投入以降、高い人気を保っています。(1)信頼性、(2)収納性、(3)品質、(4)快適性、(5)市街地での扱い易さ、(6)存在感のある外観スタイルなどが好評で、40歳前後のお客様を中心に幅広い需要があります。
「Majesty」の登場を契機に、各社からライバル車が投入されていますが上記の理由から「Majesty」は根強い人気を維持しています。しかし直近の市場では、大径ホイール採用モデルや250ccを超える大排気量モデルの人気が示すように、ベルジャン路や高速路での走行性向上を求める声が強く聞かれています。
この背景からヤマハは、次世代「Majesty」の新しいコンセプトを、『走行性能革新』と定め“
市街地から高速までストレスを感じさせない動力性能と操縦安定性”及び“快適性・利便性”の高次元でのバランスを照準に開発を行ないました。具体的には、(1)150Km/hでの高速巡航が可能な動力性能、(2)石畳路や悪路での高い走破性、(3)次世代スポーツセダンを象徴するスタイル、(4)長距離走行で疲労の少ない居住性と良好な収納性・・・・・これらを達成し、「Majesty」の新しい世界の提唱モデルとして開発しました。
上記のコンセプトに沿って、新Majestyでは400cc・DOHC単気筒・フュエルインジェクション採用CVTエンジンを新開発し搭載しました。更に前14・後13インチタイヤの設定、最適ディメンション、CFアルミダイキャストを投入した新フレーム・・・・これらの相乗効果によりクラスを超えた動力性能と斬新なデザイン、実用性を高次元のバランスで達成しました。現行モデルの扱い易さをさらに熟成させつつ、TMAX並みのパワーウェイトレシオをコンパクトボディに凝縮させた
“最速ミディアムコミューター”を具現化させています。
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主な特徴 |
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エンジン関連 |
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1)鍛造ピストン採用、新開発DOHC単気筒エンジン
全面新開発の水冷4サイクルDOHC400cc単気筒4バルブCVTエンジンを採用しました。フュエルインジェクションとの最適化を図った4バルブ及びペントルーフ型燃焼室、83×73・のボア・ストローク、10.7:1の圧縮比から最高出力34.0PS(25.0kW)/7,500rpmと最大トルク3.7kgf・m/6,000rpmを発揮します。なおピストンには耐熱強度に優れ小型設計が可能なアルミ鍛造ピストンを採用し、往復重量低減によるスムーズな出力特性を実現しました。
2)滑らかな加速性と信頼性に優れたメタル軸受けクランクジャーナル
高い信頼性を確保するためクランクジャーナル軸受けにブッシュタイプのメタル軸受けを採用しました。(現行はボールベアリング型)これにより、特に加速時の滑らかなフィーリングを達成、また加速騒音低減による快適な走行性を提供しています。
3)サクションピストン併用の小型設計フュエルインジェクション(以下FI)
優れた吸気効率とレスポンスを両立させるために、「YZF-R1」「YZF-R6」にも採用して定評のサクションピストン併用FIを採用しました。負圧差で作動するフリーピストンの動きを利用し、低速からの吸入空気量を最適に制御できるのが特色です。これで自然吸気の滑らかさのあるレスポンスと、電子制御によるリニアなレスポンスを両立。優れた燃費性、信頼性を確保しています。
センシング部と燃料供給系の最適小型設計も、この新FIの特徴です。一般の4気筒モーターサイクル用のFIでは、クランク角センサーや気圧センサーなど多くのセンシングが必要となりますが、新「Majesty」のFIでは吸気管内の圧力変位〈動的変化〉が大気圧・スロットル開度と連動する点に着目し、ひとつのセンサーからの情報を多目的に活用するシステムを構築しました。センシングは5個だけのシンプルな構成を採用。燃料供給系には、新設計した小型燃料ポンプを採用、レギュレーターやフィルターを一体設計して部品点数を最小限として小型化を図りました。
なおインジェクターは12穴2方向噴射として最適な燃料供給を実現しました。さらに燃料供給系はリターンレス配管としてシンプル化・軽量化を促進させました。
なおFI採用との最適マッチングを図るため、ヤマハ単気筒モデル初となる左右分割式の合計8.5L容量エアクリーナーを採用、優れた低中速の特性とレスポンスを実現しています。
4)優れた信頼性を引き出すザイロン材(※)織込みVベルト
上質で滑らかな走行フィーリングと信頼性を確保するために、次世代スーパー繊維と呼ばれ衝撃吸収性、引張弾性、高強度に優れる「ザイロン」(※)材を含有させたVベルトを採用しました。(※ザイロンとは、東洋紡の商品名)また、優れた加速性能・走行性能のポイントとなるVベルトケースは、最新設計により冷却用の外気吸入効率と、防水性を両立させました。
5)高効率小型マグネトー採用
FIおよびH4-2灯同時点灯採用による必要電力アップに対応するため、フェライト系高効率小型マグネトーを採用しました。新磁気回路採用および構成部品の寸法・形状・材質の最適化によって、発電中のロス低減が可能となり、出力アップを実現。従来同サイズながらも発電電流で2~3割アップを実現しました。
6)その他エンジン関連の特徴
この他、(1)走行風を冷却に効果的に活用するフートレスト下配置ラジエター、(2)オイル劣化を最小限に押さえる1800ccエンジンオイル量設定(現行Majesty=1400cc)、(3)整備性を配慮したサイドドレンボルト、(4)優れた始動性を引き出すオートデコンプ、(5)優れた環境性能を実現するエアインダクションシステム・酸化触媒(EU-2排ガス規制適合化)などを採用しました。 |
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車体関連 |
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1)優れた剛性バランスを実現した新フレーム
走行性・操縦安定性の基本となるフレームには、前後2分割アルミ材をアッパーフレームに採用する新設計フレームを採用しました。アッパーの前方には中空形状金型鋳造アルミを採用し最適な剛性・強度を確保する一方、中央から後部にかけてはヤマハ独自開発のCFダイキャスト(YZF-R6車体用に開発された靭性が高く耐食性のよいアルミ合金)を投入、相互を溶接した2分割構造となっています。またロアフレームにはスチール材を投入するなど、各部に求められる強度と剛性に対し、適材を最適加工で投入したフレームは、現行比でねじり剛性86%アップ、縦剛性54%アップとなる剛性バランスを実現し、優れた走行安定性に寄与しています。またこの新フレームは、ワイドな骨格が特徴で余裕の収納スペース確保をもたらしています。
2)低振動、滑らかな走行性を実現するリンク式エンジンマウント
エンジンの懸架は、スペース効率に優れるユニットスイングを採用しました。またリンク式エンジンマウント方式を新たに採用し、1軸バランサーとの相乗効果で低振動を実現しました。
このリンク式のマウントは、ユニットスイング部を支える左右2個のリンクに衝撃吸収用のコンプレッションロッドを内蔵させた仕組みで、これによりニットスイングの挙動安定化を促進。高速走行、加減速時の滑らかな走行性を引き出しています。(現行はコンプレッションロッドとユニットスイングを支えるリンクを別体)
3)快適な乗り心地を引き出す前後サスペンション
フロントフォークは41・径インナーチューブを採用、ステアリング部は35・径を採用して優れた剛性バランスを確保。クッションストロークは現行比で2割アップの120・を確保しました。更にアンダーブラケット軸受け部はテーパーローラーベアリングを採用し、摺動抵抗低減による滑らかな操舵フィーリングを実現しました。一方、リアサスペンションはロッド径12.5・の大型サイズを採用、ホイールトラベル現行比20%アップとなる104・を確保して快適な乗り心地を実現しました。
4)前14、後13インチタイヤ設定、及び新デザインキャストホイール
優れた高速走行と市街地での扱い易さをバランスさせるために、タイヤは前輪120/80-14、後輪150/70-13を採用しました。(現行=前110/90-12、後130/70-12)また新設計ホイールは、リム部裏側の板厚に抜き加工を行ない軽量化し最適な強度バランスを達成するもので、大径イメージを強調するデザインが特徴です。リア13インチ設定ながらも、スペース効率の追求で高い収納性を両立させています。
5)ロー&ロングのボディと新型スクリーン
水平基調ベースの“ローアングル&ロングボディ”の中に、“走行革新”“快適性”を印象付ける新スタイルを採用しました。フロントマスクは、逆三角形イメージの中に一目で「Majesty」と分かる新デザインを施しました。(1)視認性の向上および照射性に優れたヘッドライト(60W/55W・H4バルブ)廻りのデザイン、(2)プロテクション効果を実現しつつマスクを小さく印象づける処理、(3)ラジエターへの空気の流れを印象づけるフェンダーデザイン、などが特徴です。
リア廻りは、(1)前から後へエアがスムーズに流れるイメージを演出したデザイン、(2)タイヤの曲面に沿ったリアフェンダー廻りの処理、などを行いこれらのバランスが新Majestyを象徴するリアビューとなっています。なおLEDランプ採用はデザイン自由度が広がり、リアビューの特徴に繋がっています。
さらにカウリングとスクリーンは最新の流体解析技術の投入で開発し、優れたライダープロテクション効果とエアマネジメントを高次元で調和させました。カウルとスクリーン間に隙間を設け走行中に風の流れをマネージメントし、ライダー及びタンデムライダーへの風の巻き込みを押さえ、風きり音の少ない優れた快適性を実現しています。
6)大容量収納スペース
新フレームの採用で優れた収納性を確保しました。シート下は約59L(フルフェイスヘルメット2個またはフルフェイス1個+A3版のバッグ収納可能)、フロントインナーボックスは右1.9L、左8.6Lの容量を確保。収納容量は合計69Lで、現行比3Lの容量アップとなっています。
7)イモビライザー標準装備などその他の特徴
このほか、(1)キーエントリー式イモビライザー、(2)タコメータ付きのマルチファンクションメーター(液晶表示で水温計、外気温表示などが可能)、(3)ワンチャージ300kmを目安にできる14L燃料タンク、(4)ナイロン樹脂製グラブバー、(5)タンデムライダーの足載せ特性に優れたフートボード、(6)乗降性&足つき性に優れた新シートなどを採用しました。 |
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2004年欧州向けモデル
ヤマハ「Majesty400」仕様諸元 |
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全長×全幅×全高
シート高
軸間距離
乾燥重量
原動機種類
気筒数配列
総排気量
内径×行程
圧縮比
最高出力
最大トルク
始動方式
燃料タンク容量
燃料供給方式
タイヤサイズ(前/後) |
2,230mm×780mm×1,380mm
750mm
1,565mm
197kg
水冷・4サイクル・DOHC・4バルブ
単気筒
395 cm3
83.0×73.0mm
10.6:1
25.0kW(34.0PS)/7,500rpm
36.3Nm(3.7kgf・m)/6,000rpm
セル式
14L
電子制御フュエルインジェクション
120/80-14MC 58S/150/70-13MC 64S |
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