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新開発オールキャスト製フレームにラム圧併用インジェクションエンジン搭載 2003年欧州向けニューモデル ヤマハスポーツ「YZF-R6」 『インターモト・ミュンヘン2002』で発表

2002年9月11日発表


 ヤマハ発動機(株)は、来る9月18日から5日間にわたり、ドイツで開催される『インターモト ミュンヘン 2002』(第3回国際オートバイ・スクーター専門見本市)において、2003年欧州向けニューモデル、ヤマハスポーツ「YZF-R6」を発表展示します。(プレスデーは17日) なお本モデルは、ヤマハCFアルミダイキャスト技術を投入した初の市販車となります。

 今回デビューのニュー「YZF-R6」は、1998年のインターモトで初登場以後、"600ccをフルに楽しめるスーパースポーツ"として欧州で高い評価を集め、ミドルクラススーパースポーツの新しい基準を築いた現行YZF-R6の4年ぶりのモデルチェンジとなります。
 ニュー「YZF-R6」では、従来の基本コンセプトを継承し、更なるコーナリング性能の向上、よりエキサイティングなエンジン性能の具現化を開発の狙いとしました。
 主な変更点は、(1)約9割の部品を新設計した新エンジン、(2)フュエルインジェクション、(3)EU2規制値クリアー、(4)二輪市販車初のオールキャスト製フレーム、(5)≪CFアルミダイキャスト≫による車体部品採用(リヤフレーム&リヤアーム)、(6)第2世代YZF-R6を提唱する新デザイン、などです。

2003年欧州向けモデル ヤマハスポーツ「YZF-R6」
2003年欧州向けモデル ヤマハスポーツ「YZF-R6」


<名称> ヤマハスポーツ「YZF-R6」
<発売日> 2002年12月(欧州各販売会社により異なります)
<販売計画> 18,000台(EU圏内、2003年・年間)




≪ 主な特徴及び変更点 ≫

◆エンジン関連
1) 新作ピストンなど部品の9割を新設計した新エンジン
 強度バランスの最適化を図った新作鍛造ピストンを採用した他、ハイリフトカムからクランクケースまで、約90%に新設計部品を投入した水冷4ストローク並列4気筒4バルブエンジンを搭載しました。
ボア・ストローク値、圧縮比、燃焼室形状などの現行モデルのスペックをそのまま継承する一方、徹底した吸排気効率の追求、ポンピングロス低減の施策などで全域での性能アップを実現。最大パワー発生回転数は現行同一の13,000rpmとしつつ約3馬力のパワーアップを実現しました。(ラム圧併用時)

2) ライナーレスの直メッキシリンダーの採用
 従来のライナーへのメッキ処理に替えて、ダイキャスト製シリンダー内壁に直接メッキを行う"直メッキシリンダー"を採用し摺動抵抗低減を図りました。"直メッキシリンダー"は、ライナー部を省略できるので、優れた放熱性、高い剛性バランス、高精度設計が可能です。
なおピストンリングも、ランド剛性アップ、トップリング肉厚最適化、張力最適化等でリング挙動の安定化を促進。合わせて安定したガスシール性と良好なオイル消費特性を実現しました。

 また各気筒間を繋ぐ通路面積を拡大した新作クランクケース採用で、ピストン往復に伴うケース内空気容積の変化を低減させポンピングロスを低減。優れたレスポンスを引き出しました。
さらに、クランクバランスの最適化でジャーナルへの負荷低減を図るなど、細部に徹底したロス馬力低減の設計を施しました。

3) サクションピストン併用フュエルインジェクション
 優れた吸気効率とレスポンスの両立を図るため、'02YZF-R1に搭載して好評のサクションピストン併用FI(フュエルインジェクション)を採用しました。負圧差により作動するフリーピストンの動きを利用し、低速からの吸入空気量を最適に制御する構造で、自然吸気の滑らかさを残したリニアなスロットルレスポンスを実現しつつ電子制御による優れた応答性と信頼性を実現しました。
特にニューYZF-R6では、8,000rpmからの二次曲線的な加速、12,000rpmからも更にストレスなく伸びきるフィーリングを実現しました。

4) 吸気系の新設計
 性能向上及びFI採用とのコンビネーション最適化を図るため、エアクリーナー容量アップ(7.3→7.6リットル)、スロットルボディ口径アップ(37→38mm)を図りました。
また従来モデルから採用のラム・エアシステムは、FIとの最適化を図るために、吸気通路系の膨張容量・絞り面積を最適化して更なる性能向上を引き出しました。

5) チタン材採用新設計マフラー
 性能向上及び軽量化を図るため排気系も全面新設計を行いました。ディフューザーは従来の2分割式に替えてチタン材採用の一体式を採用。グラスウールを挟み込んだ二重管状態で曲げ成形する設計とし、優れた排気効率と騒音低減を実現しました。
その他、アルミ製サイレンサーカバー採用、排気系サイズアップ、管長変更、連結位置変更、サイレンサー膨張室比変更、パイプサイズ変更などを行い、新エンジンとの最適化を図りました。
なお、新採用の触媒部を合算しても従来比較で1kgの軽量化を達成しています。

6) その他エンジン関連の変更点
 このほか、1)EU2適合化、2)クランクケースカバー最適化によるオイル戻り特性の改善、3)軽量アルミ製オイルクーラー採用、4)軽量化に繋がる樹脂製エンジン系パーツ採用、5)希土類マグネトー採用によるACM薄幅化、6)シフト剛性見直し及びシフト系回転マス変更、7)従来同サイズながら優れた冷却効果を得るラウンドタイプラジエターの採用、などを行いました。


◆車体関連
1) 第2世代YZF-R6を象徴するデルタボックスIIIフレーム
 高次元のコーナリング性能を実現するオールキャスト製アルミフレームを採用しました。"デルタボックスIIIフレーム"と呼ぶこの新フレームは、YZF-R1の"デルタボックスIII"とは異なり、金型鋳造による2分割構造が特徴です。
鋳造条件を最適制御するヤマハ独自の技術で実現したもので、溶接箇所の大幅削減(16箇所→2箇所)により、強度・剛性バランスの最適化と軽量化、さらに優れた外観品質との調和を達成しています。

 特にねじれ剛性値はYZF-R7と同レベルとなる約50%アップを果たし、優れた走行性を引出すポイントとなっています。
またエンジン懸架はダイレクト締め付けとしマン・マシン一体感溢れる軽快なハンドリングを実現しました。(従来方式の前側3点アジャスト)

2) "CFアルミダイキャスト技術"投入のロングリヤアーム
 リヤフレーム及びリヤアームには、"CFアルミダイキャスト技術"と呼ぶヤマハ独自の最新ダイキャスト技術を投入したパーツを市販二輪車として初採用しました。
リヤアームは滑らかな曲面形状と最小肉厚部2.5mmという薄肉軽量設計が、リヤフレームは最小肉厚2mmの設計が特徴で、軽量化と剛性バランスの最適化を達成しました。(メインフレーム、リヤフレーム、リヤアームにアルミ製キャストを使用した初の市販車となります)

3) 35mmフォークオフセットなど最適ディメンション設定及びピボット位置最適化
 優れたハンドリングを一層引出すために、従来のホイールベース・キャスターはそのままに、フォークオフセットは5mm短縮し35mmに設定、さらに前輪アクスル締付け方式の変更、フォーク・インナーチューブの薄肉化などでバランスの最適化を図りました。
一方、ドライブ軸とピボット軸間距離は現行の96mmから86mmへと変更し、加速時のチェーン張力の駆動力への影響を低減。リヤアーム長も10mm延長して575.5mmとし路面反力に対する最適バランスを確保しました。こうした相乗効果が、優れた安定性と軽快な切り返し特性、優れたトラクションを生み出しました。

4) 新設計5本スポーク軽量ホイール
 軽量新設計5本スポークホイールを採用してバネ下重量低減を図りました。ハブ~スポークをひとつの連続した構造面として処理する薄肉設計により、強度剛性バランスの最適化を図っています。

5) "ニューエッジフォルム"の新デザイン、ガトリングビームヘッドライトの採用
 ボディデザインは、"ニューエッジフォルム"をコンセプトに新しいRシリーズを象徴するスタイルを採用しました。とくに、吸気効率アップを図ったニューエンジンの特徴を、積極的にエンジンが空気を取り込むボディデザインとして表現し、マシン特性を外観デザインでも表現しました。

 なお、ヘッドライトには、光の広がりが均一で優れた配光特性を実現する新設計ガトリングビームヘッドライトを採用。またこれに連動しフロント廻り造形も新設計、優れたプロテクション効果と、斬新なフロントマスクを合わせて実現しました。

6) その他、アルミ鍛造パーツ投入など
 フートレスト、リヤショックアブソーバ部品にアルミ鍛造パーツを採用して、外観品質アップを図りました。(従来はアルミ鋳造品)
また、リアブレーキのシステム変更(キャリパー、ディスク、マスターシリンダー変更)などを行ないました。その他、リアシート下にU字ロック収納スペースを設け利便性を確保しました。




≪ご参考≫
ヤマハCFアルミダイキャスト技術について
 金型にアルミの溶湯を高速・高圧で注入する従来の高圧ダイキャストは、アルミ溶湯の注入条件の制限から、鋳物の中に一定の空気や酸化物を巻込み気泡が生じ、肉厚や曲面形状の制限となり改善の余地が残されていました。この改善を図るため、アルミダイキャスト部品の "成形技術"に着眼点を置き開発したのが"ヤマハCFアルミ ダイキャスト技術"です。
CFダイキャスト=Controlled Filling Die Casting (制御充填ダイキャスト)



 技術の着眼点は、アルミ溶湯の流動特性の最適化であり、アルミが凝固するまでの限られた時間内に、効果的に溶湯を金型に流し込み、凝固前に、均一な溶湯の流れ込みを狙いとしています。
 上記の目的の為、ヤマハは長年蓄積してきた真空アルミダイキャスト技術をベースに改良を加え、新たに金型内の真空度を高める独自の方法を採用し、鋳造条件の細かな制御を可能としました。
具体的には、(1)金型間に独自に開発したシール材を配し、金型真空度を向上させ空気抵抗を低減(従来比率6倍)、(2)金型温度の制御による溶湯温度の安定化、(3)溶湯の射出速度向上(従来比率5倍)による溶湯供給の最適化を図りました。これらの相乗効果でガス混入量を従来の5分の1に削減。その結果、高強度で溶接が可能となる≪薄肉かつ大物≫のアルミダイキャスト製品の量産を可能としました。

 これにより、高圧ダイキャストならではの「高い生産効率」と、重力鋳造並みの「強度・伸び特性」の両立を実現し、従来式ダイキャストでは困難であった≪薄肉かつ大物≫のアルミダイキャスト製品量産を可能としました。またこの技術は、超薄肉設計や複雑な曲面形状のアルミ鋳物を量産できることから、アルミ鋳物製品の新しい"設計基準"を示唆するものとなります。
金型鋳造2分割構造によるキャストフレームと
CFアルミダイキャスト技術で製造したリヤフレーム
CFアルミダイキャスト技術で製造したリヤアーム



2003年モデル ヤマハ『YZF-R6』 仕様諸元(ドイツ仕様)
全長×全幅×全高
シート高
軸間距離
乾燥重量
原動機種類
気筒数配列
総排気量
内径×行程
圧縮比
最高出力
最大トルク
始動方式
燃料タンク容量
燃料供給
タイヤサイズ (前/後)
2,025mm×690mm×1,090mm
820mm
1,380mm
162kg
水冷・4サイクル・DOHC・4バルブ
並列4気筒
600 cm3
65.5×44.5mm
12.4:1
86.0kW(117HP)@13,000rpm
66.4Nm(6.78kgf・m)@12,000rpm
セル式
17L
電子制御フュエルインジェクション
120/60ZR-17M/C 55W/180/55ZR-17M/C 73W
*ラム圧併用時の最高出力は90.5kW(123HP)@13,000rpm



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