ヤマハ発動機株式会社は、2005年7月の創立50周年に向け企業体質を更に強固なものとし、次の半世紀での飛躍を図るための基盤構築を目指した3ヶ年(2002年4月~2005年3月)の新中期経営計画"NEXT50"を策定しました。
当社が、新中期経営計画で掲げる経営課題と数値計画は、以下の通りです。
(経営課題) |
(1) |
既存事業の収益力の向上 |
(2) |
中国・インド・アセアン諸国での二輪車事業の基盤固め |
(3) |
成長戦略の推進 |
(4) |
財務体質の強化 |
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(数値計画)
<前提レート: USドル120円、ユーロ110円> |
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2005年3月期で、 |
(1) |
連結売上高1兆5百億円、連結営業利益700億円、連結経常利益650億円 |
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売上内訳:二輪車5680億円、マリン2020億円、特機1880億円、その他920億円 |
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営業利益内訳:二輪車340億円、 マリン130億円、
特機170億円、 その他60億円 |
(2) |
3ヶ年でフリーキャッシュフロー700億円の創出、10%を上回るROEの確保 |
(3) |
自己資本比率を3割、連結借入金を2,000億円以下 |
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特に、新中期経営計画の特徴は、経営課題として掲げた「既存事業の収益力の向上」と「アジア諸国での事業基盤固め」に注力し、ヤマハ発動機グループの総力をあげて取組み成果を早急に出していく事です。そのために、基幹事業を中心に開発部門を強化し魅力ある商品をグローバルに展開していくとともに、今後3ヶ年での30%のコスト開発と国内舟艇事業やPAS事業などの不採算事業の見極めと再建に向けた事業改革を断行していきます。
また、地域戦略としては中国・インド・アセアン諸国への資源配分を厚くし、市場成長が期待されているアジア二輪車市場での競争力回復に向けた製造・販売・技術・調達・資金における総合的な取組みを実施し、事業基盤を固めていきます。
なお、数値計画は、2005年3月期で、連結売上高1兆5百億円・連結経常利益650億円を目指します。
「財務体質の強化」は、前中期からスタートしたSCM改革の成果を確実にするものとし、固定資産の有効活用プロジェクトの推進により資産回転を向上させ、フリーキャッシュフローを創出し、借入金の圧縮、自己資本比率の向上を目指していきます。なお、次の半世紀での飛躍を図るための基盤構築としての「成長戦略の推進」は、コア技術とそれ以外の技術の両面で、新技術・新事業の芽を大きな収益の柱となるように育てていきます。
また、構造改革の推進を支え、企業成長を図るコーポレートブランド戦略としては、「Touching Your Heart」をブランドスローガンに掲げ、各事業の旗印(差別化価値)を戦い方の“道しるべ”とし、その差別化価値に向けた商品開発や事業運営を実施していきます。
【新中期経営計画の「事業戦略と全社戦略」について】
1. 二輪車事業について
二輪車事業が新中期経営計画で目指す数値目標は、以下の通りです。
*全体の売上・利益・台数 |
(2002年3月期) |
(2005年3月期) |
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・売上/営業利益 |
4,735億円/120億円 |
5,680億円/340億円 |
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・台数 |
218万台 |
332万台 |
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*主要地域の売上・台数 |
(2002年3月期) |
(2005年3月期) |
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・日 本 |
547億円( 22万台) |
600億円( 24万台) |
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・北 米 |
1,092億円( 18万台) |
1,230億円( 21万台) |
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・欧 州 |
1,577億円( 44万台) |
1,620億円( 47万台) |
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・アセアンとインド |
1,074億円(109万台) |
1,590億円( 170万台) |
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・中 国 |
101億円( 5万台) |
376億円 ( 44万台) |
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*2002年3月期の売上・利益は、昨年11月に公表した数字です。 |
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(二輪車事業全体の方針)
当社の基幹事業であり、アジアを中心に今後も需要拡大が見込める二輪車事業において当社は、2010年までの全世界での売上・台数の市場シェア20%を目指していきます。
そのために今後3ヶ年、市場シェア20%以上ある欧米においては、販売好調な大型二輪車を積極的に投入しブランド力を高め、収益基盤を更に強固にしていきます。また、市場シェアが10%に満たない中国を含むアジア市場においては、先進国並みの適正シェアを目指すため、今後3ヶ年、最重要地域と位置付け、全社を挙げて対応していきます。
特に、中国部品の調達拡大、小型4サイクルモデルの投入拡大や生産・販売体制の再構築などに取組み、中国・インド・アセアン諸国での事業基盤の強化に注力していきます。
その結果、3ヶ年において二輪車事業全体では、アジア市場を中心に、売上高で約945億円、営業利益で220億円、台数で114万台の伸長を見込んでいます。
なお、この目標数値を達成させる事業全体の施策として、市場競争力を強化させるためのモノづくり改革を断行し、30%のコスト開発を実施していきます。
(地域別の主な事業方針)
日 本 |
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日本本部の設立、台湾製スクーターの導入、大型二輪車の販売拡大と中核販路の再構築などで、「黒字化体質の定着化」を目指す。 |
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欧 米 |
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大型二輪車の投入強化、欧州での現地生産体制の競争力強化、SyS体制によるコストダウンなどで「高ブランド力の維持と収益力の更なる強化」を目指す。 |
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アセアン |
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アジア本部の設立、小型4サイクルモデル(含む新ジャンルコミュータ)の投入強化、中国部品の活用等で「適正シェアの獲得に向けた事業基盤の強化」を目指す。 |
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中 国 |
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中低価格帯のモデル投入、中国部品の開発供給の新会社設立、生産・販売体制の再構築などで、「中国市場での競争力強化に向けた基盤再構築」を目指す。 |
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モノづくり改革 |
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システムサプライヤー体制の推進と中国部品の活用など世界最適調達等により、2005年3月期には500億円規模の効果額を目指す。 |
2. マリンエンジン事業・四輪バギー事業・IM事業について
マリンエンジン事業・四輪バギー事業・IM事業が新中期経営計画で目指す数値目標は、以下の通りです。
*売上・台数 |
(2002年3月期) |
(2005年3月期) |
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・マリンエンジン事業 |
995億円( 27万台) |
1,180億円(30万台) |
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・四輪バギー事業 |
1,041億円( 21万台) |
1,220億円(23万台) |
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・IM事業 |
188億円( 1000台) |
280億円 (1760台) |
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*2002年3月期の売上・利益は、昨年11月に公表した数字です。 |
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(マリンエンジン事業)
マリンエンジン事業は、前中期において、大型の4サイクル・2サイクルの環境対応モデルのラインナップ強化と世界3工場での生産体制の整備等により、世界でのリーディングポジションを確保する事ができました。
新中期においては、環境対応エンジンを更に開発強化するとともに、その収益性の高い大型モデルにおける北米及び全世界市場での販売拡大、また、モノづくり改革によるコストダウンやSCM活動の推進などで「高収益体質の確立」を目指します。
なお、新中期での売上目標は、18%増の1,180億円です。
(四輪バギー事業)
四輪バギー事業は、前中期において、米国での需要拡大とニューモデルの販売好調により、当社業績に大きく貢献しました。
新中期においては、モデル戦略として需要拡大が見込まれるオートマチックモデルのラインナップの強化とともに、米国アトランタ工場での生産能力の拡張(10万台規模)等により、「市場成熟化の中での売上・利益」の拡大を目指します。
なお、新中期での売上目標は、17%増の1,220億円です。
(IM事業)
IM(産業用ロボット)事業は、前中期の2001年3月期に、市場競争力の高いサーフェイスマウンターの販売拡大で過去最高の売上・利益を計上しましたが、2002年3月期はIT不況の影響により売上は半減しました。
しかし、営業利益率は2桁を確保している事から利益体質が強固なものとなっており、新中期においては、アジア拠点の整備、更なるコストダウン、新領域商品の開発などの施策を実施するとともに、来年からの市況回復見込みに伴い「売上・利益のV字回復とマウンター中速機分野でのトップシェアの維持」を目指します。
なお、新中期での売上目標は、48%増の280億円です。
3. 不採算事業(国内舟艇事業・PAS事業)の改革について
不採算事業である国内舟艇事業とPAS事業において、新中期経営計画で目指す 赤字脱却(連結営業利益ベース)の時期は、以下の通りです。
国内舟艇事業 |
: |
2002年3月期見通し △35億円→ 2004年3月期に黒字化 |
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PAS事業 |
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2002年3月期見通し △17億円→ 2004年3月期に黒字化 |
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(国内舟艇事業)
国内舟艇事業は、小型船外機艇を中心とした事業展開を図るとともに、前中期の2工場に続く蒲郡工場の閉鎖、国内外のアウトソーシング先の活用、ヤンマーディーゼル(株)(代表者:山岡健人 大阪市北区)との共同生産合弁会社の設立などを実施し、2004年3月期に連結損益の黒字化を目指します。
(PAS事業)
PAS事業は、事業主体を電装部品の製造子会社である(株)モリックに移管する事による事業ドメインの拡大と事業コストの圧縮を図っていきます。特に、開発・生産の一体化による大幅なコストダウンに加え、PASパワーユニットを使った新ビジネスの展開を推進し、2004年3月期に連結損益の黒字化を目指します。
4. 全社戦略について
(グループ経営体制を変革)
次の半世紀での飛躍に向けた連結経営体制として、独立性の高い「カンパニー制」「地域本部制」を促進し、その両体制の相乗効果でグループ全体の成長を目指していきます。
将来のグループイメージとして、ヤマハ発動機本体は、二輪車事業を中心として自動車エンジン事業や部品事業とグループ統括のコーポレート機能、新規事業・R&Dを加えたコンパクトな組織体を目指します。また、事業では、現在のIMカンパニーに加え、マリンエンジン事業を社内カンパニーとし、更に分権の進んだ組織体として機動的な事業運営を目指します。
なお、地域本部は、これまでの米州本部・欧州本部に加え、日本本部・アジア本部と4本部体制となり、また、将来の中国本部も視野に入れながら、自立した地域運営を目指した体制構築を図っていきます。
(次世代に繋がる成長戦略)
次世代に繋がる成長戦略として、既存製品の競争力強化に加え、新たな収益の柱の構築を基本方針に取組んでいきます。
そのために、コアとそれ以外の技術領域において高付加価値技術の開発を促進し、また、その高付加価値技術が利益を生むビジネスモデルまで引き上げるために、他社とのアライアンスも念頭に置いています。
なお、コア技術領域ではエコ・パワーソース戦略として、次世代エンジンと次世代コンポーネントの開発に取組んでおり、また、コア技術以外では、バイオ領域とIT領域などで、全く新しいビジネスモデルの探索を進めております。
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