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「水環境制御による微細藻類の光合成機能を生かしたCO2吸収・固定化技術」 ― キートセラスの高濃度・高効率の大量培養にも成功 ―

2002年2月6日発表



「キートセラスの培養実験」

  ヤマハ発動機株式会社は、地球温暖化をはじめとする環境問題への対応として、二酸化炭素(CO2)の低減に向けたエンジン本体や省燃費などの工学的研究に加え、微細藻類を活用し、CO2 を資源として有効利用する生物工学的(バイオテクノロジー)研究開発を進めてきました。その生物工学的研究において、当社は、環境に負荷をかけることなく循環し、自然界でCO2を吸収し有機物をつくるCO2吸収・固定化技術(光合成機能)に着目しました。

 そのCO2<固定化技術のなかで重要な「CO2の吸収技術」において、当社は、温帯森林が持つ5g-CO2/m2/日(CO2固定速度)の20倍を目標に研究開発を進めており、既に高い達成率を実現しています。これは、(1)高性能な微細藻類の探索と育種、(2)培養水の構成成分を最適条件とする水環境制御技術、(3)高効率で高濃度の大量培養を可能とする光合成装置の開発・制御技術などで可能となり、当社の保有技術を活かした研究開発を進めた結果です。なお、現在当社は、培養増殖の高効率化および実用化に向け、光合成装置「ヤマハ・バイオ・リアクタ(仮称)」などのハード機器と最適な制御ソフトの開発を進めています。

 また、CO2吸収・固定化技術の研究過程で、アクアカルチャーサプリメントとして、貝類・甲殻類の水産養殖における幼生期に必須な希少飼料であり、これまで高濃度で大量生産が非常に難しいとされていた珪藻「キートセラス・カルシトランス」を、従来培養技術の約6倍(6000万セル/ml)まで高濃度とし、それを効率的に大量培養することに成功しました。
なお、キートセラスの大量培養には、日清製油株式会社と開発を進め、今後の実用化・事業化についても共同で進めていきます。

 なお、当社研究の特徴は、環境負荷の無い自然界の「光合成」と、「微細藻類」が持つ高効率な光合成機能に注目して研究を進めてきたものであり、当社が手がけてきた浄水器関連の水環境制御技術およびその研究施設を活用してきました。特に、光合成と微細藻類への着眼は、当社事業と環境への考え方を基本に研究した結果であり、次の3つに集約されます。(1)自然界の生物は、太陽光線をエネルギー源に利用し、CO2と水から有機物を合成し、生命と種の保存を行っていること。(2)CO2は、植物や藻、微生物などの光合成の原料であり、環境に負荷なく循環していること。(3)さらに、微細藻類は光合成効率が高く、将来の実用化・事業化に重要な工業的取扱いが可能であるところからです。

 当社は、このバイオテクノロジー領域に着目して5年、今回、将来の実用化・事業化のスタートラインにたどり着く第一歩を踏み出しました。今後も、克服するべき多くの課題やテーマはありますが、微細藻類の生物活性を高める水環境制御技術や、培養増殖効率の高いリアクタをはじめ、CO2低減と資源化の技術と機器開発に注力し、当社の社会貢献事業領域の確立を目指していきます。

ヤマハ発動機株式会社 代表取締役副社長 山下 隆一 コメント

『このたびの新たなバイオ技術への取組みには、当社が持つ機械工学的な経験が活かされることにより、高効率なヤマハ バイオ リアクタの開発が出来ました。このリアクタを、エネルギーや生成物を創り出すエンジンとして例えており、
今後も、このバイオ領域において更なる可能性を追求していきます。』



●キートセラス
単細胞浮遊藻類・植物プランクトンで、長方体をした珪藻のひとつです。4つの角に長い棘を持ち、通常2分裂で増殖し、大きさは長さ6μm(0.006mm)、幅4 ~ 10μm(0.004~0.01mm)程度です。このキートセラスは、高度不飽和脂肪酸をはじめ、ビタミンバランスも良く、捕食にも優れ、貝類(カキ、アコヤ貝、ハマグリなど)、棘皮動物(ナマコやウニなど)、さらに甲殻類(エビ・カニ類など)などの、幼生期における最適の飼料として利用されています。

●幼生
貝や魚などの孵化後の生体を言い、大きさは種により異なりますが、二枚貝では種類や孵化後の日数により、おおよそ、体長(殻長)約90~400μm程度です。稚貝や稚魚になるまでの期間を幼生期といいます。

●微細藻類
約36億年前に誕生したラン藻類が祖先といわれ、地球上に2~3万種類が存在すると考えられています。大きさは3~100μm程度のものが多く、乾燥して光が届かない環境でも2~3ヶ月間程度、生存する種類もあります。通常、海水・汽水・淡水などの水中や土壌、大気中にも存在しています。

●光合成(Photosynthesis)
緑色植物が、光エネルギーを利用して炭素を固定することを指します。 大気中の二酸化炭素(CO2)を有機物に変える反応で、二酸化炭素(CO2)と水(H2O)から有機化合物(Cn(H2O)m)と酸素(O2)をつくり出します。地球上の植物・動物・細菌など、ほとんどすべての生物は光合成に依存して生きています。

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