本文へ進みます

次世代の"モノづくり"に貢献する生産技術 "ヤマハCFアルミ ダイキャスト技術"開発について 薄肉かつ大物のアルミダイキャスト部品を量産化できる新技術

2002年2月5日発表


 ヤマハ発動機株式会社は、環境対応とコスト低減など「次世代のモノづくり」に貢献する生産技術として、薄肉かつ大物のアルミダイキャスト部品を量産化できる新しい生産技術「ヤマハCFアルミ ダイキャスト技術*」をこのほど開発し、実用化に成功しました。
*CFダイキャスト=Controlled Filling Die Casting(制御充填ダイキャスト)


 アルミダイキャストは、軽量でサビにくく再生にも優れるアルミ材の特性に加え、生産性に優れることから、二輪車のエンジン・車体部品や船外機など数多くの部品に採用されています。しかし、従来のダイキャスト技術では、肉厚とサイズの組み合わせに限界があり、薄肉かつ大物を両立させるアルミダイキャスト部品を生産する事が、アルミ業界にとって課題とされてきました。

 また、今後、二輪車等のエンジン・車体部品は、4スト化や排ガス対策装置追加などの環境対応による重量増や部品点数の増加が予測され、それらに対応する軽量化技術に加え、生産コスト削減や燃費向上などが、次世代"モノづくり"の推進の鍵となっていました。

 このたび開発した「ヤマハCFアルミ ダイキャスト技術」は、「薄肉かつ大物を両立」させたアルミダイキャスト部品の量産化が可能となる生産技術であり、軽量化と部品点数削減により環境対応など社会的ニーズに呼応したものです。この技術は、金型内に流し込むアルミ溶湯の流動特性に着目し、(1)金型真空度の向上、(2)金型温度の制御、(3)溶湯の射出速度向上などにより、金型内への円滑なアルミ溶湯の供給を可能としたものです。これらの相乗効果により、アルミ鋳物内のガス混入量(気泡)を従来の5分の1に削減した高品質アルミダイキャスト部品の量産を可能としました。

 なお、この技術の導入により、アルミダイキャスト部品は従来に比べ、約30%の軽量化と約80%の部品点数の削減が実現できます。また、アルミ使用量の削減及び製造工程の簡素化により、アルミダイキャスト部品の生産コストは従来に比べ、約30%低減が見込め、さらに、特殊なアルミ材質を使用せず、また生産技術の移転が容易な金型での製造のため、海外での生産展開が可能となります。

 当社は、今後、環境対応など次世代のモノづくりに対応する二輪車や船外機などの幅広い分野の製品に、順次、この技術を採用していきます。


CFアルミダイキャストと従来のダイキャストの製品比較

CFアルミダイキャストと従来のダイキャストの製品比較




≪技術の概要≫

 金型にアルミの溶湯を高速・高圧で注入する従来の高圧ダイキャストは、アルミ溶湯の注入条件の制限から、鋳物の中に一定の空気や酸化物を巻込み気泡が生じ、肉厚や曲面形状の制限となり改善の余地が残されていました。この改善を図るため、アルミダイキャスト部品の "成形技術"に着眼点を置き開発したのが"ヤマハCFアルミ ダイキャスト技術"です。

 技術の着眼点は、アルミ溶湯の流動特性の最適化であり、アルミが凝固するまでの限られた時間内に、効果的に溶湯を金型に流し込み、凝固前に、均一な溶湯の流れ込みを狙いとしました。

 上記の目的の為、当社は、長年蓄積してきた真空アルミダイキャスト技術をベースに改良を加え、新たに金型内の真空度を高める独自の方法を採用し、鋳造条件の細かな制御を可能としました。具体的には、(1)金型間に独自に開発したシール材を配し、金型真空度を向上させ空気抵抗を低減(従来比率6倍)、(2)金型温度の制御による溶湯温度の安定化、(3)溶湯の射出速度向上(従来比率5倍)による溶湯供給の最適化を図りました。これらの相乗効果により、ガス混入量を従来の5分の1に削減しました。その結果、高強度で溶接が可能となる≪薄肉かつ大物≫のアルミダイキャスト製品の量産を可能としました。

 これにより、高圧ダイキャストならではの「高い生産効率」と、重力鋳造並みの「強度・伸び特性」の両立を実現し、従来式ダイキャストでは困難であった≪薄肉かつ大物≫のアルミダイキャスト製品量産を可能としました。またこの技術は、超薄肉設計や複雑な曲面形状のアルミ鋳物を量産できることから、アルミ鋳物製品の新しい"設計基準"を示唆するものとなります。

従来のアルミダイキャスト技術

従来のアルミダイキャスト技術
ヤマハCFアルミダイキャスト技術
(1)金型間にシール材を配置し真空度を向上、(2)金型温度の制御による溶湯温度の安定化、(3)溶湯の射出速度向上が特長
ヤマハCFアルミダイキャスト技術 ヤマハCFアルミダイキャスト技術



ご参考


≪技術開発の背景≫

 環境保全気運が高まる中、二輪車や船外機のエンジンは、4スト化や排ガス浄化用に触媒搭載・電子燃料噴射装置化が急速に進んでいます。またハイブリッド化も進み、エンジン、車体技術は変革期にあります。とくに環境対応型エンジンは、これに伴う装備の追加で重量増が懸念され、従来同等以上の走行性能を確保するには、重量増を相殺できるアルミなど軽量素材採用や軽量設計がポイントとなっていました。

 さて、アルミは鉄比較で約34%と軽量で、融点が低く湯流れが良く鋳造性に優れています。他の金属と比較すると再生が容易、かつ再生時の品質も新地金とほとんど変わらず、合金と熱処理技術を選択することで、強度と伸びを変化させ、用途に応じた適切な特性を確保出来ます。この特徴を活かし、ヤマハはアルミ材を各製品に織込んでいます。

 とくに二輪車、スノーモビル、マリンジェットなど"人機一体"の≪操る楽しさを≫が魅力となる製品では、"軽量化"がお客様満足度を高める≪モノづくり≫にとって大切とヤマハは認識し、アルミ材の投入による軽量化を進めています。現在、船外機に約50%、大型二輪モーターサイクルに40%(いずれも重量比)のアルミ材を使用し、月使用量も3,000tに及ぶことから、アルミ製品の品質、使用量、製造法などの改善は、製造コストや商品性など多岐に影響する要素となっていました。

 この背景から、生産コストを低減しつつ、環境ニーズを折り込み次世代の"モノづくり"を具現化させるアルミ鋳物製造技術として研究・開発し、実用化したのが本技術です。


ヤマハ「YZF-R1」 ヤマハ「F200」
アルミ材が重量比約40%を占めるスーパースポーツモデル(ヤマハ「YZF-R1」) 船外機では重量比約50%がアルミ材となります(船外機「F200」)



製品に占めるアルミ重量構成比(ヤマハ製品)比較

製品に占めるアルミ重量構成比(ヤマハ製品)比較



ページ
先頭へ