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可変吸気ダクト&FI採用・900ccエンジンをアルミ製フレームに搭載 ヤマハスポーツ「TDM900」(02年欧州モデル)パリショーで発表

2001年09月27日発表

 ヤマハ発動機(株)は、9月27日から開かれるパリショーで'02年欧州向け新製品、ヤマハスポーツ「TDM900」を発表します。水冷4ストロークDOHC・5バルブ並列2気筒900cc・FI装備エンジンをアルミフレームに搭載し、ワインディング路での緩急自在な走りを実現しました。 (FI=フュエルインジェクション)

 「TDM900」は、'91年初登場以後、欧州スポーツツアラー市場でのロングセラー「TDM850」の11年ぶりのフルモデルチェンジとなります。現行の「TDM850」は、山岳ワインディングから街の石畳路まで“路面を選ばない走行性”と快適な乗車姿勢、個性的外観などが市場で評価され、また'96年のモデルチェンジ(エンジン特性変更)以後も人気が継続し今日に至っています。

 今回のフルモデルチェンジでは、(1)排気量アップ、(2)FI(フュエルインジェクション)採用、(3)アルミ製軽量フレーム採用、(4)車体軽量化などにより、緩急自在なワインディング路での走行性に一層磨きをかけ、第3世代TDMの世界を提唱するモデルとなっています。


ヤマハスポーツ「TDM900」
ヤマハスポーツ「TDM900」(2002年欧州向けモデル)

名称

ヤマハスポーツ「TDM900」

カラーリング

■レディッシュイエローカクテル
■シルバー3
■ベリーダークブルーメタリック

販売計画

10,000台(年間/欧州合計)



企画の狙い

 “キング・オブ・ザ・マウンテンロード”を提唱して1991年デビューした初代「TDM850」は、山岳ワインディングから市街の石畳路まで路面を選ばない軽快でスポーティな走行性、高い視線とラクなポジション、個性的外観などが市場で評価され、一躍人気モデルとなり欧州市場をリードしました。本モデルは'96年、エンジンを360度クランクから270度へ変更した2代目「TDM850」に進化。不等間隔爆発によるパルス感溢れる乗り味と優れた駆動力、幅広いトルク特性、ニュートラルな操縦安定性、などが引き続きファンの支持を得て「オールラウンダーマシン」として市場の評判を広げ、存在感をアピールしました。(デビューから'00年末までで約62,000台の販売数/全欧州)

 新開発の「TDM900」は、初代「TDM850」の基本コンセプトをそのまま継承しつつ、最新技術の投入により新しい「TDM」ワールドを狙いに開発にあたったモデルです。“軽量化を軸に胸のすくような走りと扱い易さの具現化”をテーマに技術開発を進め、エンジン、車体、細部に新技術を惜しみなく投入、また外観デザインにおいても、新しいヤマハデザインの提唱を行なっています。
 具体的には、従来の「TDM850」がもつ(1)多機能性、(2)アップライトポジション、(3)独特のスタイル、という特色はそのまま引継ぎ、A)ルートを選ばず何処でも行けるキャラクター、B)マウンテンロードではYZF-R1をも凌駕する走行性、C)リッターマシンとのツーリングを先導できるポテンシャル、D)市街地での高い機動性など、これらの各要素を高次元でのバランスにより達成しました。



主な特徴

エンジン関連

1) アルミ鍛造ピストン・メッキシリンダー採用の新897cc
 新エンジンは、現行「TDM850」に搭載の水冷4ストロークDOHC・5バルブ・2軸バランサー採用並列2気筒を母体に、ボア89.5mmから92mmへ拡大。897ccへと吸気量アップを図るともに、アルミ鍛造ピストン、メッキシリンダー、浸炭コンロッドを新採用した他、排気側カムの最適化などを行ない優れた特性を実現。毎分7,500回転での最高出力と、6,000回転での最大トルクを引き出しています。またクランク慣性マスを9%アップ(クランク/ACM合算)し最適化を施しました。

2) フュエルインジェクションの採用
 優れたエンジン特性と排ガス浄化の両立を図るため、燃料供給はFI(フュエルインジェクション)を採用しています。「FJR1300」で採用の小型設計タイプをベースにさらに熟成を図ったシステムで、優れた特性を引き出すポイントとなっています。38mmスロットルボディ本体に、4ホール2ジェットの低圧噴射方式のインジェクターを設定し、各気筒独立のシーケンシャル噴射を採用。良好な噴霧粒径特性と5バルブ燃焼室とのコンビネーションで、優れたドライバビリティを引き出しています。

3) 低回転での優れたドライバビリティに貢献する可変吸気
 FI採用の効果を効率的に引き出すために、新作大容量エアクリーナボックス(7.5リットル)を採用、またヤマハ初の吸気ダクト可変方式を採用しました。回転数に応じてダクト面積を変更するシステムで、4,000回転超では全開状態、一方4,000回転以下ではダクト面積を約3分の1に絞り、最適な吸入空気量を確保しています。スロットル急開時に生じる通路面積急変による特性変動を最小限に抑え、優れた特性確保に繋がっているのです。

4) SUS材採用大容量120mm径サイレンサー
 排気系には、エキパイ・サイレンサー部ともにSUS材を使用した新設計軽量マフラーを採用しました。エキパイからサイレンサーへのラインはストレートな設計として、中央に連結部を設けて良好な排気脈動特性を確保。サイレンサーは大容量タイプとし、心地よいパルス感と、ビッグツインならではの歯切れよい排気音を実現しています。

5) その他エンジン関連の特徴
 この他、(1)プレード(羽状)&リング一体設計ファン採用の小型ラジエター(冷却性能現行モデル比約5%アップ)、(2)新設計6速ミッション(現行5速)、(3)肉厚0.8mmスチール材使用の軽量オイルタンク(現行アルミダイキャスト製2ピース型)、(4)排出ガス浄化を図るエア・インダクションシステム及び三元触媒などを採用しました。(EU-2の暫定規制値に対し、COを35%以下、HCを15%以下、NOxを11%以下に削減)


車体関連

6) 新設計・軽量アルミ製ダイヤモンドフレーム
 新設計アルミ製ダイヤモンド型フレームを採用しました。ヘッドパイプ部に金型鋳造材、タンクレール部に押出し材、ブラケットリヤアーム部に中空鋳造材を使用し、アルミ材の特性を効果的に引き出す設計により、良好な剛性バランスと軽量化を両立させ優れた走行性を引き出しています。(現行比較でフレーム単体約6kg軽量化)
 特にタンクレール部のアルミは、強度に優れるA7000番台の素材を採用し、さらに部分的に2mmから8mmの間で最適な肉厚形状とし、良好な強度剛性バランスを実現。さらにフレーム塗装は、ゴールド色が僅かににじむ「マットチタン」塗装を行ない、質感と走りの印象を演出しました。
 なお、リヤフレームは別体アルミ材として、整備性を配慮しています。

7) 3点リジット懸架によるねじれ剛性40%アップ
 エンジンのフレーム懸架は3点リジット式として、エンジンを車体強度部材として一層効率的に活用しました。新フレームとの相乗効果が、現行比較ねじれ剛性40%アップ、横剛性5%アップ、縦剛性8%アップの優れた剛性バランスを達成。(現行:ヘッド側1点/ケース側3点計4点リジット懸架→新型:ヘッド側1点、ケース側2点の計3点リジット懸架)

8) 30度前傾シリンダー
 シリンダーの搭載角は現行の40度から30度に変更しました。同時にクランク軸位置は現行比較で、フロント軸起点で34mm前へ移行。この他各諸元値変更(フォークオフセット35mm→30mm/フォークピッチ110mm→120mm)などの相乗効果で、前輪分布荷重は49.8%を確保。(現行47%)ハンドル廻りの慣性モメントの最適化を実現しつつ、フロント廻りの接地感あるフィーリングを強調し、少ない倒し込みによる素早いターンが楽しめる特性を一層引き出しています。
 またこの高剛性ボディは、タンデム(2人乗り)や荷物搭載等の重量変化時にも許容度の広いナチュラルなハンドリングを引き出しているのです。

9) R1タイプのリヤサス及びアルミ製「目の字」断面ロングリヤアーム
 YZF-R1タイプのピギーバック付きリヤサスペンションを新たに採用しました。同時にアーム部との取付けはリンク式を新たに採用。バネレートの最適化により、良好なプログレッシブ効果を実現しています。(許容範囲の広いダンパー効果が可能となり、現行のイニシャルワンタッチ切替は廃止)
 リヤアームは、アルミ押出し材採用の「目の字」断面の軽量ロングリヤアームを採用しています。(現行はスチール製/アーム長は現行比較で40mm長い570mm)

10) その他、車体関連の特徴
 この他車体関連では、(1)YZF-Rシリーズと同様の板厚最適化手法による軽量新作前後ホイール、(2)MOSX64型対向ピストン・ワンピースのフロントブレーキキャリパー、(3)ゆったりとした姿勢がとれる新ポジションと新型シート、(4)疲労度が少なくリニアな操作性も実現するリジット式幅広ステップ、(5)新型燃料タンク(燃料ポンプ内蔵ながらも約1リットル容量増)、(6)見易い新作3連メーターパネル、(7)マルチリフレクターヘッドライト、などの採用が特徴です。

11) 第3世代TDMを主張する新スタイル
 軽快でシャープな表現を具現化するために、ニューエッジフォルムと呼ぶワイルドな表情を演出する外観としました。(1)エンジンが引き締まって見えること、(2)ライダーが跨って調和あるシルエット、(3)ダウンフォースに頼らずに前へ進むイメージ、などを主題にデザインを開発。フロントビューは、マッシブスタイルを具現化、サイドビューはフレーム骨格と外装パーツが織り成すデザインで“Y字シェイプ”を主張し、スーパースポーツとは一線を画す新デザインを実現。さらにリア廻りは、ライト感覚溢れる造形処理として、シャープさを強調する外観となっています。



2002年モデルヤマハ『TDM900』 仕様諸元(イタリア仕様)


全長×全幅×全高
シート高
軸間距離
乾燥重量
原動機種類
気筒数配列
総排気量
内径×行程
圧縮比
最高出力
最大トルク
始動方式
燃料タンク容量
燃料供給
タイヤサイズ(前/後)

2,180mm×800mm×1,290mm
825mm
1,485mm
190kg
水冷・4サイクル・DOHC・5バルブ
並列2気筒
897cm3
92.0×67.5mm
10.4:1
63.4kW(86.2HP)@7,500rpm
88.8Nm(9.1kgf・m)@6,000rpm
セル式
20L
電子制御フュエルインジェクション
120/70-ZR18/160/60-ZR17


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