ヤマハ発動機(株)は、新しい環境対応技術として、バッテリーボックス内にCPUとICメモリーを内蔵したエネルギー管理システム、「I.F.E.S.(インテリジェント&フレキシブル・エネルギーシステム)」をこのほど新開発した。
ヤマハ発動機(株)では、このシステムを、今後発売予定の電動ハイブリッド自転車「PAS」への搭載を始め、クリーンな電器エネルギーを使用する小型エレクトリックビークル(EV)の次世代エネルギーシステムとして、今後の主力商品の順次採用する。
「I.F.E.S.」の最大の特徴は、バッテリーボックス内にCPUとICメモリーで構成されるBMC=バッテリーマネージメントコントローラーを内蔵することによって実現した「インテリジェントバッテリー」にある。「I.F.E.S.」では、この「インテリジェントバッテリー」とCPUを内蔵した充電器、車両コントローラーをシステム化した。
これによって(1)バッテリー性能の安定化と長寿命化、(2)バッテリー残量情報などの高精度表示、(3)充電時間の短縮(急速充電時、従来比約3分の1)、(4)世界初の自動リフレッシュ充電機能、(5)同一充電器での異種バッテリー充電(例:ニカド/ニッケル水素)が可能、(6)異種のバッテリーに変更した場合でも、現在使用中の車両コントローラーと充電器が使用出来るなど、さまざまなユーザーメリットを生み出している。
また、「I.F.E.S.」は、次代のインフラ整備計画に織り込むことで、電動ハイブリッド自転車、電動スクーター、電動車椅子など多種製品にも対応可能は《駅前など公共施設での共同充電ステーション構想》を具現化できる技術となっている。
ヤマハ発動機(株)では、この「I.F.E.S.」を、次代の小型EV普及拡大に重要な技術システムと認識し、関連業界のメーカーに、広く採用を働きかけていく計画である。
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開発の狙いと展望 |
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電動ハイブリッド自転車及び、小型EVにとって、(1)「バッテリー」(2)「充電器」(3)「車両コントローラー」の主要3部品は、使い勝手や利便性を左右するユニットです。近年、技術研究が多方面で行われており、特にバッテリーについては、高性能化、残量の認識性、汎用性、小型化、低コスト化等のニーズが多く、これらに応えるべく、その性能が著しく向上しています。しかしながら研究開発においては、個別モデル毎に主要3部品が専用設計化されている傾向もあり、ユーザー負担軽減の視点から、利便性向上を求められています。
このような背景をふまえ、《バッテリーの性能をフルに発揮させる》ことを主眼に研究を開始し、このほど実現したのが「I.F.E.S.」です。開発にあたっては、「バッテリー」「充電器」「車両コントローラー」それぞれの部品の状態が、互いの性能に密接に関連することに着目。互いに通信・交信機能を持たせるシステムを構築しました。
具体的には、バッテリーボックス内にCPU搭載の頭脳を内蔵する「インテリジェントバッテリー」を新開発。これにより上記3部品の相互関係と要求特性の電子制御が可能となり、バッテリーの性能を理想的な形で引き出すことに成功。環境対応型エネルギーの新基準を提唱するシステムとなっています。
またこの「I.F.E.S.」では、本システムに準拠する様々な小型EVが、ひとつの充電設備を共同利用することが可能となります。例えば、駅前や病院、商店街、集合住宅の駐輪場等の"充電ステーション"を共同で利用するというような、次世代地域交通社会の具現化を提案するものとなっています。 |
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「I.F.E.S.」の仕組み(構造概要) |
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バッテリーボックス内にCPU搭載の頭脳=BMC(バッテリー・マネージメント・コントローラー…CPUとICメモリーにて構成)を内蔵することによって「インテリジェントバッテリー」を具現化。「インテリジェントバッテリー」のBMCは、常に変化するバッテリーの状況(電流、電圧、使用頻度、使用状況、バッテリー温度など)を逐次検出。その情報は、ICメモリーのデータをもとにCPUにて演算処理され、最適充電要求特性、最適放電要求特性を決定、それぞれ充電器及び車両コントローラー側へ提供します。
例えば、BMCが充電器に対し、バッテリーの情報を送ると、これに呼応して充電器では内蔵のCPUが演算処理し、最適特性の電流でバッテリー本体に蓄電します。またBMCは、現状バッテリー容量にとって最適な放電(出力)量を常に演算決定し、それを車両コントローラー側に提供する仕組みとなっています。
このように、バッテリーがその都度必要とする最適充・放電(入出力)量を、「バッテリー」「充電器」「車両コントローラー」それぞれの機能と状態に照らし合わせて制御。その結果バッテリーの力をフルに引き出すとともに過度な負担を解消し、性能の安定化を促進するなど、様々なメリットを生み出すシステムとなっています。 |
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主な特徴 |
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バッテリー情報の高精度表示 |
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BMCに内蔵のCPUに、電流検出、電圧検出、温度検出機能などを設定しました。これによりバッテリーの状態を詳細に認識・演算でき、これでバッテリー残量、リフレッシュ放電時期、劣化状況などの情報の高精度な表示が可能となります。残量多段階表示など、ユーザーは、バッテリー状態をよりキメ細かく把握でき、安心して計画的な使用が出来ます。 |
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バッテリー性能の安定化と長寿命化 |
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BMCを搭載することで、常に電流、電圧、使用頻度、使用状況、バッテリー温度、等の環境変化に対応した最適な充・放電が可能となりました。これで過充電やメモリー効果の発生を防止でき、バッテリーの劣化を最小限に押さえることが可能。結果として、バッテリー交換時期の延長、ランニングコスト低減が達成されます。 |
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充電時間の短縮(急速充電時、従来比約3分の1) |
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BMCの最適制御の結果、急速充電時のバッテリー負担を低減するとともに、充電時間の大幅な短縮(従来比約3分の1)を実現しました。 |
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世界初の自動リフレッシュ充電機能 |
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BMCでは充電回数、充電時のバッテリー温度、放電量など、メモリー効果に影響を及ぼす諸情報の検出及びメモリー効果の推算が可能で、これによって、充電器に繋ぐだけで必要に応じて自動的にリフレッシュ操作を実行する「自動リフレッシュ充電機能」を持たせることができました。この機能は世界初です。 |
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種類の異なるバッテリーの充電が同一充電器で可能。
(バッテリーボックスと充電器が「I.F.E.S.」準拠の場合) |
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ニカドバッテリーとニッケル水素バッテリーでは、充電時の制御特性が異なるため、従来充電器はそれぞれの特性に適合したタイプが設定されていました。「I.F.E.S.」では、BMCと充電器内のCPUとの間で情報交換機能を持つことから、充電時の制御特性に対して最適化が実現。種類の異なるバッテリーの充電が同一の充電器で可能となりました。 |
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種類の異なるバッテリーに変更した場合でも、現在使用中の車両コントローラーと充電器が使用可能。
(バッテリーボックス、車両充電器、車両コントローラーが「I.F.E.S.」準拠の場合) |
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また、BMCから車両コントローラー側のCPUへの情報発信機能も備えていることから、電池容量が変更になった場合やニカドバッテリーからニッケル水素バッテリーにバッテリー種類が変更になった場合でも、現在使用中の車体及び充電器が継続使用可能となります。
こうしたシステムの汎用性から、電動ハイブリッド自転車、電動スクーター、電動車椅子など小型EVの、統一バッテリーシステムとしての応用が可能。駅前などの"共同充電ステーション"などの構想を具現化できるシステムとなっています。 |
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駐輪場等の共同充電ステーション構想(駅前・病院・商店街・集合住宅) |
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リゾート地の小型EVレンタル構想 |
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