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環境対応「SD(スーパーディーゼル) エンジン」開発 3リッターカーを実現する低燃費&EURO4提案レベルに匹敵する低エミッションを実現

1999年03月23日発表

 ヤマハ発動機(株)は、かねてより技術開発を進めていた21世紀の新世代環境対応型・自動車用エンジンの一つとして、SDエンジンの開発に、このほど成功しました。燃料3リッター当たり100Km走行が可能で、また 「Euro4」* 提案レベルに匹敵する環境に優しい低排ガス値を実現する低燃費・低エミッションを特徴とするコンパクトなエンジンです。

 新開発したエンジンは、SD(スーパーディーゼル)と称し、"2サイクルディーゼル"とヤマハ独自の"燃焼システム"を組み合わせた排気量1000ccエンジンです。地球環境保護を重視したコンパクトカー用のエンジンとして、優れた特徴を備えています。





1000cc SD(スーパーディーゼル)エンジンの主な特徴

1)

有害排出ガスを「EURO4」提案レベル(現行EURO2に対し、CO約50%、HC+NOx約60%、パティキュレート約70%削減)まで低減

2)

総合エンジンコントロールシステムにより、ディーゼル特有の黒煙等の排煙を大幅に削減

3)

低燃費・3リッターカー(3リットル/100kmの走行が可能)の実現

4)

ハイレスポンス・高トルク・高出力の実現(同一排気量従来型ディーゼルエンジン、過給器なしと比較し、中低速トルクは約50%、最高出力は約30%向上)

5)

軽量・コンパクトの実現(同一出力従来型ディーゼルエンジン、過給器なしと比較し、容積約30%減、重量約20%減)により、コンパクトカーの設計自由度、基本性能及びドライバビリティに貢献、自動車としての一層の総合性能向上が可能

6)

250時間の最大出力耐久等各種テストをクリアした耐久・信頼性

*「Euro4」とは:現在はEuro2が欧州で施行されています。今後2000年にはEuro3の導入が予定されており、Euro4は、2005年に導入が検討されています。目標値(上記 1)をご参照)は、現在、提案レベルで、今後詳細がつめられる。



主な効用

 開発にあたっては、2サイクルエンジンの軽量・コンパクトそしてパワフルという特性と、ディーゼルエンジンならではの低燃費・低CO2排出という特性を最大限引き出すことを主眼としました。これにより、過給器がなくてもパワフルな走行性と、より環境に優しい低排出ガス値を実現しました。また、シンプルな構造により、整備性やコストの面でもメリットが見込まれるエンジンとなっています。
また、2サイクルやディーゼルエンジンの弱点といわれていた耐久性・窒素酸化物排出・排煙等は、当社独自の小型エンジンの先進技術や長年の研究開発で培った技術で、以下の通り克服しています。

 

窒素酸化物(NOx)を大幅に抑制

 吸気系のインテークマニホールド部に掃気量制御の絞り弁を設け、電子制御で作動させ筒内の残留ガスをコントロールし燃焼を最適に行うことで、窒素酸化物を大幅に抑制することに成功しました。


ディーゼル特有の黒煙を目に見えないレベルまで削減

 副室に多噴孔式インジェクターを設け、同時に副室から主室への連絡孔に独自開発による4連絡孔をもつ燃焼効率の高い燃焼室を採用しました。さらにエンジンコントロールシステムを採用して、電子制御噴射ポンプによるディーゼル特有の黒煙の抑制、油量の最適化による2サイクル特有の白煙の抑制を、それぞれ肉眼で識別できないレベルまで大幅に低減することに成功しました。


高い耐久・信頼性の確保

 エンジンコントロールシステムにより電子制御された潤滑オイルが、消費を最小限に押さえながら、クランクジャーナルベアリング、大端ニードルベアリング、シリンダー壁に直接吐出されるなど、必要なところに十分に供給されています。
また、耐熱性のある潤滑オイルの採用、様々なノウハウを折り込んだ熱変形に強いピストン及びピストンリング、そして熱変形に配慮した形状を持つニカジルメッキシリンダ等々、当社が持つエンジンノウハウを総合的に折り込み、高い耐久・信頼性を実現しています。

 なお、このSDエンジンの設計では、将来的にハイブリッド用ベースエンジンとしての可能性も視野に入れ開発しており、21世紀の新世代エンジンとしての新たな基準を提唱するものです。勿論、国内外の自動車製造メーカーへの技術供与やOEM供給が可能です。

 ヤマハ発動機(株)は、「私たちは、私たちのかけがえのない地球、自然によって生かされている」という考えのもと、感動創造企業として、常に「環境と感動のバランス」を考え、地球環境を重視した経営や活動を展開しております。
「自然」や「環境」に優しい商品を実現するために、ヤマハ発動機(株)は、電動ハイブリッド自転車『ヤマハ・パス』の開発及び販売(1993年)や『2サイクル二輪エンジンの排ガス浄化システム』の開発(1999年)等々を行って参りました。この度の自動車用SDエンジンの開発も、ヤマハ発動機(株)の環境対応活動の一環です。



技術の特徴

高出力・低燃費・低エミッションを実現する4連絡孔採用のヤマハ独自の燃焼システム

 副室に燃料噴射ノズルを装備し、同時に副室と主室の連絡通路に独自開発の「4連絡孔」による4つの孔を設けました。4つの孔は燃焼室内にスワール(横巻き渦)を発生し易いような形状とし、また、副室からの主室への火炎噴流の流れにとって抵抗とならない最適形状を採用。これで、強力なスワール効果と「絞り損失」低減を両立させ、優れた燃焼効率を達成して高出力、低燃費、低エミッションを実現しています。





高出力を保ちながら中低速で約50%トルクを向上させる可変圧縮比システム

 エンジン回転数及び負荷に応じて圧縮比を制御する可変圧縮比システムを採用しました。ピストン上死点の位置から排気ポートまでの距離を変えることで容易に圧縮比を変えることができるシュニューレ(Schn*rle)掃気式2サイクルの構造を利用したもので、排気ポートを上下2段とし、上側ポートに切り替えバルブを設け、このバルブの開閉により圧縮比を13~18の範囲で可変します。
 低中速回転時には圧縮比を高く、高速回転、中負荷以上では圧縮比を低く制御し、滑らかなトルク特性と、無過給のディーゼルとしては画期的な33kW/リッターという高い出力を両立させました。とくに、中低速域では同一排気量従来型ディーゼルエンジン比較で約50%のトルク向上を実現しています。





掃気量制御の絞り弁の採用でNOx排出を大幅に抑制

 吸気系のインテークマニホールド部に電子制御の掃気量制御絞り弁を装備、負荷や回転数を反映して作動させ、とくに軽負荷運転時には、この絞り弁を閉じることにより、新気の量を減らしてシリンダー内の残留ガスを増加させます。これにより、燃焼温度及び酸素濃度を低下させ、燃焼室内で窒素が酸化されることを最小限に押さえることでNOx生成を低減することに成功しました。





コンパクト設計により、重量約20%低減、容積約30%低減

 2サイクルのため、動弁系やオイルパンが不要で、コンパクトな設計が可能となりました。また、燃焼圧力の最適化により、エンジン強度部材への負荷を最小限とした合理設計を施しています。これらの結果、従来型のディーゼルエンジン(同一出力)比較で、約20%の重量低減、約30%の容積低減を実現。とくにシリンダーヘッドの高さ等で大幅なサイズダウンが可能で、コンパクトカーのデザイン上の自由度が大幅に向上します。





エンジンコントロールシステム

 燃料噴射系、潤滑システム系、可変圧縮比システム、掃気量制御絞り弁などを、エンジンのそれぞれの運転状況に応じて集中制御するエンジンコントロールシステムを採用し、SDのもつ優れた高出力、低燃費、低排出ガス値並びに、高い耐久・信頼性を総合的にサポートします。



ヤマハSD(スーパーディーゼル)エンジンの主要諸元


エンジン形式

2サイクルディーゼル

気筒数配列

並列2気筒

排気量

982cm3

ボア×ストローク

82×93mm

全長×全幅×全高

374×565×550mm

重量

95kg

燃料消費量(EUモード)

3L/100km

最大出力

33kW/4000rpm

最大トルク

80Nm/2500rpm

排出ガス規制対応  

Euro4提案レベル


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