Annual Report 2015

閉じる

写真

NEW GROWTH NEW MILESTONES

ひとまわり・ふたまわり大きな
『個性的な会社』へ

ヤマハ発動機グループは、2016年1月から新たな中期経営計画をスタートしています。 同計画では、前中期経営計画で回復した業績規模と収益力をもとに 新たな成長へと取り組み、『Revs your Heart』のスローガンにふさわしい、 ひとまわり・ふたまわり大きな『個性的な会社』を目指してまいります。

ヤマハ発動機株式会社
代表取締役社長 社長執行役員
柳 弘之

mask

以下項目について社長インタビューをしました。

Q1前中期経営計画の総括についてお聞かせください。

Aヤマハ発動機グループ本来の事業規模・収益力を回復しました。

 前中期経営計画(2013年~2015年)では、売上高1兆6,000億円・営業利益800億円(営業利益率5%)を経営目標に、商品競争力の強化・モノ創り改革・構造改革・成長戦略に取り組み、収益体質の強化とコストダウンを進めてきました。
 その結果、最終年度の2015年には売上高1兆6,154億円、営業利益1,204億円となり、3期連続の増収増益を達成することができました。主要生産台数は3年間で約60万台減少したものの、先進国市場が好調だったことや新興国での高価格帯商品の投入効果などにより売上高は伸長しており、市場シェアはアセアンを除く二輪車事業、レクリエーショナル・オフハイウェイ・ビークル(ROV)事業で拡大し、マリン事業では大型船外機のシェアが拡大しました。営業利益率も5%の目標を2014年に前倒しで達成し、2015年には7.5%まで向上しました。財務面でも、ROE(株主資本利益率)は12.6%(APAの影響を除けば16.7%)、自己資本比率は37.6%(前期末比2.5ポイント改善)、1株当たり純利益は171.89円(APAの影響を除けば232.59円)、時価総額も1兆円を超えて安定的に推移しています。
 このように、ヤマハ発動機グループの業績規模と収益力は過去最高益を記録した2007年の水準まで戻りつつあることから、ここから、もうひとまわり・ふたまわり大きな成長を目指して次の経営変革に挑戦したいと考えています。

※APA: Advance Pricing Agreement(移転価格税制に関する事前確認)

売上高・営業利益

売上高・営業利益

Q2新中期経営計画の経営目標についてお聞かせください。

A売上高2兆円・営業利益率10%水準から、新しい成長を目指します。

 前中期経営計画の3年間は、先進国で堅調な状況が続く一方、新興国では市場が低迷するという方向感の中、先進国と新興国のビジネスをうまく組み合わせた結果、リーマンショック以前の水準へと業績を回復させるとともに、持続的成長を支える安定した財務基盤を築くことができました。
 新中期経営計画(2016年~2018年)の3年間は、先進国では堅調な景況感が続き、新興国では一部市場での回復が見られるという前提のもと、最終年度の2018年には「売上高2兆円・営業利益1,800億円(営業利益率10%)の水準」へと到達させ、ふたまわり目となるさらなる新しい成長への準備を完了させるという位置づけにしています。
 その実現のために、この3年間で、先進国事業では、二輪車事業、マリン事業、レクリエーショナルビークル(RV)事業含めて堅調に推移させ、新興国事業においては、インドネシア・インド・ベトナムの3カ国を中心に収益の拡大を目指し、既存事業の稼ぐ力をさらに高めます。こうして得られた安定的な収益は、コストダウンなどの構造改革施策を継続して安定的な財務基盤の維持・強化に努めながら、新しい成長戦略への投資に振り向けてまいります。

2018年度の売上高・営業利益計画

2018年度の売上高・営業利益計画
写真

稼ぐ力をさらに高めながら、安定的財務基盤を足がかりに新しい成長戦略へ積極的に資源を投入していきます。

mask

Q3新中期経営計画の財務戦略についてお聞かせください。

A既存事業の稼ぐ力を高め、安定的な財務基盤を維持強化していきます。

 新中期経営計画では、既存事業の稼ぐ力を高め、安定的な財務基盤の中から新しい成長投資・株主還元を増やすことを財務戦略の基本方針としています。自己資本比率42.5%、3カ年平均のROEは15%程度、配当性向の目安は30%とし、EPS(1株当たり利益)300円以上を2018年の財務目標に定めて、限界利益・投資効率・事業効率をより意識した経営に取り組んでまいります。

財務戦略

既存事業の稼ぐ力(限界利益・投資効率・事業効率)を高め、
安定的財務基盤により新しい成長投資・株主還元を増やす
財務戦略

新しい成長戦略への経営資源投入

 新中期経営計画では、成長戦略を具現化するために既存事業への投資は前回並みに抑え、新規成長戦略に合計1,300億円の積極的な投資を実行します。
 設備投資は、既存事業において前中期経営計画と同レベルの1,800億円、これに成長戦略のための投資600億円を加え、合計2,400億円を投じます。研究開発費は、既存事業で2,800億円、成長戦略のための投資700億円、合計3,500億円を投入、ふたまわり目につながる成長戦略を実行していきます。

新しい成長戦略への経営資源投入
新しい成長戦略への経営資源投入

既存事業を支援する金融ビジネスの拡大

 当社グループは米国、カナダに販売金融子会社を設立し、既存事業を支援するファイナンス事業の本格的な取り組みを開始しました。北米を中心に運営基盤を強化し、債権残高3,000億円規模のビジネスに育成します。

販売金融債権残高
販売金融債権残高

Q4「既存事業の稼ぐ力」の基盤となる商品競争力の強化についてお聞かせください。

Aヤマハらしいモノ創りを加速し、270のニューモデルを投入します。

 既存事業の稼ぐ力を高めていくために、「製品・仕事の質」「ブランド力」「稼ぐ力」を上げながらヤマハらしいモノ創りで商品競争力を強化していくことが最重要課題と考えます。前中期経営計画では2015年までに250モデルを市場投入しましたが、新中期経営計画では270モデルの投入を計画しています。当社が大切にするモノ創りへの想いとこだわりを「発、悦・信、魅、結」の5つのキーワードに込めて、ヤマハらしい「個性ある新商品」を世界の市場にお届けしてまいります。

Q5新中期経営計画で推進するグローバル経営についてお聞かせください。

A開発、人材マネジメントでのグローバル化を推進します。

 ヤマハ発動機グループは、売上高構成比率、主要生産台数構成比率ともに約90%を海外が占めるグローバル企業です。開発についてもグローバル化を推進し、二輪車事業では車体・エンジンを含めて開発の現地化比率を3年間で35%へ、特機事業についてはレクリエーショナルビークル(RV)の車体開発を70%へ、マリン事業ではウォータービークル(WV)やスポーツボート(SB)の艇体については80%へと海外での開発比率を引き上げます。
 また、経営の海外移管を推進し、現地リーダーの育成プログラムの導入や外国人幹部・女性管理職の登用により人材マネジメントの多様性を追求していきます。

Q6新中期経営計画の成長戦略についてお聞かせください。

A3つの事業領域で、4つの成長戦略を推進します。

 新中期経営計画では、「豊かな生活」「楽しい移動」「人・社会・地球にやさしい知的技術」の3つの成長軸を具体化する、以下の4つの成長戦略テーマに取り組みます。

ひろがるモビリティの世界

 当社は、1993年の電動アシスト自転車『PAS』の開発から2002年の業界初のEV二輪車の発表、2004年のコミュータービークル(CV)市場の創出、個性的なモーターサイクル(MC)の展開へと、モビリティの世界を広げてきました。新中期経営計画においても、2014年に『TRICITY』を発表した第3の移動体 リーニング・マルチ・ホイール(LMW)から本格的なピュアスポーツ感覚のROV、さらには二輪車の技術から四輪へと世界を広げるコンパクトフォーウィーラー(C4W)へと、「ひろがるモビリティの世界」を追究していきます。

マリン・世界3兆円市場への挑戦

 マリン事業では、高信頼性・軽量・低燃費エンジンを提供する「エンジン・サプライヤー」からマリンライフに関わるすべての領域にアプローチする「システム・サプライヤー」として強固なNo.1ブランドを創り上げ、ヤマハと出会うすべての人々に「総合マリンライフ価値」を提供していきます。

ソリューションビジネス

 インテリジェントマシーナリー(IM)事業では対象領域を工業一般や生活全般へと広げ、産業用無人ヘリコプター(UMS)事業では既存の農業利用から監視やインフラまで適用分野を広げ、さらには当社の技術を駆使し新しい分野にトライする、ヤマハらしい「個性ある多様性」を展開していきます。

基盤技術開発

 エンジン・スマートパワーといった、ヤマハ独自の技術の深化とともに、ロボティクス、知能化、ITなどの新しい基盤技術の開発に取り組み、要素技術の進化に加え、新しい組み合わせを創ることで、イノベーションへのチャレンジを進めていきます。

技術を広げる x お客さまを広げる
技術を広げる x お客様を広げる

Q7新中期経営計画の二輪車事業戦略についてお聞かせください。

A収益性を追求する『高効率型』の事業経営へ転換します。

 二輪車事業では、最終年度の2018年に「売上高1兆3,000億円・営業利益740億円」を到達目標に、『高効率型』の事業経営を推進します。数量規模は追わず、高い経営効率・商品競争力という観点から商品開発の効率化、コストダウンの推進などに取り組み、既存事業の稼ぐ力を高めて安定的な収益を確保する事業体質づくりに取り組んでまいります。

商品開発の効率化

 新中期経営計画では、プラットフォームモデルを最大限活用することにより、エンジン・車体の数を集約しモデルのラインナップを広げ、多様化するお客さまのニーズに応えて“早く”“安く”“旬の”「個性ある新商品」をお届けしていきます。

コストダウンの継続

 調達、製造・物流のコストダウンをさらに追求し、購入材料費の5%に相当する総額600億円の圧縮を目指します。プラットフォームモデルのコストダウンを進め、サプライヤーのグローバルレイアウトを現在の650社から350社に集約します。また、ヤマハの特徴である「理論値生産」の考え方を物流にも適用して、物流でのコスト削減も目指します。

お客さまと結びつくマーケティング

 よりお客さまと結びつく販売・マーケティング網を展開していきます。販売面では、欧州ではお客さまのニーズを「Feel」「Move」「Race」の3つに分け、それぞれのニーズに沿った店づくりを進めます。マーケットの拡大に向けた取り組みでは、ヤマハミュージックとのコラボレーションや、商品を楽しむ場の提供などを進めていきます。

二輪車 事業経営計画
二輪車 事業経営計画
写真

各事業でそれぞれの成長戦略に取り組み、ひとまわり・ふたまわり大きな『個性的な会社』の実現に踏み出します。

mask

Q8二輪車事業の重点地域戦略についてお聞かせください。

A各重点市場に最適な『高効率型』の二輪車事業戦略を展開します。

 各市場の動向から数量規模を追う市場と安定的な収益を優先する市場を見極め、重点地域ごとに最適なヤマハらしい独創性・技術・デザインでつくり込まれた「個性ある新商品」をお届けしていきます。
 販売の大半をカバーしているアセアン、インド、ブラジル・中国、先進国を重点地域と位置づけています。

アセアンシェア・高収益獲得へ

 アセアン3カ国へはプラットフォームモデルの投入の強化を進めていきます。特にインドネシア市場は新中期経営計画中にシェアの回復と収益の改善を見込み、エリアマーケティングをきめ細かく展開していくことで数量規模の拡大を図ります。具体的にはスポーツ領域のさらなる強化、プラットフォームバリエーションの展開で商品性を高め、マーケティング展開では顧客接点力の強化に努めます。

インド数量規模拡大・安定収益

 インド市場においては大幅な伸長を狙い、マス領域をターゲットに商品を拡充して、数量規模の拡大を目指します。具体的には、新興国戦略モデルを市場投入し、特に地方部を中心に販売網の量的・質的向上を図ることで、顧客接点力の強化に努めます。

ブラジル・中国損益分岐点経営で安定的収益へ

 需要が減速傾向にある市場では、為替、経済、政治を含め不確定要素が多い地域のため、損益分岐点を下げた経営に取り組み、安定的な収益を確保します。

先進国ブランド力と構造改革で収益安定化

 「個性ある新商品」の積極的な市場投入により、「YAMAHA」という高いブランド力を発信していくとともに、さらなる構造改革を推進し安定的な収益体質を継続させていきます。

Fino
Fino
Saluto
Saluto
MT-10
MT-10

Q9マリン事業の取り組みについてお聞かせください。

Aさらなる成長へ向け、エンジン・サプライヤーからシステム・サプライヤーへ

F200
F200
 マリン事業では、「世界3兆円市場への挑戦」に向けて本格的に舵を切ってまいります。
 ヤマハ発動機グループは、総合事業力・信頼性・ネットワーク力により世界の市場に高いブランド力を誇り、2015年には売上高3,000億円・営業利益率20%のビジネスへと成長を遂げています。特に大型化が進む北米市場においては、高い製品技術力を持つ当社船外機『F200』が購入者からの圧倒的な信頼感を獲得しています。
 新中期経営計画では、さらに成長するビジネスモデルを目指して、「エンジン・サプライヤー」から、エンジンに艇体や周辺機器もパッケージングされた幅広い価値を提供する「システム・サプライヤー」へとポテンシャルを高め、プロが『納得し』、上・中級顧客には『なくてはならない』、そして初級顧客が『憧れる』グローバルNo.1ブランドとしての地位をより強固なものにしていきます。
 そのために、幅広い事業領域と商品ラインナップによる総合事業力、商品やシステムだけでなくビジネスパートナーとしての信頼性、グローバル市場を網羅し、かつ市場に密着した販売・サービスが行えるネットワーク力の3つの力を高めていきます。

マリン 事業経営計画
マリン 事業経営計画

Q10特機・その他の事業の取り組みについてお聞かせください。

A高付加価値化を徹底し成長する個性的なビジネスへと育成します。

 特機・その他の事業については、「個性的なビジネスモデルを創る」ことが大きな目標となります。事業全体として売上高3,500億円・営業利益率10%から、さらに成長する個性的なビジネスモデル群へと育てていきます。

 

レクリエーショナルビークル(RV)事業

 特機事業では、RVを二輪、マリンに続く第3の基幹事業と位置づけ、「売上高2,000億円・営業利益率10%水準」を2018年の目標に、商品の差別化・高付加価値化を徹底した商品開発を加速します。
 なかでも、RV事業の中核をなすレクリエーショナル・オフハイウェイ・ビークル(ROV)は、レジャーに対する嗜好性の高さや四輪バギー(ATV)からのシフトを背景に北米市場の拡大が続いています。新中期経営計画では、モーターサイクルメーカーとして持つノウハウを組み合わせて、他社にはない商品の開発を進めます。商品展開をスポーツ領域主体とする一方、レクリエーション領域での商品差別化にも注力することでそれぞれの領域のシェア拡大を図り、スポーツ領域ではNo.1ブランド確立を目指します。2018年には北米でのシェアを現在の7%から12%に伸ばし、北米市場での存在感を高めてまいります。

インテリジェントマシーナリー(IM)事業

 IM事業では、開発・製造・販売一体のスピード経営という当社の強みと、幅広い顧客ベースを持つ日立ハイテク社からの部門吸収効果を最大化して、自動車、家電・LED、モバイル・EMS(設計・生産受託サービス)領域へと販路を拡大し、売上高600億円・営業利益率20%の高収益型ビジネスモデルを確立します。

産業用無人ヘリコプター(UMS)事業

 産業用無人ヘリコプター事業では、売上高100億円の個性的なビジネスモデルを構築し、グローバル成長に挑戦します。事業拡大に向けた製品技術開発と並行して、農業用途から監視やインフラ分野へと裾野を広げてソリューションビジネスへの転換を図るとともに、米国での農薬散布事業への参入を通して世界市場の開拓を進めてまいります。

特機・その他 事業経営計画
特機・その他  事業経営計画

Q11株主還元策についてお聞かせください。

A安定的な財務基盤を維持強化し、配当性向30%の株主還元を実施します。

 新中期経営計画では、配当性向30%を目安として株主還元を実施していきます。
 前中期経営計画ではROE(平均)13.9%、1株当たり純利益172円(APAの影響を除けば233円)、配当性向20~26%の水準で推移し、2015年の株主還元は、中間配当と併せて1株当たり44円の年間配当を実施いたしました。2016年は全事業で安定した収益が見込めることから、1株当たり70円の年間配当を予定しています。

 

株主還元策

配当性向30%へ
2015年:44円実施、2016年:70円予想
当期利益・年間配当
株主還元策

Q12ステークホルダーの皆さまへのメッセージをお聞かせください。

Aひとまわり・ふたまわり大きな『Revs your Heart』を実現します。

 自らの可能性を信じて高い目標を掲げ、すべての力をそこに注ぎこむ――MotoGP参戦やヤマハ発動機ジュビロの活躍の場で世界の人々の魂を揺さぶるヤマハ発動機グループのチャレンジ・スピリットは、前中期経営計画においても果敢に発揮され、当社グループは本来の業績規模と収益力を取り戻しつつあります。
 この成長をより確かなものにするために、新たな中期経営計画にグループ社員一人一人が「挑戦するこころ」で臨むことで、ヤマハ発動機グループはひとまわり・ふたまわり大きな『個性ある会社』を実現し、ブランドスローガン『Revs your Heart』にふさわしい、心躍る豊かな瞬間・最高の感動体験をステークホルダーの皆さまと共有していきたいと考えます。皆さまの変わらぬご支援をよろしくお願いします。

YAMAHA / Revs your Heart
写真
写真

PAGE TOP