きれいな水のある暮らしを世界に

世界の人々に豊かさと喜びを

私たちの住むこの地球は、表面の3分の2が水で覆われていますが、その大部分は海水であり、生活に利用できる水はわずか0.01%でしかないといわれています。加えて、急速に進む人口増加が地球の水環境の悪化、水資源の不足を加速させ、現在もきれいな水の確保が困難な地域がたくさんあります。 この現状を少しでも改善するために、当社では水事情に恵まれない地域にきれいな水を供給する浄水装置(「ヤマハクリーンウォーターシステム」)を独自に開発し、事業を展開しています。

安全な水資源を利用できる人口の割合

1人1日当たり最低20リットルの安全な水が住居から1キロ以内の距離に確保されている人口の割合

安全な水資源を利用できる人口の割合

出典:UNICEF, Progress on Drinking Water and Sanitation 2012 UPDATE, Drinking water coverage in rural areas, 2010

1960年代から取り組む「社会的価値創出ビジネス」

「ヤマハクリーンウォーターシステム」は短期的、直接的な営利を求める通常のビジネスの枠組みを超えた取り組みであり、当社ではこのような活動を「社会的価値創出ビジネス」と位置づけています。
「社会的価値創出ビジネス」の歴史は古く、創立時にまで遡ります。1955年の創立以来、当社は市場の開拓と拡大に取り組み、世界180を超える国と地域で事業を展開してきました。先進国企業があまり行かないようなアフリカの各地域にも1960年代から赴き、船外機や漁船の販売にあたってまずは効率的な漁法を現地の人々に教えることから始めています。生活水準の向上に大きく貢献するとともに、現地の産業育成にも貢献すること──。既存の市場における価値を追求するだけでなく、経済の健全な発展や環境保護に配慮して社会課題の解決を図り、市場を創出するという活動に、当社は創立時から取り組んできたのです。

「ヤマハクリーンウォーターシステム」で地域の水事情の改善を

「ヤマハクリーンウォーターシステム」は、地域の社会的課題への着目から誕生しました。当社は1974年にインドネシアの工場YIMM*1を設立しましたが、駐在員の家族から寄せられた「水道水が茶色く濁っていて困る」との声に応えて、水道水をより浄化させる装置の開発をスタートさせ、1991年に家庭用浄水器の販売を開始しました。その後、周辺村落の水事情の改善を目的に、河川の水を利用した浄水装置の開発を開始し、以降、数年間にわたって、日本政府や国際機関などからの支援も受けながら、インドネシアをはじめベトナム、カンボジアなどで事業化調査や実証実験を目的としたプロジェクトを展開してきました。2010年にはインドネシアで「ヤマハクリーンウォーターシステム」の販売をスタートし、現在では他のアジア諸国、アフリカでも導入が進んでいます。

*1 Yamaha Indonesia Motor Manufacturing

地域での自主運営を可能にするために

「水」は人々の生命と営みを支える、最も重要な資源です。この資源を安定的に活用していくためには「現地でどう使い、どう管理していけばよいか」という長期的な方策が求められます。そこで当社は、「ヤマハクリーンウォーターシステム」に、自然界における砂、砂利、水中のバクテリアなどによる水浄化の仕組みを応用した「緩速ろ過式」を採用しました。この方法は河川や湖沼の表流水を原水にして、一日で8,000リットル(約800~1,200人分)の浄水を供給可能としながらも、仕組みがシンプルで大きな電力や特別な凝集剤を必要としないため、導入後のランニングコストがほとんどかかりません。また、シンプルであるがゆえにメンテナンスも容易になっており、地域の人々だけで給水所を自主運営することができます。

ヤマハクリーンウォーターシステム

きれいな水が時間とビジネスを生みだす

水が変われば、暮らしが変わります。きれいな水は地域の人々の衛生概念を向上させるほか、下痢・発熱などの疾病を大幅に減少させます。また、もともと水資源に乏しい国においては、水汲みは大変な重労働でした。しかも、それは女性や子どもの仕事とされてきたため、「水を得る」という作業によって、女性や子どもはこれまで多くの時間を奪われてきました。現在、「ヤマハクリーンウォーターシステム」を導入した村落では、女性や子どもたちが、水汲みからの解放によって得られた時間を生産・学習活動へ充てられるようになりました。そこから水配達や洗浄・製氷など、新たなビジネスのアイデアが生まれ、村落が活性化していくのです。

浄水のためのフィルターや凝集剤は不要専門家を必要としない簡単なメンテナンス
浄水のためのフィルターや凝集剤は不要
専門家を必要としない簡単なメンテナンス

きれいな水が人々と地域を変えていく

きれいな水のある暮らし。その体験は地域の人々の衛生概念を変え、生活レベルのさらなる向上を促します。「ヤマハクリーンウォーターシステム」を導入したセネガルの村では、運営のための委員会が設立され、日々のメンテナンス、水販売活動が行われるようになったほか、技術移転、自治能力の向上にもつながっています。
当社では、今後、「ヤマハクリーンウォーターシステム」と併せて、ソーラー発電、点滴灌漑システム、衛生設備などを導入することで、気候変動への適応や排出物削減などに貢献しつつ、農業の生産性向上など、経済的安定に貢献することを目指しています。社会課題の根本的な解決への道のりは、決して容易ではありませんが、それぞれの村落の事情に真摯に向き合うことで、地域の未来を明るくする一員になりたいとの思いで活動を続けていきます。

きれいな水が人々と地域を変えていく

「新興国の事情を理解した優れたシステム」としてグッドデザイン金賞受賞

「新興国の事情を理解した優れたシステム」としてグッドデザイン金賞受賞

公益財団法人日本デザイン振興会主催の2013年度グッドデザイン賞において、「ヤマハクリーンウォーターシステム」が「金賞」を受賞しました。審査委員の評価には「生活に欠かすことのできない『安全な水』を新興国において確保する取り組みであり、日本企業の国際貢献の模範。新興国の事情を理解したシステムデザインは秀逸。技術先進国の生活的価値を提供する支援であり、日本のデザインの未来を示す取り組み」とあり、装置だけでなく活動の本来の主旨が高く評価されました。

写真提供:久野真一/JICA

[特設サイト]http://global.yamaha-motor.com/jp/yamahastyle/movingyou/001/index.html
特設サイト
きれいな水のある暮らしを世界に ―ヤマハクリーンウォーターシステム―
「ヤマハクリーンウォーターシステム」は、村人による自主運営が可能なローテクの浄水システムです。
人々の暮らしを変えつつあるその水汲み場を訪ねた様子を動画で紹介しています。