WMX MX1シーズンレビュー
WMX MX1の2011年シーズンをご紹介します。
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フロサードがランキング2位!
コンストラクターランキングでも2位を獲得
コンストラクターランキングでも2位を獲得
モンスターエナジー・ヤマハ・チームにとって2011年モトクロス世界選手権MX1は、元世界チャンピオンでヤマハのエース、デビッド・フィリッパーツが度重なる怪我に泣き、ランキング9位に沈むという波乱が起こった。しかし、スティーブン・フロサードがランキング2位、ゴティエ・ポランがデビューウインを飾るなど、ルーキーたちのヤングパワーが炸裂。これによりコンストラクターランキングを2位とするとともに、YZ450FMのポテンシャルを証明することとなった。
ルーキー、フロサードの好走と
エース、フィリッパーツの不振
今シーズン、MX1に臨むモンスターエナジー・ヤマハ・チームは3名体制。2008年MX1世界チャンピオンのD・フィリッパーツ、昨年MX1にステップアップしたアンソニー・ボアシエール、そして昨年MX2ランキング3位のスティーブン・フロサードが、YZ450FMを駆り王座奪還を目指した。
第1戦ブルガリアGPはシーズンを有利に進めていく上でヤマハにとってのサプライズが待っていた。ルーキー、フロサードが予選でいきなりポールポジションを奪うと、シーズンの幕を開ける第1ヒートでなんと優勝したのだ。第2ヒートは序盤にリードを奪いながらも2位でフィニッシュとなったが、総合成績では1位と同ポイントの2位で開幕戦を終えたのである。勢いに乗るフロサードは第2戦オランダGPでも好走して総合4位に入ると、ランキングトップに躍り出る。しかし第3戦アメリカGPでは厳しい洗礼を受ける。フロサードは両ヒートともに転倒して総合18位に沈み、ランキングは4位に後退してしまう。
ここで踏みとどまるか? それともズルズルとランキングを下げるのか? ルーキーとしてひとつの分岐点に立たされたフロサードだったが、ここでフロサードはしっかりと踏みとどまった。第4戦ブラジルGPを4位とすると、欧州に戻って迎えた第5戦、母国フランスGPでは、集まった32,000人の大歓声の後押しを得て第1ヒートで優勝、さらに第2ヒートでは2位を獲得。MX1参戦5戦目にして初の総合優勝を遂げると、ランキングでもC・ドゥサル(スズキ)、A・カイローリ(KTM)に迫る3位で序盤の5戦を終えたのだった。
フロサードの活躍というよい意味でのサプライズがあった一方、大きな誤算も生じていた。それがヤマハのエース、フィリッパーツの不振である。第2戦オランダGPでは3位表彰台。さらに第4戦ブラジルGPでは、元MX1チャンピオンとしての本領を発揮し、予選でポールポジションを奪うとカイローリ、ドゥサルというランキング上位陣と大接戦の末に両ヒートを制し、総合優勝を果たしている。
これだけを見れば、フロサードと遜色のない活躍をしているように見える。ところが開幕戦は第2ヒートの転倒が響いて総合10位、第3戦のアメリカGPでは両ヒートともスタートで出遅れて総合6位、さらにフランスGPでは第2ヒートで転倒を重ねた結果、総合9位と、良い時と悪い時のギャップが大きく表れていたのだ。さらに第6戦ポルトガルGPでは転倒による怪我でノーポイントとなり、ランキングは7位に後退。トップと約90ポイントのビハインドを負い、チャンピオン争いから大きく後退することとなったのだ。
さらにフィリッパーツの状態は中盤以降も大きく改善されることはなかった。第7戦のスペインGPで総合2位として表彰台に立った後は、マシンのトラブルやアクシデントなどの不運も重なり、両ヒートで成績を揃えられず、表彰台を逃すレースが続いた。
そして、最悪のアクシデントがフィリッパーツを襲う。第12戦に向けて行っていたトレーニング中の事故で手首を骨折したのだった。これで、フィリッパーツは第12戦以降の4戦をキャンセルすることとなり、3度の表彰台(優勝1回、2位1回、3位1回)を獲得しただけで、ランキング9位でシーズンを終えることとなった。
進化を続けたフロサード
シーズンを通して好成績を残すことは非常に難しい。それは経験と実力持っているフィリッパーツの今シーズンを見れば分かることだ。しかしフロサードはシーズン中盤以降も高いパフォーマンスを見せ続けた。その走りは、MX1で2連覇中のカイローリやドゥサルといったトップライダーに肉薄するものであった。
地元フランスでMX1初の総合優勝以降の第6戦から、怪我を負い欠場することになる第14戦までの8戦に獲得した表彰台は4回。特に第8戦のスウェーデンGPは、今季2度目の総合優勝を獲得しているが、両ヒートを制しての「完全優勝」によるものだった。さらにその内容にも注目したい。第1ヒートはE・ボブリシェブ(ホンダ)を先行させてチャンスを待ち、ラスト2周となったところで抜き去って優勝。
第2ヒートではスタートからフィニッシュまで一度もリードを許すことなく優勝したのだが、途中2番手のカイローリとの差をコントロールするといった余裕を見せている。
これ以外にも、第10戦ラトビアGP、第13戦イギリスGPでは両ヒートとも2位という結果を残しており、ひとつのレースのなかで安定した走りができる点に成長の跡が伺えた。しかし、チャンピオンを獲得したカイローリとの違いは、シーズンを通しての安定感と勝負所で確実にポイントを挙げる勝負強さであった。
フロサードが完全優勝を飾った第8戦終了時点ではフロサードとカイローリの差は22ポイントに縮まっていた。フロサードにとってはここから一気に追いつき、追い越したい重要な勝負所であったが、波に乗って迎えたはずの第9戦ドイツGPは、第1ヒートこそ3位とするも、第2ヒートではスタートゲートに接触するアクシデントや、エンジンストールなどのミスにより15位として総合8位。さらに第11・12戦もともに表彰台を逃している。一方のカイローリは第9戦で総合2位とすると、第10・11戦と総合優勝を飾り、一気にランキングで優位な状況を作り出すと、そのままチャンピオンを決めたのである。
それでも、参戦1年目にもかかわらず世界トップクラスのライダーが集うMX1でランンキング2位を獲得したフロサードのパフォーマンスは、フィリッパーツに変わり、ヤマハのエースとしての役割を十分に果たしたといえるだろう。
一方で、YZ450FMのポテンシャルにも注目が集まった。それを証明するのがMX1ルーキーのフロサードの活躍だが、これだけではない。ボアシエールがMX1での自己ベストを何度も更新、第14戦ヨーロッパGPの第2ヒートでは3位を獲得するに至り、ランキング13位。またフィリッパーツに代わって第13戦から参戦したC・カンパーノが、初のMX1で総合10位を獲得。さらに最終戦では、モンスターエナジー・ヤマハからMX2に出場していたポランがフロサードに変わってMX1に出場したが、フロサードの再現とばかりにデビューウインを飾っており、多くのライダーの好走をYZ450FMが支えたのである。
今シーズン、ヤマハのチャンピオン奪還はならなかったが、エースであるフィリッパーツの不調を、ルーキーのフロサードがカバーする急成長をみせた。さらに新開発から2年目を迎えたYZ450FMが、様々なライダーのパフォーマンスを支える熟成を見せたという収穫があった。しかしヤマハが目指すのはチャンピオンであり、2012年はヤマハライダーのさらなる活躍が期待される。