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WSB・WSSシーズンレビュー

WSBとWSSの2010年シーズンをご紹介します。

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WSB

WSBシーズンレビュー|
YZF-R1を駆るクラッチローがランキング5位
ルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得!

2009年スーパースポーツ世界選手権、ルーキーでチャンピオンを獲得したクラッチローは、突如現れた期待の新人として大きな注目を集めた。そして今年、スーパーバイク世界選手権へ身を移すと、ベン・スピースの再現こそできなかったが、ランキング5位を獲得。しかしこの成績以上にクラッチローはこの過酷な舞台の上で強い光を放っていた。次代を担う才能はさらに大きな可能性を示した。


成績以上の強いインパクトを残したクラッチロー。来年はMotoGPへの挑戦が決定している

きらりと光る才能

 2010年のスーパーバイク世界選手権(WSB)は、ヤマハ・ステリルガルダ・ワールドスーパーバイク・チームからカル・クラッチローとジェームス・トーズランドが参戦。マシンはYZF-R1を使用した。
 クラッチローは昨シーズン、ヤマハからスーパースポーツ世界選手権(600ccクラス)に初参戦してチャンピオンを獲得。その高いポテンシャルを評価されて、今シーズンからWSBにステップアップした。ほとんどのコースが初めての経験だった昨年とは違い、今年は新しいマシンの性質を把握することに専念すれば良い状況ではあったが、長年このクラスに参戦しているベテランたちや、かつてMotoGPで活躍していた名ライダーたちが数多く参戦していることもあり、ルーキーにとっては決して楽な戦いの舞台ではなかった。こうした厳しい環境のなかで転倒などによるリタイアも何度か経験することとなったが、波に乗ったときにはライバルたちを簡単に抑え込んでしまう、きらりと光る才能を見せた。そして全13戦26レース中、優勝3回、ポールポジション6回、表彰台10回と大健闘し、ルーキー・オブ・ザ・イヤーに輝いた。ランキングでは5位に留まったが、数々の印象的なレースは、クラッチローを世界のトップライダーに押し上げることとなった。
 一方のトーズランドは昨シーズンまでMotoGPで活躍していたライダー。最高峰クラスで切磋琢磨した経験を生かして、様々な場面でレース巧者ぶりを発揮した。しかし転倒やトラブルも多く、浮き沈みの激しいシーズンとなってしまった。全26レース中、2位2回、3位2回と合計4回の表彰台を獲得しているが、リタイアが9回あり、ランキングは9位にとどまった。

デビュー2戦目で、ルーキーが大暴れ

 シーズン開幕戦は2月28日、オーストラリアのフィリップアイランド。新たなシーズンのスタートはしかし、チームにとって非常に厳しい結果であった。第1レースではクラッチロー、トーズランドともに早々に転倒してリタイア。第2レースもマシンセッティングの不調からそれぞれ9位と10位にとどまり、この時点では二人とも多くの課題を抱えているように見えた。
 それから約1ヵ月のインターバルを経て行われた第2戦ポルトガル大会は、クラッチローが素晴らしい走りを見せる。ポールポジションの獲得にはじまり、決勝ではM・ビアッジ(アプリリア)、L・ハスラム(スズキ)らと優勝争いを展開。第1レースは3位走行中の残り3ラップで転倒してしまったが、第2レースでは序盤からトップ争いに絡み、激しい接近戦の末に3位でチェッカーを受けてWSBで初の表彰台を獲得した。この活躍によって確かな手応えを得たクラッチローはレース後、「このまま好調をキープして成績につなげることができれば、きっといいシーズンになるだろう」とコメントし、希望に胸をふくらませた。
 クラッチローが再び表彰台に立ったのは、それから3戦を経た第5戦イタリア大会。予選は2位を獲得し、決勝では第2戦同様、ビアッジとハスラムを追う展開となった。スタートで一時、5番手まで下げたものの、3周目までに3番手に浮上。この時点で4番手に上がっていたチームメイトのトーズランドとともにハスラムをとらえ、さらにトップのビアッジを追い詰めていった。最終的にはトーズランドが2位に上がって、クラッチローは0.05秒差で3位。ビアッジとトーズランドとの差は0.247秒だった。このレースではヤマハ・ステリルガルダ・ワールドスーパーバイク・チームの二人が揃って表彰台に上ったことで、YZF-R1の順調な仕上がりも証明することができた。当然ながら第2レースも好成績が期待されたが、不運なことにトーズランドは他車に接触されて、クラッチローは他車がはね上げた小石がオイルクーラーを破損して、ともに転倒リタイアを余儀なくされてしまった。

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勢いが空回りした中盤戦

 第6戦以降もクラッチローは、ポールポジションやファステストラップを獲得して速さをアピール。第7戦アメリカ大会では、出場マシン最速の311km/hを記録して注目を集め、その第2レースでは今季3回目の表彰台を獲得するなど、徐々に上位グループの一員としてのポジションを確立していった。
 しかしそのスピードが、常に好成績に結びつくわけではなかったことも認めざるを得ない。第6戦から第9戦で3位2回、4位2回を獲得している一方で、スタートで出遅れて順位を下げたり、遅れを取り戻すために無理をして転倒したりと苦しいレースも経験。とくに第9戦チェコ大会は、タイヤチョイスのミスによりレース中にピットインを余儀なくされるなど大きな試練もあった。タイヤを交換してコースに復帰したあとはファステストラップを記録するほどだったが、順位の挽回はわずかとなり14位でレースを終えている。
 シーズン中盤のこの時期、速さでは圧倒的なものを持っていたクラッチロー。しかし、様々な要因で順位が安定せず、第9戦終了時点でランキングは9位にとどまった。

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ダブルウインに始まった快進撃

 第10戦イギリス大会はクラッチローにとってのホームレース。ここでクラッチローは、母国ファンの声援を味方にしてシリーズ初優勝、さらには第2レースも優勝してダブルウインを達成した。このときの強さは圧倒的で、ポールポジション、両レース優勝、ファステストラップとすべての記録を独占。同時にシリーズランキングでは一気に5位まで浮上した。ウイークを通じてまったく崩れるところがなく、シーズン序盤に自らが語った「成績につなげる」方法を、経験から学びとったことを証明した。
 そしてここからクラッチローの快進撃が始まる。第10戦以降、最終戦までの全4戦8レースで優勝3回、2位1回、3位2回の大活躍。シーズン前半の不安定さに比べ、明らかに成長した姿がそこにあった。第11戦は予選でふるわず後方からスタートとなったが3位/4位を獲得。第12戦の第1レースは追い上げの途中でコースアウトがあり10位となるも、第2レースでは3位としてこれを埋め合わせ、今季8回目の表彰台を手中にした。そしてシーズン最終戦の第13戦フランス大会でもまた、ポールポジション、優勝、ファステストラップを獲得して他を圧倒。第1レース優勝、第2レース2位という最良の形でシーズンを締めくくり、ランキング5位を決定した。
 クラッチローは来シーズンからMotoGP参戦が決定しており、その最後のレース終了後、ヤマハ・モーター・ヨーロッパ・レーシングマネジャーのL・K・コールカンプが、「我々はライダーを育て、新しい才能をMotoGPへ送り込むというチームとしての最大の目標を達成することができた」と満足感とともに寂しさをにじませる言葉を残したのが印象的だった。
 一方のトーズランドは、クラッチローとは逆にシーズン序盤戦で本来のポテンシャルを発揮。第3戦スペイン大会で初表彰台を獲得し、続く第4戦オランダ大会も第1レース2位、第2レース3位と着実に調子を上げていった。ところが第5戦の第2レースの転倒で首を傷めた頃から歯車がかみあわなくなり、セッティング面でも走りの面でも、遅れを取り戻そうと無理をすることが多くなってしまった。難しい状況でのレースは転倒やトラブルにつながり、もがけばもがくほど苦しさが増していく。そして最後の2戦はいずれもリタイアに終わり、トーズランドにとっては非常に悔しいシーズンとなった。


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