ヤマハ発動機のモノ創りの根幹には、「人機官能」という思想があります。社員たちはそれをどう捉え、どのような姿勢で自らの仕事に注ぎ込んでいるのか。また、そうした個性を持つ会社で働く魅力、やりがいについて、「設計」「製造」「ブランディング」の3部署の社員に鼎談(ていだん)していただきました。
ヤマハ発動機には「人機官能」という独自の開発思想があります。「人」と「機械」を高い次元で一体化させることにより、「人」の悦び・興奮を高めることを目指しています。モーターサイクル事業では、ライダーのフィーリングに関わる「官能性能」を定量化しながらつくり込み、それを製品に織り合わせながら製品を開発しています。この開発スタイルは、あらゆる現場で貫かれています。
SP設計グループ
ブランディングサポートグループ
第1製技グループ
── 現在従事されている仕事について教えてください。また、それぞれの立場や業務において、「人機官能」をどう捉えていますか?
田中さん(以下、田中) 先進国向けの大型モーターサイクルの設計を行っています。最近発売されたモデル、「MT-09」(下写真)では、車体設計のプロジェクトチーフを担当しました。
モノの形を考えるという設計の仕事において、僕らが最も大事にしているのが「官能評価」。つまり「ライダーのフィーリング」です。官能評価が目標に届いているか、もっとよくできないかと、かなり時間をかけて、こだわりを持って考えています。でも、それは僕らにとってごく自然で当たり前のこと。「人機官能」という思想は、もはや日常生活に溶け込んでしまっているような感覚です。
“TheRodeoMaster”―MT-09
“走りが楽しい、意のままに操れるオートバイのモデル”と評されるMTブランドの中でも、ヤマハのユニークさを強調する象徴的なモデル。ライダーとのより親密な関係を深め、真のエキサイトメントを求めた新たな一台。
木村さん(以下、木村) 私は現在、モーターサイクルの新製品導入時の、グローバルブランディング企画業務を担当しています。具体的には、新製品のどこが新しくて、何が変わって、お客さまにとってどう便利になったのかといった製品特徴や、開発者の意図などを市場に伝えるにあたり、表現方法を工夫したり、写真や映像、テキストなど必要な素材を作ったりする仕事です。
田中さんが言われた通り、ヤマハの製品は、「人間」を中心に作り込むことで、ライダーに高いエキサイトメントを提供するという思想をもとに作られています。そこをきちんとお客さまに伝えていくこと。いわば私は「人機官能」のメッセンジャー的な役割を担っていると思っています。その役割を忠実に果たすために、開発サイドへのヒアリングは特に丁寧に行い、うまく言葉を引き出すよう努めています。
大嶋さん(以下、大嶋) 私は製造技術部で、アルミニウム鋳造を担当しています。現在は、バイクに限らず船外機や四輪バギーなど、アルミ部品を採用している製品に幅広く関わっています。「MT-09」モデルでは、私もフレーム開発に携わりました。
設計部門が作りたい形やデザインを、いかに量産化しやすい形状に作り込むかが我々の仕事。「人機官能」という観点では、ヤマハが創業以来追求し続けている“ハンドリングのヤマハ”というキーワードを常に意識して製造をしており、我々の部署では特に、部品の軽量化という側面に注力しています。
田中 設計者として自分が出したアイデアが形になり、世に出て、何万人、何十万人というお客さまのもとに届く。これは本当にすごいことだと思っています。SNSなどを通じて、また、直接お客さまにお会いした時などに、製品について熱く語ってくれたりすると、僕らのこだわりが伝わっているのを感じて非常にうれしいですね。
木村 確かに、お客さまの声を聞くことができるのは、メーカーの醍醐味ですよね。バイクという商材だと、日本国内では嗜好品として大事に扱ってくださるお客さまに会うことができますし、海外では、当社の製品を生活の足として使ってくださっているお客さまから、「これがないと生きていけない」「これがあって本当に感謝している」と言っていただける。ヤマハの製品が世界中のさまざまなお客さまの生活に貢献していることを実感できる瞬間です。
加えて個人的には、例えば「MT-09」の発表の際、「これは絶対にみんなに見てもらいたい!」という思いで、こだわって撮影したフレームの写真(下)がメディアに掲載され、世の中に紹介されたのを見ると、関わったみなさんの役に立ててよかった、というやりがいを感じました。
「超肉薄」を実現した
CFアルミダイキャスト製新フレーム
新設計軽量アルミ製フレーム。フレームとリアフレーム、リアアーム合算で従来モデル比約2.3kgの軽量化を達成、アジャイルな走りをさらに磨き上げた。
田中 みんなで作ったものが部品単位で発表されるのは、僕らもうれしいです。
大嶋 「MT-09」のフレームはいろいろなメディアで取り上げていただき、ご好評いただいて、私も担当者の一人として非常にうれしく思っています。時々自ら、このフレームに触れてくれている人はいないか、新しいレビューは出ていないかと、ネット検索したりも(笑)。
部品は、設計と協議を始めてから、検証、解析を重ね、金型を作って実際にモノができ上がるまでに、半年から1年くらいの時間がかかります。新しい部品への挑戦は先が見えづらく大変なことも多いですが、さまざまな制約条件や困難を乗り越え形になった時には、やりがいを感じます。
木村 バイクは究極の嗜好品で、カバーを取って中まで磨くとか、自分で整備するお客さまが多い商材なんです。だからこそ、目や手に触れるところすべてが美しくなければならない。設計や製造部門の方は、そういった細部にまで「人機官能」的なこだわりを持ち、製品を作っています。私もできる限りそのこだわりをお客さまに伝えたいですね。
大嶋 一番は、新しいことにチャレンジしやすい、アイデアや思いを提案しやすい環境があることです。
それから、製造技術の目線では、バイクの骨格部品やエンジン部品の多くを社内で作っているところです。他社ではあまり見られないことなので、スタッフはそこに魅力と誇りを感じて仕事をしています。内製にこだわっているからこそ難しい課題や目標にチャレンジでき、「人機官能」にもつながっているのだと。
田中 確かに、自分のやりたいことを実現しやすい環境がありますよね。仕事そのものや、そのやり方に、かなり自分の意思を込められる。少なくとも僕は、上司に“命令”されて仕事をした記憶がないです。
また、僕自身もそうですが、設計をやってみたいという熱い思いで異動を願い出て、夢をかなえている人もいます。やる気のある人に、じゃあやってみろと任せてくれる。チャレンジする人を見守り、支えてくれる風土があるところは、ヤマハの大きな魅力です。
木村 そうですね。しっかりとした目標があれば手段の自由度は高く、あれこれ指示が入ることは少ない。そういった点で仕事がしやすい環境だと、私も感じます。
田中 また、僕は今年から始まった社内副業制度(社内における正式な部署に籍を置いた状態で、別の部署・チームなどの業務に携われる制度)を利用して、マウンテンバイクの事業にも挑戦しています。マウンテンバイクは僕の趣味でもあるので、仕事として携われ毎日が本当に充実していて、最高です(笑)。
木村 働きやすさの魅力といえば、福利厚生面でも、社員が仕事に集中できる環境を整えてくれています。例えば、私も田中さんも利用している保育園。会社の敷地近くに施設があり、会社の稼働日に合わせて保育をしてくれるので、大変ありがたいです。また、社員が遊ぶことにも寛容で、休暇も取りやすく、ワークライフバランスはいい会社なのではないかと思っています。
田中 ここ、磐田市(いわたし:企業所在地)という土地も住みやすいですよね。田舎と言っても生活に困ることはありません。東京と名古屋の間に立地しており、浜松には新幹線も止まりますし、出張も日帰りが可能。実は便利なところなのです。
── 最後に、転職検討者へメッセージをお願いします
木村 好奇心が強みになると思います。オートバイが好きという気持ちももちろん大事ですが、たとえそうでなくても「もっと知りたい」とか、「これって何?」というところに踏み込んでいけば、たくさんの面白い発見があるはずです。そんなふうに、仕事を面白がれる方と一緒に働けるといいですね。
大嶋 バイクをはじめ、乗り物好きな方にとっては、絶対に楽しい会社です。オフィスの雰囲気も良く、むしろガヤガヤ騒がしいくらい。仕事の話にしても趣味の話にしても、議論が交わしやすい環境だと思います。新しいことにチャレンジできる人、やる気に満ちあふれる方に、ぜひ来ていただきたいです。
田中 弊社にはバイク以外にもさまざまなジャンルの事業があり、日本だけでなく海外展開もしているので、仕事の選択肢や領域が幅広い。あらゆるタイプの人間のやりたいことが網羅できている。誰かのために何かをしたい、何かを成し遂げたいと思っている人、自己実現を目指したい人は、ぜひ一度弊社の門を叩いてみてください。
「人機官能」という思想に心から共感し、社員一人ひとりがそれぞれの立場で、自らの仕事にその思いを注ぎ込んでいる。ヤマハ発動機の製品から感じられる魅力の源泉と、世界中の人々に愛され続けているゆえんはここにあるのだと、三人の言葉の隅々からひしひしと感じられました。その背景にあるのが、ワクワクや感動を大切にしている社内風土。そこから自然に生まれる社員のチャレンジ精神が、再び製品開発に活かされる。「人機官能」は、正にヤマハ発動機の原動力になっているのだと思いました。