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王座奪還ならず、黒山健一ランキング2位 最終戦で優勝した野崎はランキング3位

王座奪還ならず、黒山健一ランキング2位
最終戦で優勝した野崎はランキング3位

地力を見せつけた黒山が開幕戦で好スタート

2015年の全日本トライアル選手権・国際A級スーパークラスにおいてヤマハは、「YAMAHA FACTORY RACING TEAM」を設立、黒山健一をライダーに迎えたことが証明するようにタイトル奪還に燃えていた。そしてその成果は、開幕戦でディフェンディングチャンピオンを突き放す結果となって現れた。

ファクトリーライダーとなった黒山は前年、開幕戦から遅れを取り、全7戦が組まれたシリーズ戦の前半は未勝利のまま、第5戦でようやく優勝。最終戦で2勝目を挙げたが王座奪回はならず、ディフェンディングチャンピオンの小川友幸(ホンダ)に11ポイント差をつけられてランキング2位に甘んじた。「YAMAHA FACTORY RACING TEAM」という新体制で4ストロークエンジンの「TYS250F」を駆る2015年こそ、絶対に負けられないと闘志を燃やしていたのである。それだけに、シーズン開幕戦・関東大会に賭ける黒山の思いは並々ならぬものがあった。

3月8日、茨城県・真壁トライアルランドで開催された関東大会は、4時間30分の持ち時間で10セクションを2ラップした後に、2つのスペシャルセクション(SS)が待ち受ける。黒山は、その競技1ラップ目からトップに立ち、2ラップ目終了時点でもその座を守っていた。

とはいえ、背後に2番手の小川(友)がわずか2点差で迫っており、予断は許されない状況である。しかし、SSの2セクションを両方とも鮮やかにクリーン(減点0)で走破した黒山は、小川(友)との差を7点に広げて逃げ切り、みごと優勝で王座奪回へ好スタートを切った。とりわけクリーンの数で、黒山は小川(友)の2倍、最多となる18を記録。圧倒的な差を見せつけたのだ。

「去年は開幕戦で負けているし、ファクトリーライダーとして、勝たなければならないプレッシャーも感じたが、それを自分の力にすることがでた」と黒山は、素直に喜びを口にした。

一方、ヤマハのサテライトチーム「YSP京葉×KEN OKUYAMA」の野崎史高は2ストロークエンジンのマシンに乗り、黒山と並んで3位表彰台に立ち、こちらも上々の滑り出しを果たした。

タイトルに望みをつなぐ起死回生の2勝目

ところが4月の第2戦・近畿大会で黒山は、小川(友)と野崎に敗れて3位。さらに第3戦・九州大会も小川(友)に優勝を許して2位となり、もうこれ以上負けられない状況に追い込まれたのである。

だが、7月19日に北海道・わっさむサーキットで行われた第4戦で、黒山は待望の2勝目を獲得。同ポイントながらランキング上で小川(友)をしのぎ、開幕戦以来のポイントリーダーに返り咲いた。

とはいえ、この大会はSSまで黒山と小川(友)、小川毅士(ベータ)と野崎の4名が僅差でひしめく大接戦。最終セクションを先に走ってクリーンした黒山が、小川(友)のトライを待たずに勝利を決めるしたたかさ、強さを発揮。みごと通算80勝の偉業を達成した。

だが、その後も黒山の調子はいまひとつ。第5戦・中国大会、第6戦・中部大会と連続して小川(友)に敗れ、2位の呪縛から抜けられず、ランキングポイントのビハインドはついに6ポイントまで広がった。

黒山が最終戦・SUGO大会でこの差を逆転し、チャンピオンとなるためには、自身が優勝するとともに、小川(友)が4位以下でフィニッシュする必要があった。しかし、可能性はゼロではない。黒山は、最後まで逆転を信じてレースをあきらめず、白熱した戦いを展開することになるのである。

誰が勝ってもおかしくないラストバトル

11月1日、宮城県・スポーツランドSUGOでの最終戦は、8セクションを3ラップし、2つのSSに挑む競技構成。この日のセクション設定は、トップライダーたちにとって難易度が低く抑えられており、クリーンして当然というものが多い反面、ひとつミスを犯せば命取りとなる。

最終戦は当初の予想通り、一瞬たりとも気が抜けない緊張感のなかで、淡々と進んでいった。そして3ラップが終了し、SSに向かう時点での順位は、黒山と野崎、小川(友)のランキング上位3名がともに減点1で横一線。まさに誰が勝ってもおかしくない、三つ巴の大接戦となった。

しかしそのなかで、まさかの失敗を重ねた黒山が最初に脱落して3位。小川(友)が2位に入り、クリーンと減点1で走破した野崎が1年ぶりの優勝を獲得した。

この結果、小川(友)がチャンピオンを守り、黒山は逆転を果たせず3年連続のランキング2位、野崎が3位となった。

黒山の2015年シーズンを振り返れば、接戦をものにできず競り負けた大会が多かった。とはいえ、最後まで優勝の行方がわからない接戦の数々は観客を魅了し、最終戦へともつれ込んだタイトル争いはファンを飽きさせることがなかった。

「3年連続でチャンピオンを逃しているので、気を引き締めなければ」と雪辱を誓った黒山。「勝てる状態を持続して、次こそチャンピオンを目指す」と挑戦者の意識を新たにした野崎。2016シーズンは、果たして……