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最大積載量35kg、最大高度2,800m、航続距離90kmの産業用ドローン自動航行型無人ヘリ「FAZER R G2」を開発 10月12日~15日の「2016年国際航空宇宙展」に出展

2016年10月11日発表

 ヤマハ発動機株式会社は、無人航空機(通称ドローン)の産業用ハイエンドモデルとなる自動航行型無人ヘリコプター「FAZER R G2(フェーザー・アール ジーツー)」を開発し、2017年4月から計測・観測・監視・撮影・運搬等の産業用途向けに機体のレンタル、業務受託を開始します。
 「FAZER R G2」は目視範囲外の無人地帯を自動飛行するための産業用ドローンであり、最大積載量35kg、高度2,800m、航続距離90kmなど優れた性能を有しています。
  なお、「FAZER R G2」は、10月12日(水)から15日(土)まで東京ビッグサイトで開催される「2016年国際航空宇宙展」に出展します。

 当社は、2006年から自動航行型の産業用無人ヘリコプター「RMAX G1」を運用した様々な計測・観測・監視・撮影業務を行ってきました。自動航行型無人ヘリの離発着は操縦者が送信機で行い、離陸後は事前にプログラムした可視外を含めたエリアでの航行が可能なため、火山観測や放射線測定など多方面で使われ、高く評価されています。新型「FAZER R G2」は、2014年の法改正(離陸時重量の上限100kg→150kg)を受けて開発、従来モデルより積載能力・運用高度・航行時間を大きく向上させました。

 具体的には、2016年発売の新型「FAZER R」をベースに、自動飛行制御システム、12L燃料タンク、撮影・計測機器搭載用アタッチメントなどを追加装備、「RMAX G1」で実績ある制御系を継承しながら運用領域を拡大しました。また、許容積載量は10kgから35kgへ、運用高度は1,000mから2,800mとなり、これまで運用出来なかった標高の高い火山(浅間山、十勝岳、草津白根山、阿蘇山等)の観測にも対応できます。
 さらに、衛星通信を可能とする受信機の搭載により、航続距離は従来機「RMAX G1」の3kmに対し、90km(燃料12L)まで拡大しました。



製品写真
「FAZER R G2」

製品写真
基地局操縦装置


名称 レンタルまたは業務委託開始時期 対象・対象地域
FAZER R G2 2017年4月 法人・日本国内


【市場背景と本製品の位置付け】
 「空の産業革命」とも言われるドローンは、近年、新たな産業・サービスの創出等に期待されており、各国で無人航空機に関する制度設計が進んでいます。本製品は、「小型無人機の利活用と技術開発のロードマップ」の飛行レベル3:目視外無人地帯自動飛行*1に相当する産業用ドローンです。動力源としてガソリンエンジンを採用することにより、最大積載量35kg、高度2,800m、航続距離90kmなど目視外無人地帯用途に好適なスペックを実現しています。

*1 「小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会」による「小型無人機の利活用と技術開発のロードマップ」ではドローンの飛行レベルをレベル1:目視内操縦飛行、レベル2:目視内自動飛行、レベル3:目視外無人地帯自動飛行、レベル4:目視外有人地帯自動飛行と定めています。



【業務展開について】
 2017年から計測・観測・監視・動画収録等を行う研究機関や法人などを対象に、機体のレンタルや各作業の業務を受託します。


「FAZER R G2」主要仕様諸元
  項目 諸元値
寸法・重量 全長×全幅×全高 3,665㎜×734㎜×1,226㎜
メインローター径 3,115㎜
テールローター径 550㎜
総装備重量 81kg
原動機 原動機種類/気筒数配列 水冷・4ストローク・OHV・2バルブ/水平対向2気筒
総排気量/ボア・ストローク 390cm3/66.0㎜×57.0㎜
最高出力 20.6kW/6,000r/min
燃料種類/燃料タンク容量 レギュラーガソリン/12L
性能ほか 運用高度(※1) 2,800m
積載重量(※1) 35kg/20℃、1気圧
最高速度(前進対気速度) 20m/s
上昇速度,下降速度 3m/s, 3m/s
運用距離(※2) 30km
航続距離(※2) 90km
航続時間 100分

※1 「運用高度」と「積載重量」は燃料が半分(6L)での運用を想定しています。
※2 「運用距離」と「航続距離」は衛星通信機を使用した運用を想定しています。


【ご参考】

 当社は、産業用無人ヘリコプターやATV、ゴルフカー、マリンビークル等、小型ビークルをベースとした『UMV=アンマンドビークル(Unmanned Vehicle)』の研究開発を進めています。

□Unmanned Aerial Vehicle(UAV)
 2000年の有珠山の火山観測で、産業用無人ヘリコプター「RMAX」をベースに、ヘリ本体と操作基地局に計2つのGPSを装備した自動航行機を実用化。パソコン上で航路を設定すればルートに沿って、また操縦者からは可視外でも数十センチ単位で位置制御操作が出来るものでした。搭載カメラからの映像を基地局でモニターを見ながら確認、操縦者がヘリコプターに乗った感覚で操縦ができ、有人機では危険で立入れない火口の真上にも接近、映像・画像を瞬時に送ることで調査活動に貢献しました。その後、国土交通省・北海道開発局へ納品し、河川調査、災害現場調査などにも使われています。

 ここで培ったノウハウは、その後海岸線計測、火山観測、監視活動などに展開、2006年には自動航行型・産業用無人ヘリコプター「RMAX G1」を開発しました。以後10年にわたり、火山活動調査など人が近づけない場所での業務を担いました。最近では2013年11月、39年ぶりに噴火活動をみせた西之島でも活躍、溶岩流や島に生息する鳥の撮影、火山石サンプル採取を実施しました。今回発表の「FZAER R G2」はこの「RMAX G1」の基本性能をさらに向上させた機体です。

有珠山観測に稼働した「RMAX」ベースの自動航行モデル)
有珠山観測に稼働した「RMAX」ベースの自動航行モデル
西之島での陸地生成を観測する「RMAX」ベースの自動航行モデル)
西之島での陸地生成を観測する「RMAX」ベースの自動航行モデル

□Unmanned Marine Vehicle(UMV)

 有珠山観察を行っていたころ、当社は海上で稼働するUMVを実用化しました。科学技術振興事業団からの発注を受け、無人海洋大気観測艇「環(かん)ちゃん」の設計・建造、2000年3月に進水させました。海洋大気中のエアロゾル観測は、それまで主に離島や限られた船舶、観測ブイで行なわれていましたが、広大な海洋、特に北太平洋ではほとんどデータを収集することができませんでした。そのソリューションとなったのがこの「環ちゃん」で洋上での長期・広範囲にデータを集めることが可能になり、地球温暖化など学術研究に寄与するものと期待されました。
さらに2004年にはUMVの第2弾「UMV-H」を発表、監視を想定した高速型で、ウォータージェット搭載の全長4.44mの船舶で最大速力40ノットを実現しました。航路をマッピングすれば、決められた位置を通過しながら航行可能で、開発には約1年を費やしましたが、自動ユニットの姿勢制御、ナビゲーション装置やジャイロ・加速度センサー・方位系センサー等には無人ヘリコプターで培った技術を投入しました。また、アクチュエーター部は、当社の産業用ロボット事業で培ったサーボ機能を転用。当社独自の技術を織り込みました。
 こうした水上でのUMVを最近では日本国内でのダムの堆砂量の測量に応用、ソナー等による水底状況調査の効率化、ダムのメンテナンスに貢献しています。中でも2016年に発表した「BREEZE10(ブリーズ10)」は、ダム測量作業で最も普及している米国製ソナーに対応したモデルで、ワンボックスカーで運搬可能な小型設計が特徴で、ダム測量を業務とする法人へのレンタルを開始しました。

「環(かん)ちゃん」)
「環(かん)ちゃん」
「UMV-H」
「UMV-H」
「BREEZE10(ブリーズ10)」
「BREEZE10(ブリーズ10)」

□Unmanned Ground Vehicle(UGV)

 農業の課題解決のひとつの糸口としてATV(四輪バギー)の基本性能を応用したUGVの開発を進めています。特に果物の栽培は国際競争も厳しく、品質の維持や作業の効率化が課題ですが、そこで主に果樹園での運搬や薬剤噴霧、施肥といった移動を伴うシーンでの作業省力化に貢献するシステム構築を視野に開発を進めています。
 目下、果樹園のような複雑な不整地で実用的な無人車の自動走行の実用例はありませんが、比較的低価格でシンプルなカメラや2次元レーザーレンジファインダー(LRF)を用いた実用化の研究を進めています。カメラやLRFが必要な各種情報を認識し、障害物を避けながら運行するシステムで、すでに研究開発車両による各種実験を始めており、LRFを用いて木の数をカウントしながら進む技術など、現在5件の特許を出願中です。
 研究開発機材には、当社製ATVを用いていますが、当社にはATV以外にも様々なベース車両があり、それらを活かし各目的に沿った無人車システムの構築を目指しています。

果樹園でテストするUGV先行研究車両
果樹園でテストするUGV先行研究車両
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