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有珠山周辺泥流対策のための GPS自律飛行無人ヘリコプターによる観測について

2000年04月24日発表

 ヤマハ発動機(株)は、建設省土木研究所からの委託を受け、活発な火山活動を続ける
北海道・有珠山周辺の立入り禁止および飛行制限区域となっている噴火口周辺の地形、地質状況を、初めての試みとして、GPSとビデオカメラを搭載した当社の産業用無人ヘリコプターによる自律飛行観測を開始いたしました。自律飛行システムは世界各国の大学、研究開発機関で研究中ですが、これを可視範囲外で実用化したのは今回が初めてです。
 4月20日より当社スカイ事業部社員によるオペレーションチームが、観測のための特別装備を施した機体と共に現地入りしており、土砂災害対策専門家チームの指揮下で主に板谷川周辺の泥流対策のための調査観測飛行を行なっております。

 有珠山の現地においては、既に火山噴火後の降灰による泥流の発生が確認されており、噴火活動がなお活発に継続している事から、今後より大規模な泥流の発生等が懸念されています。その警戒のために、現在、立入りおよび有人飛行が禁止となっているために観測ができない噴火口周辺の区域を、自律型無人ヘリコプターによって至近距離の上空から火山灰の堆積状況、岩石等の噴出物の状況を観測し、懸念されている泥流、土石流に対する警戒および対策の検討に関連する情報の精度を高めることが期待されております。
 今回、観測に使われる機体は、当社の産業用無人ヘリコプター"ヤマハエアロロボット"「 RMAX(アールマックス)」をベースにしたもので、通常は目視可能範囲での遠隔操作で飛行しますが、今回の長距離飛行観測業務のために、自律飛行プログラムで航行できるよう機体にGPSとコントロールボックスを搭載、基地局から現場までの往復約4キロと観測地点での飛行をすべて自動化できるよう改造しました。その他にも、最大航続時間約1時間をカバーするための予備燃料タンクを取り付け、補助遠隔装置の装備など、各種の特別対策が施されています。また、観測用にはスチールカメラとビデオカメラ、航行用には小型カメラ3機を備え、これらの画像をリアルタイムに基地局へ送信し4分割画面で同時に監視する事ができます。




スカイ事業部・内山一雄事業部長のコメント

 「当社にとってはもちろん、日本の災害対策の歴史にあっても自律型無人ヘリを使用しての観測業務は初めての試みです。有人では不可能な危険区域内での飛行と観測が無人ヘリによって可能となりますが、有珠山周辺では火山灰や火山弾等の噴出物、また不安定な気流や高温など飛行の障害を高い確率で受ける条件下での、非常に厳しい運航任務であると覚悟しています。現在までの観測飛行は予想以上の成果を収めていますが、継続して画像データを収集することで、災害対策に貢献していきたい。」



参考資料

GPS自律飛行無人ヘリコプターの主な仕様諸元(RMAXベース)


<機 体>

メインローター径

3,115mm

テールローター径

545mm

全 長

3,630mm(ローターを含む)

全 幅

800mm

全 高

1,220mm

自 重

約95kg


<エ ン ジ ン>

種 類

水冷・2サイクル・水平対向

排 気 量

246cc

出 力

21ps

始 動 方 式

セルモーター

燃 料

ガソリン・オイル混合


<性 能>

継続飛行可能時間

約1時間

最 大 搭 載 燃 料

11リットル

飛 行 速 度

15~20km/h

飛 行 高 度 

対地高度 30~150m

撮 影 器 材

ビデオカメラ一眼レフカメラ





スカイ事業の概要

1. 背景
 ヤマハ発動機(株)では、1983年農林水産省の外郭団体で農林航空事業を管轄する(社)農林水産航空協会から新しい農業用機器としての薬剤散布用無人ヘリコプターの開発委託を受けました。以来、鋭意研究・開発を重ねて来た結果、1987年産業用無人ヘリコプター「R-50」を完成。同年11月、茨城県で開かれた農林水産航空協会主催の「産業用RCヘリコプターの展示デモフライト」に参加、関係者が見守る中で初めて薬剤散布飛行を披露し、12月より市販に向けてのモニターを開始しました。
 産業用無人ヘリコプターは現在、各国で研究・開発が進められていますが、ペイロード(有効積載量)20Kgを有する本格的な薬剤散布用無人ヘリコプターとしては、当社が完成したこのエアロロボットYAMAHA「R-50」が世界で初のものとなります。
 1988年には、長野県農業大学校で産業用無人ヘリコプターの教習カリキュラムに導入、その後の各県農業大学校への普及のさきがけとなりました。
 1991年、農水省はエアロロボット「R-50」による水稲への薬剤散布の指導指針を通達。当社はこれを受けて本格的な販売に踏み切りました。
 1992年には、農水省が無人ヘリコプター活用のための予算を計上、また全国農業共同組合連合会は無人ヘリコプターの普及促進を決定するなど、環境に優しい次世代農業機械として注目されています。
 産業用無人ヘリコプターは、現在農業がかかえている農業生産者の高齢化と後継者不足、農村構造の多様化・混住化による航空防除の補完、農産物の低コスト化など、さまざまな問題の解決に寄与するものとして注目されています。また、水稲以外への用途開発も進み、1992年度から麦・大豆、1993年かられんこん、1994年から大根、1995年から栗への防除も実用化され、さらに果実、野菜への適用拡大も進んでいるなど、水稲の一貫体系利用と合わせて無人ヘリコプターの有用性がますます高まっております。
 そして、従来重労働であった防除作業を軽減できたことから産業用無人ヘリコプターを使った新しい事業としての防除業(NACS)が全国各地で誕生しております。
 1992年からスタートした「全国産業用無人ヘリコプター飛行技術競技大会」は1998年には農林水産大臣賞が授与されるなどの盛り上がりを見せています。
 1995年3月から販売を開始したYACS(ヤマハ姿勢制御装置)によって、操作が難しいと言われている無人ヘリコプターが短時間の教習で散布作業が可能になり、資格を取得したばかりの人や女性オペレーターが多いに活躍した年にもなりました。
 1997年10月には搭載能力、取り扱い作業性を向上させた新機種「ヤマハエアロロボット RMAX」を発売いたしました。
 現在、当社の無人ヘリコプターの普及、保有台数は約1100機で、市場全体の
約85%を占めています。また、操縦するオペレーターは全国で約6,000名に増加しています。
 1999年は22.5万haを越す散布実績となり、農林水産省が推進している低コスト農業における直播きの一貫作業体系で播種、除草、追肥、防除に使われる多用途な農業機械として、さらにはコントラクター方式で使われる高性能な農業機械として期待が増しています。
 そして現在、農業利用分野以外にも産業用無人ヘリコプターの活用が図られており、GPSによる自律飛行システムの研究など、新しい技術開発を積極的に進めております。

2. 特約店数
全国23社

3. 主な用途
薬剤散布(水稲、畑作物、果樹ほか)、直播、除草剤散布、肥料散布など

4. 主な販売先
市町村、全農、県経済連、防除組織、農業生産者、防除会社など

5.「スカイテックアカデミー」について

 産業用無人ヘリコプターで薬剤散布作業を行うためには、操縦や薬剤散布に関する技能と知識が必要です。無人ヘリコプターを操縦するオペレーターとなるには、まず(社)農林水産航空協会(農水協)の指定教習施設である「スカイテックアカデミー」の教習を受講しなければなりません。このアカデミーに於て必要とするレベルの操縦技能をマスターし、農水協の発行する「産業用無人ヘリコプター技能認定証」の交付を受けて、資格を取ることになります。「スカイテックアカデミー」は全国各地のスカイテック特約店の所で行われており、現在、60ケ所で開校されています。


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