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世界初の無人海洋大気観測艇"環ちゃん"を設計・建造 セーリングクルーザーの船型を採用

2000年04月13日発表

 ヤマハ発動機株式会社では、科学技術振興事業団(川崎雅弘理事長、埼玉県川口市)より受注した無人海洋大気観測艇"環(かん)ちゃん"の設計・建造をこのほど完了し、3月末に進水させました。
 海洋大気中のエアロゾル(大気中の微粒子)観測は、これまで主として離島や限られた船舶、観測ブイを使用して行なわれてきましたが、広大な海洋、特に北太平洋ではほとんどデータを収集することができませんでした。世界初の移動可能な無人観測艇"環ちゃん"によって、洋上で長期・広範囲にデータを集めることがようやく可能になり、その進水は地球温暖化など学術研究の進展に大きく寄与するものと期待されています。
 "環ちゃん"の設計建造にあたっては、ボートやヨットなど小型舟艇設計・建造に長い実績を持つヤマハ発動機のマリン技術が各部に生かされています。




無人海洋大気観測艇"環ちゃん"の特徴

ヨットの船型を採用

 低速で移動し、観測時は一定の領域にとどまることが要求されるため、抵抗が少なく保針性の良いセーリングクルーザーYAMAHA26II Sの船型デザインを採用し、デッキと合わせて新設計しました。また、オルカをイメージしたデッキ形状と低重心船型の組合わせにより、セーリングクルーザー並みの復元力を持ちます。


マスト

 艇後部に立つマストのトップには観測機器を設置するとともに、小さな帆を揚げて艇首を風に立たせる(波を前から受ける)機能を持たせています。


動力システム

 ディーゼルエンジンを利用した交流発電機と直流発電機、また風力発電装置を搭載しています。AC100V‐1.2KWで観測機器を動かし、DC24Vで推進モーター(プロペラ)と舵を動かします。また、DC12Vを船体制御装置その他に供給します。風力発電装置は12Vのバックアップ用です。バッテリー(12V80AH) を6台搭載しています。

船体制御システム

 マイコンおよびデータ収集のためのGPS、速度計、方位計、風向風速計などで構成されます。GPSにより現在地を把握し、陸上から衛星経由で指示を受け、目的地までの最適なモーター回転数(艇速)と舵角を計算し、自動航行します。

以上、艇体の設計建造、動力システム・船体制御システム・自動航行システムの設計制作はすべてヤマハ発動機株式会社によります。

 

無人海洋大気観測艇"環ちゃん"主要諸元

 

全長7.99m、全幅2.80m、排水量3,500kg、燃料1400L、艇速4kt(平水時)、連続航行時間700時間(約1ヶ月の観測航行が可能)


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