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Yamaha Journey Vol.04

ヤマハSEROWに乗る日本人サラリーマンライダー、小口隆士のモンゴルツーリング体験談です。

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どこまでもマイペースな旅を、それが僕の流儀です

小口隆士

SEROW

#01 モンゴル:五感で、大自然を味わう
モンゴル

バイクで走る。現地の日常を目にする。人々と交流する──。会社員を続けながら、たくさんの国でバイクを走らせてきて早19年。そんな小口隆士さんにとって海外ツーリングとは、未知との出会いを意味していた。

草の匂いがする。少しだけ、ゆっくり走ろう。

大草原、モンゴル

旅人を、そっと見守る。これも遊牧民たちの、やさしさだ。

馬に乗る遊牧民たち、モンゴル

ここに泊まれば、気分は、すっかり遊牧民。

移動式住居ゲル、モンゴル

モンゴルで出会ったライダーたち。2日目には、旧知の友のようだった。

ツーリング仲間とともに、モンゴル

大地の息吹を、全身で感じるひととき。

長距離ダートを前に、モンゴル

大草原の匂い、大地の鼓動を感じながら、思い切り走りたい

1995年にオーストラリアをバイクで走って以来、二度目となる海外ツーリングの地にモンゴルを選んだのは、草原の中を走ってみたかったからです。このときは旅行代理店が企画するパックツアーを利用しました。ですから現地で乗るバイクはもちろん、食事、泊まる場所まで、すべてが用意されました。やや極端に言うと、自分で用意したものはウェアとヘルメットくらいってことです。フライトを含めて8日間のツアー。これなら休暇がとれる人なら、誰だって行けます。海外ツーリングって、人が思っているよりも気楽なものなのです。

オーストラリアだと一時間走っても景色が変わらない場所は珍しくありませんでしたが、モンゴルでもだだっ広い空間を思い切り駆けることに惹かれていました。そんな景色を自分の目で見たかったし、写真に収めたかったのです。草原の匂いを、たっぷりと味わいながら走ったことも印象に残っています。人の記憶って目から得たものがほとんどだと思いがちですが、匂いだって強く記憶に残っているものです。そういったことをモンゴルでは思い知りました。考えてみると土地の匂いを感じながら移動できるのは、バイクならではの楽しみですよね。

地面に白い布。えっ、これをテーブルに?

このツアーに参加した人は、みんな初めて会った人ばかりで総勢7名。われわれをサポートしてくれたのは4名のツアーガイドでした。ツーリング中に振る舞われた食事は、ほとんどが羊肉でしたね。それも日本で食べられるようなものとは違って、匂いが強いもの。くせのある食事が好みの私には打ってつけでした。モンゴルで本場の羊に慣れたせいか、日本で臭くない羊を食べても物足らなくなってしまったほどです。

ツーリング中の食事はほとんど野外です。ツアーガイドが白い布を敷いたと思ったら、そこに座るのではなく、そこをテーブルにしたのには驚かされました。これもモンゴルの習慣なのかもしれません。同じアジア人であっても、少しずつ文化や常識は異なります。そういったものに直に触れられることも、海外ツーリングの楽しみです。

旅人といい距離を保つ遊牧民たち

モンゴルでは、テントやツーリスト用のゲルに泊まりました。ゲルというのは、遊牧民が使っている移動式住居のことです。ちなみに道や草原で休憩していると、遊牧民たちは馬に乗って、どこからともなく寄ってきます。恐らく、もの凄く目がいいのでしょう。こちらからは誰も見えないのですから。そして、あっという間にちょっとした人垣ができます。だからといって、何かを売ろうとしたり、ちょっかいを出してくることはありません。ただ眺めているだけ。厳しい自然とともに生きている人たちには助け合いの精神があって、私たちが助けを必要としていないか確認しに来るのかな、と思いました。

こちらからアプローチすれば、コミュニケーションに発展しますが、基本的にはいい距離感で見守ってくれます。カメラを持ち出すと、子どもが我先にと駆け寄ってくる国も多いけれど、モンゴルの子どもたちはもう少しシャイ。「あ、外国人がいる」って、少し遠目に見ています。けれども子どもたちの笑顔は、本当に素敵でした。みんな屈託がないのです。モンゴルよりも経済的に恵まれた子どもは、世界中に大勢いるのでしょうけど、そういったものとは異なる豊かさがあるように感じました。

自分らしい海外ツーリングの形を見つけた

テントに泊まる予定だったのが嵐に見舞われて、現地の小学校に泊めてもらったことも、印象に残っている出来事です。普通、よその国に行っても、小学校の中にまでは、なかなか入れてもらえませんよね。このときは現地の人たちに食事を振る舞ってもらいました。彼らと話せたことも楽しかったですね。日本語も英語も通じないから、もはや言語力というよりは演技力でのやりとりです。演技でもダメなら絵を描いて伝える。思った以上に通じたし、もちろん通じれば通じるほど楽しくなります。いつも言葉の準備は最小限。「こんにちは」「ありがとう」くらい。辞書を使うのは最終手段です。意思疎通の半分以上は、言葉以外の要素だという話がありますが、本当にそうだと思います。

いずれにしても、ちょっとしたアクシデントから、現地の人との交流に恵まれるケースは、海外では珍しくありません。身の危険がない範囲でのハプニングを期待するようになったのは、このときの経験があったからでしょう。今ではいくつか候補地があったら、一番知らないところか、情報が少ないところ、あるいは何か小さなハプニングの予感がするところを選びます。そうやって選べば、だいたい正解です。

足を運んだ先で、現地の人と接することが楽しい。そう思うようになったのは、こういった経験を少しずつ積み重ねたからだと思います。モンゴルで走るまでは、走ること自体を楽しみにしていましたけどね。こうやって少しずつ、自分らしい海外ツーリングの形みたいなものに目覚めていったのです。


小口隆士

1961年、茨城県水戸市生まれ。海外ツーリング普及家。1995年に初めての海外ツーリングを経験して以来、サラリーマンを続けながら世界中をバイクで駆け巡る。これまでに足を踏み入れたのは32カ国以上。海外ツーリングに興味のある人たちをつなぐ「ワールド・ツーリング・ネットワーク・ジャパン」のスタッフも務める。

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