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2004 YZR-M1(OWP3)

2007年 企画展 Vol. 1

2007企画展 Vol.1
YZR-M1の挑戦 ~MotoGP第一章 2002-2006の記録~

2004 YZR-M1(OWP3)

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Specification
エンジン 水冷4ストロークDOHC
気筒配列 並列4気筒
排気量 990cc
燃料供給 フューエルインジェクション(FI)
最高出力 240PS以上
最高速度 320km/h以上
潤滑方式 ウェットサンプ
1次減速 ギア
クラッチ 乾式多板
変速機 6速
フレーム型式 デルタボックス
ホイールサイズ 17/16.5in(前後)
タイヤサイズ 17/16.5in(前後)
ブレーキ(前) 320mmカーボン
ブレーキ(後) 220mmスチール
重量(FIM規則準) 145kg以上
燃料タンク容量 22L


トラクション性能に優れた不等間隔爆発&4バルブエンジン

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OWP3の開発は2003年の夏にスタートし、年末には実走テストが行なわれた。開発では、スロットルのリニアリティ向上と、並列4気筒の特徴を活かした車体レイアウトの変更による操縦性と安定性の両立がテーマとなった。この年、新たに加わったV・ロッシ選手を筆頭に、C・チェカ選手、M・メランドリ選手、阿部典史選手らがYZR-M1の初タイトルをめざした。
新エンジンの開発では、まず従来式の等間隔爆発と不等間隔爆発をプロトモデルでテスト、また燃焼室も4バルブと5バルブのテストを行ない、双方の組み合わせ計4種のテスト結果を踏まえて不等間隔爆発4バルブを採用した。開幕前のテストに参加したロッシ選手がこのエンジンを「スウィート」と表現したことが契機となり、シリーズを通じての技術テーマは「スウィート」とキーワード化された。

等間隔爆発のクランク
不等間隔爆発のクランク

エンジンはこの不等間隔爆発と、自然なエンジンブレーキ特性を達成するICS(アイドル・コントロール・システム)のさらなる熟成が特徴となった。不等間隔爆発は、走行中のトルク変動を最小限に抑え、アクセル操作に対してリニアな応答性を持つトラクション特性を達成した。また、並列4気筒でこの爆発間隔を成立させるため、各気筒の点火順序は従来の「1→2→4→3」から「1→3→2→4」に変更。燃焼室は吸入空気量アップと高い燃焼効率によりFI機能を最大限引き出す新設計の4バルブ燃焼室となった。さらに、自然なエンジンブレーキ特性を引き出すために行ったのが、EMSのひとつであるセミ・フライバイ・ワイヤーシステムの熟成。前年型のエンジンブレーキ制御はあらかじめ設定したマップによる演算を反映していたが、OWP3ではマップに加えて運転状況変化に対応するフィードバック制御を採用した。また、前輪と後輪の回転差を反映して効果的なトラクションを得るトラクション制御も投入した。
フレームは、安定性を重視したジオメトリーの最適化が施された。V4エンジン比較で軸間距離のショート化に有利な並列4気筒のメリットを活かし、リアアームを延長してエンジン懸架位置を相対的に前寄りレイアウトした。また、旋回中に生じる横方向のG変化に関わらず安定したサスペンション性能を引き出すため、フレームは横剛性を従来比で相対的に低く設定した。重心位置を下げた新リアアームとの相乗効果が加わり、高いコーナー進入速度、深くバンクしての優れた旋回性が特徴となった。
シリーズ戦では、ロッシ選手が開幕戦の南アフリカGPでホンダのM・ビアッジ選手と熾烈なトップ争いの末、僅差で優勝。これを含めてロッシ選手とYZR-M1は全9勝を飾り、チャンピオンを獲得した。またロッシ選手とチェカ選手の活躍により、両選手が所属するヤマハチームがチームタイトルを獲得した。しかし一方で、最高速や雨天時における戦闘力ではライバルとのビハインドも露呈し、優勝できなかったレースでの課題が残った。

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