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2003 YZR-M1(OWN3)

2007年 企画展 Vol. 1

2007企画展 Vol.1
YZR-M1の挑戦 ~MotoGP第一章 2002-2006の記録~

2003 YZR-M1(OWN3)

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Specification
エンジン 水冷4ストロークDOHC
気筒配列 並列4気筒
排気量 990c
燃料供給 フューエルインジェクション(FI)
最高出力 200PS以上
最高速度 320km/h以上
潤滑方式 ウェットサンプ
1次減速 ギア
クラッチ 乾式多板
変速機 6速
フレーム型式 デルタボックス
ホイールサイズ 17/16.5in(前後)
タイヤサイズ 17/16.5in(前後)
ブレーキ(前) 320mmカーボン
ブレーキ(後) 220mmスチール
重量(FIM規則準) 145kg以上
燃料タンク容量 24L


フューエルインジェクション(FI)&ICSの採用

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4ストロークと2ストロークが混走する2002年を経て、2003年はドゥカティやアプリリアも参戦した。出場マシンの大半が4ストロークとなり、このシーズンが事実上のMotoGP元年となった。ヤマハも前年はYZR-M1に加えてYZR500を投入していたが、2003年からはYZR-M1に絞って開発を進めた。この年、C・チェカ選手、M・メランドリ選手、A・バロス選手、O・ジャック選手、中野真矢選手、阿部典史選手(スポット)の6名がYZR-M1でシリーズ戦を戦った。
OWN3は前年の最終型をベースに、出力特性と旋回性能の向上をテーマに開発されたモデル。大きな進化は二つある。一つめは燃料供給方式をキャブレターからFIに変更したこと、二つめは従来のエンジンブレーキ制御システムをICS(アイドル・コントロール・システム)に変更した点だった。このFIは、気筒あたりの2個のインジェクターを持つツイン・インジェクターで、低中速ではメイン側が燃料供給を担い、高回転域ではもう一つのインジェクターからも噴射して許容回転数アップに対応した。FIへの変更は、各コースでのマッピング適応性、コントロール性、スロットルとリアタイヤの相関関係の最適化、また燃費性能の向上など電子制御ならではの特徴を引き出した。また、FIの採用に連動して過給用エアボックス容量も20%拡大。最高出力もYZR-M1の初期開発モデル比で約25PSアップとなった。
一方、ブレーキング時の車体安定性の向上に貢献したのが、エンジン性能を制御するEMS(エンジン・マネージメント・システム)としてのICS搭載だった。これは2002年に搭載していた電子制御クラッチによるエンジンブレーキ制御に替わるもので、通常のアクセル操作によるスロットルバルブ作動に加え、運転状況に応じて4気筒中の2気筒のスロットルバルブの開閉をECU経由のサーボモーターでアジャストするセミ・フライバイ・ワイヤーシステムとも呼ばれるものだった。制御に車速やエンジン回転数、ギアポジション、ブレーキ油圧、スロットルポジションなどの情報が反映され、制動時における高い安定性と旋回性を引き出した。


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また、フレームも新設計された。フロント廻りのジオメトリー調整機能などは継承しながら、前年型比較で縦剛性14%、ねじり剛性11%アップを図り、優れた剛性バランスを達成した。またエアロダイナミクスを投入した新設計カウルにより、優れた操縦安定性と高速性能を実現、最高速度は320Km/h(テスト値)を記録した。
レースではバロス選手の活躍が期待されたが、開幕戦の予選で転倒負傷。その後も怪我に悩まされるシリーズとなり、第4戦フランスGPでの3位獲得が最高位の成績でランキング9位に終わる。チェカ選手はヤマハ最上位のランキング7位、中野選手が最終戦を除く全戦でポイント獲得してランキング10位。この年のOWN3は、当初の目標どおりの出力・旋回性性能を達成したが、予選での好調をそのまま決勝結果に繋げることができなかった。

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