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ワークショップ・インタビュー

2006年 企画展 Vol. 2

2006企画展 Vol.2
RESTORATION ~蘇るかたち、蘇るスピリット~

ワークショップ・インタビュー

レストア業務の体制の項でご紹介したとおり、二輪車の市販モデルの復元作業は、当社のOBが中心となって行い、特殊性・専門性の高いファクトリー・レーサーのレストアについては、専任のスタッフが作業にあたっています。ぞれぞれの業務担当者にその苦労や喜びを聞きました。


私たちが復元する車両は、後世に残さなくてはならない大切な財産。  大野 晃英 【市販モーターサイクル レストア担当】

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Q:ヤマハ発動機が歴史車両を復元する目的と意義は?

まず一つは、歴史的な車両を復元することによって、たとえば以前、その車両に乗っていたお客さまには昔を思い出す楽しみをご提供できるかもしれません。それからもう一つ。過去の製品を復元することは企業文化の醸成にもつながると思います。レストアしたその1台1台の車両には、私たちが後世に残していかなければならないたくさんの内容を含んでいると思うんです。

Q:レストア作業の中で感じる苦労と喜びは?

レストアする車両はそれこそYA-1からごく最近のものまでありますが、古いオートバイは特に塗装の点で難しさを感じます。写真で見ても当時と同じ色を再現するのは難しいですから、さまざまな部品の中から色の褪せていない部分を探し出して、それをもとにして塗装をすることになります。
反対に喜びや楽しい点では、たとえばでき上がったオートバイをコミュニケーションプラザに運んだときの話ですが、途中で寄ったガソリンスタンドの女性店員さんが積んであるYA-1を見て、「このオートバイはいつ発売されるのですか?」と聞いてきたんです。半世紀も前の製品なんですが、今の若い人にとってもまだまだYA-1は魅力があるんですよね。そういう、見た人びとの反応が、私たちの大きな喜びです。レストアする者にとって非常に楽しい、やりがいを実感できる瞬間です。

Q:古い車両を分解する過程で、新たな発見などもありますか?

たとえばYA-1を初めて分解したときには、使われている各部品の精度の高さに驚かされました。以前、阿蘇山でYA-1の撮影があってそこで一日中走らせる機会があったのですが、熱ダレすることもなく、最後まで元気に走り続けてくれました。50年経っても十分に通用するものなんだ、YA-1って本当にいいオートバイだなと思いましたね。


完成したファクトリー・レーサーは、ヤマハレース活動の系図です。千明 優 【ファクトリー・レーサー レストア担当】

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Q:歴代のファクトリー・レーサーを復元する意義は?

復元されたマシンによって、モータースポーツファンやヤマハファンのみなさん、そして社員や関係者の方々にも、ヤマハが取り組んできたレースの歴史を伝えられたらと思います。歴代のファクトリー・レーサーはレース活動の系図のようなもの。蘇ったマシンがチャレンジ精神や技術の伝承につながれば、これほど嬉しいことはありません。

Q:ファクトリー・レーサーならではのレストアの難しさは?

歴代のファクトリー・レーサーは、先輩技術者の知恵と情熱の結晶です。また、さまざまな新素材を積極的に採用し、それらの加工技術や加工精度を突き詰めた最高峰のマシンですから、復元するためにはそれらの素材を再生する技術を理解しなくてはなりません。
その他にも、レーサーならではの難しさはありますね。たとえば1974年のYZR500(OW23)はマグネシウム材のホイールが採用しているのですが、マグネシウムは耐用年数が短いため、当時のホイールを再利用することはできません。そのために新たにホイールを作るのですが、またマグネシウムで作ってしまうと将来的に同じ問題が発生してしまうのでアルミ材の総削りだしでトライしたのですが、これが歪んでしまうなどなかなかうまくいかないんです。結局はホイールメーカーさんにお願いして、四輪車用の18インチホイールの素材を使用させていただいて完成にこぎつけました。タイヤにも同じような悩みが発生します。18インチのスリックタイヤなど、今では世界のどこを探しても販売していませんからね。

Q:レストア業務の中で、あらためて気づいたことは?

自分で作業をしていると、今のように高度な素材や工作機械がない時代に、よくこれだけのことを考えて、そして実現したものだと感心させられます。不可能を可能にするのは、知恵と情熱、そして資金。ファクトリー・レーサーはそれらの集大成ですから、多くの先輩たちが残してくれたこの財産の復元を担当させていただく責任をいつも感じています。

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