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ロードレースの歴史

2003年 企画展 Vol. 3

2003 企画展 Vol.3
WGP500最高峰への挑戦
ロードレースの歴史

  WGP発足~1955年のWGP500ccクラス

世界技術の粋を集めるWGP500ccクラス
WGPは当初、125cc、250cc、350cc、500cc、サイドカーの5クラス。なかでも最大排気量を誇る500ccクラスはまさに世界最高峰のレース。それだけに世界のバイクメーカーが自社の威信を賭けて技術開発に心血を注ぎ、技術の粋がそこに集結した。WGP開始当時、一般道を走る市販車では最高速100km/hを越えれば珍しいくらいの時代にあって、GP500ccマシンの最高速はすでに200km/hを越えていた。レーシング・マシンの工業技術はそれほどまでに繊細さと緻密さを究めていたというわけだ。そうしたモンスター・マシンが走る500ccクラスは、世界の自動車工業技術の最高峰として大いに注目を集めた。

1949年、WGP初年度
WGP緒戦のマン島で、500ccクラスはイギリス車ノートンが1-2フィニッシュ。その後はスイスのベルン、オランダのアッセン、ベルギーのスパ・フランコルシャン、アルスター(北アイルランド地方)のベルファスト、イタリアのモンツァと全6戦が行われ、最終ランキングではイギリス人のL.グラハムがイギリス車AJSでチャンピオンに輝いた。グランプリ発祥の地となったイギリスから海を越えたライダーたちは、ヨーロッパ大陸の各地を巡りながら世界選手権を争うこの戦いを自ら"コンチネンタル・サーカス"と呼んだ。モーターホームにマシンや生活用品を詰め込んで国境を越えていく、まさにサーカスの一団は独特の雰囲気を作り出した。

ブリティッシュ・シングルが席巻したGP創世紀

グランプリ初期に活躍したのがAJS、ノートン、マチレス、ベロセットなどのイギリス製4ストローク単気筒および2気筒マシン。'49年のAJS以後は、ノートンが'50年から3年連続でメーカー・チャンピオンを獲得した。イギリス車以外ではイタリア車が時に一矢報いることはあったものの、当時のGPの舞台には、日本人ライダーはもちろん日本製のマシンさえまだ影も形もなかった。

 当時の代表的GPマシン
AJS 500 Porcupine
●空冷4ストロークDOHC水平2気筒/カムギアトレーン/4速/45hp
 最高速115mph以上

Norton Manx 500
●空冷4ストロークDOHC単気筒/ベベルギアカムトレーン/4速/51hp/7,200rpm
 最高速140mph以上

  1956年~1959年のWGP500ccクラス

マルチエンジンの台頭、そしてMV黄金期へ
'50年代中頃になると、MVアグスタやジレラなど多気筒エンジンを積極的に開発したイタリア勢と古い方式にこだわったイギリス勢との立場が逆転。'53年にはイタリア・ジレラがG.デューク(英)をむかえ、ライダー、メーカーともに3年連続タイトルを獲得。そして'56年からはMVアグスタが、J.サーティース(英)、M・へイルウッド(英)、G・アゴスチーニ(伊)ら名ライダーとのコンビネーションで15年以上もグランプリを支配した。

 当時の代表的GPマシン
Gilera 500 Four-cylinder
●空冷4ストロークDOHC並列4気筒/カムギアトレーン/5速/70hp/10,500rpm
 最高速160mph以上

MV Agusta 500 Four-cylinder
●空冷4ストロークDOHC並列4気筒/カムギアトレーン/5速/75hp/10,500rpm
 最高速160mph以上

  1960年~1972年、ヤマハ挑戦開始までのWGP500ccクラス
日本メーカーの挑戦
事実上、欧州のライダーとマシンだけで競われていたWGPに、'60年代になると遠く日本からホンダ、スズキ、ヤマハ、カワサキが次々に参入。'59年にホンダが、'60年にスズキがそれぞれマン島TTでWGPデビューを果たしたあと、ホンダは'60年から、スズキとヤマハが'61年から125ccと250ccクラスにフル参戦、遅れてカワサキも'65年に参戦を開始した。当初はいずれも小排気量クラスのみだったが、'66年、各クラスを制覇してきたホンダが先陣を切って500ccクラスに4ストロークマシンで挑戦。しかも前年までMVアグスタで4連覇と活躍したM・ヘイルウッドを起用してその年にメーカータイトル奪取に成功した。
その後日本の各メーカーは相次いでGP活動を一時休止。'70年代に入って再び活動を開始するが、その口火を切ったのが1973年、『YZR500』OW20によるヤマハの500ccクラス初挑戦。同時にそれはWGP500ccクラスに2ストロークマシン時代の到来を告げるものであった。

1949~1972 WGP 500cc CLASS
RIDER/MAKER CHAMPION
YEAR RIDER
CHAMPION
MAKER
CHAMPION
1949 L. Graham(GB) AJS AJS
1950 U. Masetti(ITA) Gilera Norton
1951 G. Duke(GB) Norton Norton
1952 U. Masetti(ITA) Gilera Gilera
1953 G. Duke(GB) Gilera Gilera
1954 G. Duke(GB) Gilera Gilera
1955 G. Duke(GB) Gilera Gilera
1956 J. Surtees(GB) MV Agusta MV Agusta
1957 L. Liberati(ITA) Gilera Gilera
1958 J. Surtees(GB) MV Agusta MV Agusta
1959 J. Surtees(GB) MV Agusta MV Agusta
1960 J. Surtees(GB) MV Agusta MV Agusta
1961 G. Hocking(RHO)MV Agusta MV Agusta
1962 M.Hailwood(GB)MV Agusta MV Agusta
1963 M.Hailwood(GB)MV Agusta MV Agusta
1964 M.Hailwood(GB)MV Agusta MV Agusta
1965 M.Hailwood(GB)MV Agusta MV Agusta
1966 G.Agostini(ITA) MV Agusta Honda
1967 G.Agostini(ITA) MV Agusta MV Agusta
1968 G.Agostini(ITA) MV Agusta MV Agusta
1969 G.Agostini(ITA) MV Agusta MV Agusta
1970 G.Agostini(ITA) MV Agusta MV Agusta
1971 G.Agostini(ITA) MV Agusta MV Agusta
1972 G.Agostini(ITA) MV Agusta MV Agusta
1949年~1970年
WGP500ccクラスの名ライダー達

ジェフリー・デューク
1923年イギリス生まれ。GP優勝33回、タイトル獲得6回。グランプリ誕生以前からノートンのファクトリー・ライダーとして開発に従事。'51年にはノートンで、'53年からはジレラで3年連続500ccクラスのチャンピオン。

ジョン・サーティース
1934年イギリス生まれ。GP優勝38回、タイトル獲得7回。'56年から500ccで3連覇、また'58年からは350ccで3連覇。無敵を誇っていた。'60年には4輪レースへ転向、'64年にはF1チャンピオンにもなっている。

マイク・へイルウッド
1940年イギリス生まれ。GP優勝76回、タイトル獲得9回。アゴスチーニの登場以前にMVで大活躍。'66年にホンダでタイトルを獲得したあと10年ほど活動を休止したが'78年にマン島TTで復帰。'81年、不慮の事故で死亡。

ジャコモ・アゴスチーニ
1942年北イタリア・ベルガモ生まれ。GP優勝122回、タイトル獲得15回。'60年代半ばから10年間に及んだ350cc、500ccの完全制覇はまさに不滅の大記録。'75年にはヤマハに初の500ccタイトルをもたらした。
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