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挑戦期 1988年~1990年

2002年 企画展 Vol. 5

2002 企画展 Vol.5
パリ・ダカールへの挑戦  ~ 20年間の軌跡展 ~

挑戦期 1988年~1990年
長いトライ&エラーを経てパリ・ダカマシンのあるべき姿が鮮明になってきた頃、活動はレース専門グループ(モータースポーツ開発部門)の手に引き継がれる。
この時期のファクトリーマシン、4サイクル水冷並列2気筒『YZE750T Super Tenere』によるチャレンジが、やがて始まるステファン・ピーターハンセル選手の連覇の序章となった。
このヒュ-マシン(人機一体)技術の進化とあわせて、ライダーを支えるサポート部隊のスキルとチームとしてのシステム完成へのチャレンジも画期的に進んだ時代であった。

 


1988年 YZE750 Tenere(OW93)
レース専門グループ(モータースポーツ開発部)が手がけた最初の純ファクトーリーマシン。トップスピードよりもトータルバランスを重視して軽量、コンパクトな単気筒エンジンの可能性を追求した。パワフルな水冷750ccエンジンは、DOHC、5バルブでツインプラグを採用。全容量55リットルの燃料タンクは、メインと左右両サイドの3箇所に装備してスムーズなハンドリングに貢献している。サイドスタンドは、ツールボックスを兼ね左右どちら側からでも立てられるなど、模索期に積み重ねたノウハウが、数多く伝承されている。

● Engine type:Liquid-cooled 4-stroke DOHC 5-valve single-cylinder 756.8cc
● Fueltank capacity: 55L(main33L+rear22L)●Weight: 179kg

前哨戦としてエントリーした10月のエジプト・ファラオラリーでエンジンがまっぷたつに割れてしまった。翌日壊れたパーツを抱えてカイロ~パリ~アムステルダム~成田と飛んで帰りすぐ再設計を行った。「ソノート社ではトップが自らレースに出て、命がけ、社運を賭けてやっているんだ!」というオリビエ氏の怒りの表情を思い出しながら。
その後ファラオの轍を踏まないために、シリンダヘッド、シリンダーをすべて再設計、再評価して、首の皮一枚でパリ・ダカ本番に間に合わせた。わずか2ヶ月で完成させたマシン。レースでは、オフィシャルがゴール地点を間違えなければピコ選手が堂々の優勝だったはずだが・・・・。
(元MS2課 OW93プロジェクトリーダー 辰己晴夫)


1989年 HONDA NXR750
コンパクトなボディに水冷、V型2気筒、750ccエンジンを搭載したホンダ・ファクトリーマシン「NXR750」。 1986年の第8回大会にデビュー以来4年連続してパリ・ダカールラリーを制している。ゼッケン100は、1989年第11回大会で優勝したジル・ラライ選手のマシン。

[協力:ホンダ コレクションホール]


1989年 YZE750 Tenere(OW94)
ヤマハファクトリーが手がけた2年目のこのマシンが、最後の単気筒モデルとなった。エンジンは前年のツインプラグからシングルプラグに戻され、エンジン、車体ともに熟成は極限に達している。イタリアチームから出場したフランコ・ピコ選手がホンダNXRのG・ラライ選手と壮絶なバトルを演じわずか54分の差で2位となった。「91年と92年にツインエンジンで優勝したが、仮にこのYZE750でも優勝できただろう」とピーターハンセル選手は後に語っている。

●Engine type:Liquid-cooled 4-stroke DOHC 5-valve single-cylinder 756.8cc
● Fueltank capacity: 55L(main33L+rear22L)●Weight: 178kg

88年のYZE750(OW93)の開発で真夏にアフリカ・チュニジアで現地テスト行いました。砂漠のまん中に作った周回コースで、通常なら一周45分くらいのところなのに、ある日ライダーが帰ってこない。夜になっても帰らないので町の警察に捜索を依頼しました。2日目には空軍まで出動して探しても不明。行方不明になったのは、ピーターハンセル選手とメダルト選手の二人で「捕まっている、撃たれた」などの情報が飛び交う中、3日目にアルジェリアの国境警備隊から釈放の連絡が入ったのです。結局2人は、国境警備隊の威嚇射撃を受け、捕まって2晩勾留されていたわけで、マシンには銃弾の痕が残っていました。
(MS開発部 エンジン実験担当 武田章)


1990年 YZE750T Super Tenere(OW B8)
より高速なマシンへの要求が年ごとに高まる中で、長く単気筒エンジンでのチャレンジをつづけてきたヤマハが開発した初の2気筒モデル。1989年発売のヨーロッパ向けモデル「アドベンチャーツアラー XTZ750 Super Tenere」の水冷、DOHC、5バルブ、並列2気筒を802.5ccにボアアップ。高い信頼性を誇っていたYZEの操縦安定性に、大幅な高速性能の向上をもたらしていた。スペインチームのカルロス・マス選手が、熾烈なトップ争いの末カジバ900のE・オリオリ選手に次いで2位となった。

● Engine type:Liquid-cooled 4-stroke DOHC 5-valve paralleltwin-cylinder 802.5cc
● Fueltank capacity: 64L(main38L+rear26L)●Weight:199kg

シングルも限界かな? という感じがあった。パリ・ダカマシンは、ムースチューブのタイヤを使っている。このムースタイヤは、160km/hで発熱し、走りつづけているとバーストしてしまう。つまりマシン性能とすれば砂漠を160km/hで走れればよいわけで、そのためには70~80馬力で十分いけると最初から分かってしまう。それに気筒数を多くするとトラクションが出ない、トラクションが一番よいのは単気筒だが、単気筒では150km/hが限界。こうしてパワーとトラクションの関係から考えていくと2気筒になる。
(MS開発部 走行実験担当 岸本寛志)

 

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