農業用UGV(無人走行車両) 車両技術開発

これまでにない無人走行車両で、
農業の未来に貢献したい。

農業用UGV(無人走行車両) 車両技術開発
輿石 隆太

人手不足が深刻化する農業のために。

ファミリーレストランの4人掛けテーブルに4つのタイヤが付いたような形。運転席やハンドルはない。輿石が開発に取り組んでいる車両は、少し見た目が変わっている。もしあなたが何の予備知識も無く目にしたら、「一体、どんな場所で、どうやって使うの?」と思うだろう。

「私が開発しているのは、自動で走る農業用UGV(Unmanned Ground Vehicle:無人走行車両)です。車両の上面が平らなのは、収穫物を載せる作業やアタッチメントの取り付けをしやすいようにするためです」

特にターゲットとして考えている市場は、アメリカだという。

「アメリカの農業は今、人件費高騰や移民規制の影響で深刻な人手不足に直面しています。機械化を進めればよいのでは、と思うかもしれませんが、機械も運転する人手が必要です。こうした課題に無人走行車両で貢献できたらと考えています」

農業用UGVの開発は、複数のチームで進められている。「頭脳」に当たる制御システムを開発するチーム。「体」に当たる車両を開発するチーム。農薬散布や運搬などの用途を開拓するチームもある。その中で輿石は「体」、つまり車両を開発するチームのプロジェクトチーフを務めている。

「車両の形やどんな機能・性能を持たせるかを考え、全体のバランスを取りながら、部品の一つ一つまで設計していくのが私たちの仕事です。また、私はチームのリーダーとして、スケジュールの作成やメンバーの手助け、他チームとの相談や調整も行っています」

社員紹介写真
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相反する目標を、いかに両立させるか。

開発は、スタートから紆余曲折と試行錯誤の連続だった。

「農業用の無人走行車両というデータや情報のほとんどないものを形にすることが、非常に難しかったですね。まず『農業』の範囲があまりにも広い。どんな農作物を運ぶのか、走る場所は畑の中か果樹園か、などで形は変わってきます。一方で、幅広い農業分野に役立つ車両にしたい、という思いもあります。方向性を定めるまでに紆余曲折がありました」

検討が重ねられ、「小さくて小回りが利き、かつ重い物を運ぶことができ、かつ構造変更可能な車両」という目標が定められた。

「重い物を運ぶには、車両を丈夫にする必要があります。丈夫にすると車両は重くなります。重い車両を動かすにはバッテリーをたくさん積まなくてはなりません。バッテリーをたくさん積むには車両をより丈夫にする必要があります。すると車両はより重くなり……このように『重い物を運ぶ』という条件だけでも、矛盾と戦わなくてはなりません。さらに『小さくて小回りが利く』『構造変更が可能』という相反する要素を全て成り立たせるにはどうすればよいのか。この難題にチームで知恵を出し合い、形にしていきました」

その結果、完成したのが「ファミリーレストランの4人掛けテーブルに4つのタイヤが付いたような形」の試作機だ。

「この試作機は、うね(細長く直線状に土を盛り上げた所)に合わせてタイヤの幅が変えられる構造になっています。作物の高さなどに合わせて、車両の形も変えられます。小回りについては、4つの車輪が独立して駆動する機構を採用し、方向を問わない移動を実現しました」

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お客さまの人生を、より楽しく、より豊かに。

試作機はさまざまな機会を通じて世の中に披露されている。農業に関する先進的な技術を持った事業体や生産者が集う「北海道スマート農業サミット」ではデモ走行を行った。静岡県浜松市の体験型テーマパーク「はままつフルーツパーク時之栖(ときのすみか)」では現在、走行試験が実施されている。東京モーターショーには、試作機の考え方をベースに、農業の枠にとらわれない活用を想定したコンセプトモデルとして「Land Link Concept」が出展された。

「北海道で農家の方から『今すぐにでも使いたい』という声を聞いた時はうれしかったですね。一方で『もっとたくさん積めないと』『ビニールハウスの中で使うには大き過ぎる』などの声もいただき、農業の中でどの分野を狙うかの難しさを改めて感じました」

輿石は現在の試作機を「まだ赤ちゃん」と考えている。

「近い将来にメインターゲットのアメリカへ行き、試作機の評価を直接聞く予定です。この『赤ちゃん』を、これからさまざまなフィールドでお客さまの力になれる、しっかりとした『体』『頭脳』を持つ大人に育てたいと考えています」

製品の使用シーンだけでなく、お客さまの人生もイメージしながら、常に開発に取り組んでいるという。

「これからも開発を通じて、お客さま一人一人の人生を、より楽しく、より豊かにするお手伝いをしていきたい。『感動創造企業』という企業目的を持ち、さまざまな形でお客さまと交流し、社内には素敵な仲間がいる。そんなヤマハ発動機だからこそ、実現できることだと思っています」

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農業用UGV(無人走行車両) 車両技術開発
輿石 隆太
2008年入社

以前はスノーモビルの設計に携わっていました。ロシアに出張した際、圧倒的な大自然の中をスノーモビルで走った時の感動は忘れられません。その経験を生かし、厳しい環境でも安心して走行できる車両や、従来よりも簡単に操ることのできる車両の開発につなげることができました。

※所属部署、記事内容は、取材当時のものです。