組織や役割の壁を越え、
すぐに一体感が生まれるのが、
ヤマハの良いところ。

海江田 隆
1990年入社

直接、お客さまの反応にふれられるのが面白い。

入社後に配属されたのはIM事業部。産業用ロボットの設計エンジニアとしてキャリアをスタートさせたのですが、一人一人の守備範囲の広さに最初は驚きました。肩書きには「設計」とついていますが、実際は製品の企画、設計、試作、テストなど全てに携わり、生産に使用する治具も設計し、工程も生産現場担当と一緒に考えます。さらに販促ツールも自分たちでつくり、お客さまへの営業活動や交渉も営業担当と共に実施。不具合への対応も行いました。

社員紹介写真

ヤマハ発動機の中では規模の小さな事業部であるため、こうして一人一人が広い範囲を担っているのです。大変でしたが、仕事の全容が見えるし、何よりも自分の仕事の結果が良くも悪くもダイレクトに自分に帰ってくる点に大きなやりがいを感じました。

その後、ロボット技術部門のグループリーダーになったのですが、日々の仕事の中で営業部門のグループリーダーと丁々発止の議論を戦わせることも多々ありました。するとある日、事業部長が「君たち、入れ替わってみなさい」と言うんです。驚きました。お互いに要求していた意見がそうすればスムーズに実現するだろうと。確かにそうですが、普通の会社ではあまりないことですよね。

しかしその後、本当に営業部門のグループリーダーを務めました。営業の人間も技術にある程度詳しく、技術の人間も営業のスキルを持っている。そういう集団だからできたことです。

マネジメントスタイルを180度変えたきっかけ。

次に新しいパーソナルモビリティのコンセプトをつくるプロジェクトに参加。全社から30歳前後の若手十数人を集めて組まれたもので、私はサブリーダーを務めました。

通常のプロジェクトは本業と並行しながら定期的に集まって進めるケースが多いのですが、このときはメンバーに3カ月間、本業から離れてもらいました。場所も離れにある倉庫横の使われていない事務所を見つけ、そこにパソコン、コピー機、机、椅子を入れて、プロジェクトルームに。通常の業務から物理的に離すことで、まったく新しいアイデアを生み出すことが狙いでした。

社員紹介写真

この時、私のマネジメントスタイルはがらりと変わりました。IM事業部で技術部門のグループリーダーをしている時は、細かいところまで指示を出すスタイルでした。設計エンジニアとして積み重ねた経験と自負があるため、どうしてもそうしたくなるのです。

しかし、モビリティは私にとって未知の分野。これを機にスタイルを変えてみようと思い、スタート時に「一切、指示をしません」とメンバーに宣言したのです。あなたたちが動きやすいように環境は整える。必要なサポートもする。あとは自分たちで判断して動いてほしい、と。少し離れて見守る、というマネジメントスタイルです。

その進め方により、メンバーが世界各地を視察して出した提案の一つが、フロント2輪のLMW(リーニング・マルチ・ホイール)。カーブする時にフロント2輪が車体と同調して傾斜(リーン)する、新しいコミューターです。

提案を提案で終わらせず、地に足のついた事業に。

世界各地で発生している慢性的な渋滞や駐車場不足。環境意識の高まり。登場が待たれているのは、自動車よりもはるかにコンパクトで、二輪車に乗ったことのない人にも扱いやすいコミューター。こうした課題への解決策として、メンバーはフロント2輪のLMWを提案。私はそのアイデアを経営層につなぐ役割を担わせてもらいました。

若手社員たちが出した提案を、提案で終わらせるわけにはいかない、という思いもありましたね。結果、会社はLMWを事業化する判断をして、そのトップに私が任命されたのです。

社員紹介写真

まず取り組んだのは、MC(モーターサイクル)事業部内での人脈づくり。企画、開発、製造、営業など、全ての部署の懐に飛び込み、巻き込んでチームにしていくことを目指しました。地に足のついた事業にしていくには各部署にしっかりとLMWを理解してもらい、支援を得る必要があると考えたからです。

モノ創りの川上から川下まで携わっていたIM事業部時代の経験が役立ちました。理解を得るのに苦労はありましたが、好意的に受け止めてくれる人も多く、「面白そうだね」という人もたくさんいて、やりやすかったですね。

組織や役割の壁を越え、一つのプロジェクトや製品を中心にすぐに人が集まり、一体感が生まれる。これがヤマハ発動機の良いところです。

新たな組織の下で開発は進み、2014年、LMWの第1弾「TRICITY(トリシティ) 125」が発売。2016年には第2弾「TRICITY 155」も発売されています。

そしてLMWは、まだまだ大きく発展するポテンシャルを秘めています。これからは若い人たちが自分たちのアイデアで、未来の社会にマッチしたモビリティをどんどん生み出していってほしいと考えています。

※所属部署、記事内容は、取材当時のものです。