1984年

K・ロバーツのGP引退の後、ヤマハチームの布陣は、E・ローソン、V・フェラーリとなった。YZR500も進化して0W76となった。トップスピードで有利な従来のロータリーディスクバルブ吸気から、パワーバンドが広く始動性に優れるリードバルブ吸気へ変更された。全12戦のこの年もライバルはホンダ勢。F・スペンサー、R・マモラ、R・ロッシュ、R・ハスラムらが顔を揃えた。またホンダからは新たにV型4気筒マシンが投入された。スズキのファクトリー参戦はこの年見送られたがB・シーンは再びスズキを駆り参戦した。

G P参戦2年目のローソンは、開幕戦南アフリカで初優勝するとスペイン、オーストリア、スウェーデンで優勝。優勝4回、2位4回、3位１回、4位3回と全12戦で上位フィニッシュする安定した速さで初タイトルを獲得した。一方V・フェラーリはランキング10位に終わった。ホンダのスペンサー4勝、マモラが2勝し合計6つの優勝を飾ったホンダがコンストラクタータイトルを獲得した。

開幕戦の南アフリカは雨。V型4気筒ホンダを駆るスペンサーは、マシントラブルで転倒リタイアする中、ローソンはロッシュを抑えまず1勝目。かわって第2戦イタリアではスペンサーが好調な走りをみせ約20秒差で優勝、ローソンは2位。スペンサーは次の第3戦スペインまでの間に足を痛め第3戦を欠場。そのスペインGPでローソンは、マモラやロッシュを抑えて2勝目。続く第4戦オーストリアでもローソンは快調に走り3勝目を飾る。一方のスペンサーは、その後の西ドイツ、フランス、ユーゴスラビアと3連勝。ここまでの7戦で、ローソン3勝、スペンサー4勝を飾っていたが、ランキングではローソンが開幕から依然首位を守っていた。

スペンサーとのポイントにさらに差がついたのが第8戦オランダ。ノーポイントに終わったスペンサーに対し、ローソンは、ロッシュとマモラの激しいトップ争いの後ろについて堅実に走って3位表彰台を獲得、スペンサーとのポイント差を27点に広げた。ローソンはその後ベルギー4位、イギリス2位で終え、ランキング首位のまま残り2戦を迎える。一方のスペンサーは第9戦ベルギーで優勝するが、その後は怪我で振るわずランキング争いから後退。替わってオランダ、イギリスで優勝したマモラがランキング2位に浮上。首位ローソンと2位マモラのポイント差23点で迎えた第11戦スウェーデン。先行するマモラがトラブルでリタイアするが、ローソンはロッシュに3秒差で優勝。最終戦を待たずして初タイトルを手中にした。この年、全日本500ccチャンピオン平忠彦もスポット参戦、オランダ、ベルギーでは、いずれもW・ガードナー(ホンダ）に次ぐ6位でゴールした。

前年ランキング2位に終わったC・サロンは、1984年も市販TZ250を駆り出場、優勝3回、2位4回を含め109ポイントを稼ぎ初のチャンピオンに輝いた。このクラスでのヤマハのタイトルは3年連続、10回目。またコンストラクタータイトルも3年連続で獲得した。サロンは、開幕戦南アフリカは2位で終え、順調なシーズンイン。しかし、続くイタリアではノーポイント。第3戦スペインで再び2位に上がると、続くオーストリアで2勝目をあげ、ランキング首位に。続くドイツでも連勝してランキングでのリードを拡大。その後はオランダを除いて毎回上位でフィニッシュ。第11戦スウェーデンGPでは、ライバルのM・ヘルヴェ（Real)に優勝を譲るも2位でゴール。最終戦を残してタイトルを決めた。ヤマハチームから出場したC・ラバードは優勝１回、2位2回、3位2回を含めランキング3位に終わった。また、AMAスーパーバイクチャンピオンのW・レイニーがTZ250で参戦。第2戦のイタリアで3位表彰台を獲得するなどでランキング8位となった。