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コラムvol.15

ヤマハのレース活動50年の歴史をコラムでご覧いただけます。Vol.15「無敵ゆえに潰えた、幻の最強ナナハン」

vol.15 1977/RR/Formula750 無敵ゆえに潰えた、幻の最強ナナハン

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1975年デイトナ200マイルで優勝を飾ったジーン・ロメロとTZ750R

 排気量750cc以下で、200台以上製造・販売されたマシンによって争われるフォーミュラ750(F750)レースは、ヨーロッパを中心とするFIM杯、全日本選手権などで1973年から始まった。
 しかし、アメリカのAMA選手権ではそれ以前からデイトナ200マイルに代表される大排気量レースが人気を集めており、1960年代後半以降、ハーレーやノートン、トライアンフにホンダ、スズキ、カワサキの日本製ビッグバイクも加わって、いっそう大きな盛り上がりを見せていた。
 650cc・2気筒のXS-1以外に大排気量モデルを持たなかったヤマハは、1967年から350cc市販レーサーTR-2のプロトモデル(YZ608)でデイトナ200に参戦。1972年はTR-3に乗るプライベーター、ドン・エムデに初勝利を譲ったものの、続く1973年にはTZ350プロト(YZ634)を駆るヤーノ・サーリネンが優勝を果たした。
 しかし、いずれ勝てなくなることは明らかだったため、1971年から700cc市販レーサーTZ750(YZ648)の開発に着手。1974年デイトナ200に初めて投入し、ファクトリー仕様の0W19を駆るジャコモ・アゴスチーニ、ケニー・ロバーツのみごとな1-2フィニッシュでデビューウインを飾った。
 さらに翌年、排気量を750ccにアップした新型市販モデル(TZ750R)やファクトリー仕様のYZR750(0W29)を投入。優勝したジーン・ロメロ(TZ750R)のほか、スティーブ・ベイカーやジョニー・チェコット、アゴスチーニなどヤマハライダーが16位までを独占した。

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デイトナ200を含む5勝を挙げ、1977年F750世界選手権で初代チャンピオンに輝いたスティーブ・ベイカーのYZR750(0W31)。この年から、市販TZ750にも新型フレームやモノクロス・サスペンションなど0W31に準じるスペックが与えられた(日本国内は1978年発売)

 また1974年以降、全日本選手権やFIM杯のF750クラスにも数多くのTZ750が登場。ヤマハ国内チームをはじめ、各国のヤマハ販売会社、インポーター契約の選手たちが中心となって活躍し、しだいに他社製マシンを圧倒していった。
 その後1977年、F750に世界選手権が懸けられるようになると、ヤマハはモノクロスサスペンションなどYZR750(0W31)の仕様をそのまま引き継いだ新型TZ750を発売。当時の世界GP250や350を席捲していたTZ250/350と同様に、F750カテゴリーのあらゆるレースでスターティンググリッドを独占した。
 しかし皮肉なことに、それがTZ750/YZR750の寿命を縮める結果を招く。
 ひとつは、最高160PS近くまで達したといわれるエンジンの性能にフレームやタイヤの性能が追いつかず、耐久性が低下したこと。もうひとつは、ベスト5戦の有効ポイント合計でタイトルを争うF750が世界選手権になって、1戦あたりの参加台数を増やそうとシリーズ全戦の合計ポイント制に切り替えられ、ファクトリーチームもしくは全戦を追う資金力を持つ特定のライダーしか勝つチャンスがなくなってしまったためだ。実際、1977年のベイカー、1978年のチェコット、1979年のパトリック・ポンスといったチャンピオンたちは、いずれもそうしたヤマハ契約ライダーだった。
 これによって、F750世界選手権はわずか3年で閉幕。同時にTZ750も生産を続けることができなくなった。
 それでも、市場に残ったTZ750とYZR750(0W31、0W41)は、キャブレター制限付きのF750マシンに1,025cc以下の4ストロークマシン、500ccGPマシンを加えたアメリカのAMAフォーミュラ1クラスで活躍。特にデイトナ200では、デビューから1982年のグレーム・クロスビー(0W31)まで、負け知らずの9連勝※を記録した。

 またヨーロッパでは、TZ750エンジンがサイドカーのGPマシンなどにも転用され、長くチャンピオンマシンを支えた。
 水冷・2ストローク・ピストンリードバルブ・並列4気筒・748cc……。最強の名を欲しいままにしつつ時代の狭間に消えた、不朽の名機である。

※1972年TR-3(エムデ)から1984年YZR700(0W69)/ロバーツまで通算すると、ヤマハ車13連勝となる

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