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JRR JSB1000シーズンレビュー

JRR JSB1000の2013年シーズンをご紹介します。

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あきらめない闘志こそ中須賀克行の真骨頂!
大逆転で2年連続4度目のチャンピオン獲得

どれだけ厳しい状況にあっても、ヤマハ・YSP・レーシング・チームの中須賀克行は「絶対にあきらめない」とコメントする。心の集中を切らした瞬間、戦闘意欲や手に入れるべきリザルトはもちろん、ライダーとしての成長さえも失ってしまうことを知っているからだ。とはいえ2013シーズン、連覇を狙う中須賀の前途には、黒く怪しい雲が渦巻いていた。開幕前のテストで満身創痍のケガを負っていたのである。挫けそうな気持ちを押さえ込み、ひとつでも前へ。あきらめない戦いが続く。そして最終戦、ついに歓喜の瞬間が訪れた!シーズン5勝、大逆転でつかんだJSB1000チャンピオンの軌跡をひもとこう。

全日本選手権トップカテゴリーで4回目のタイトル獲得は平忠彦、藤原儀彦をしのぐ快挙

ケガとトラブルでつまずき
流れを失ったシーズン前半戦

 JSB1000ディフェンディングチャンピオン中須賀克行は、3月31日、ツインリンクもてぎでの2013シーズン開幕戦を3位で終えた。リザルトだけで見れば、連覇に向けて視界良好、上々の滑り出しといえる。しかし、実際は限界ギリギリの状況だった。開幕直前、鈴鹿サーキットのテストで転倒を喫した中須賀は、左肩を脱臼。加えてもてぎの予選でも転倒してしまい、満身創痍の身体で決勝レースに臨んだ。雨の中、痛みをこらえ本来のライディングができない状態での3位は、これ以上ない成績だった。
 その2週間後に行われた第2戦・鈴鹿2&4は、完全に我慢のレース。予選、決勝ともに5番手でレースを終えたが、第3戦は中須賀が得意とするオートポリスで開催される。さらに鈴鹿2&4から約1ヵ月半のインターバルがあり、身体の回復をはかることもできる。今季初優勝への期待が高まった。
 予選でポールポジションを奪ったのは柳川明(カワサキ)。しかし中須賀も、加賀山就臣(スズキ)に次ぐ3番手タイムをマークしてフロントローにマシンを並べる。そして決勝レース、終盤にスパートをかけた中須賀は秋吉耕佑(ホンダ)、柳川との激しい戦いを制してみごと優勝。
「まだぎこちないけれど、左肩の可動範囲が広がった。この状態で勝てたことは、チャンピオンシップを考えると本当にうれしい」と語った中須賀だが、続く第4戦・筑波大会ではまたも不運が待ち受けていた。屈指のテクニカルサーキットを攻略し、今季初のポールポジションを獲得して臨んだ決勝レース。津田拓也(スズキ)とトップ争いを展開していた7周目でマシントラブルに見舞われ、突然のスローダウン。無念のリタイアとなってしまったのだ。
 こうして、波に乗りきれないままシーズン前半が終了。中須賀はポイントリーダー高橋巧(ホンダ)に17ポイント差のランキング6位で折り返すことになった。

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怒濤の反撃!後半4連勝でつかんだ
奇跡の大逆転チャンピオン

 筑波大会から約2ヵ月のインターバルを挟み、8月25日、スポーツランドSUGOでJSB1000のシリーズ後半戦がスタートした。この大会は、同サーキット初の100マイル=43周のセミ耐久レース。チームは、ペアライダーに中須賀の先輩でありアドバイザーの吉川和多留を起用して臨んだ。
 左肩のケガも癒え、本来のライディングを取り戻した中須賀は、予選で津田に次ぐ2番手を獲得。ル・マン式スタートで始まった決勝レースも、給油を終えたレース終盤に勝負を仕掛け、津田、高橋をきっちりと抑えきって今季2勝目を挙げた。このレース、ペアライダーとして控えていた吉川の出走機会はなかったが、いつでも走れるようレーシングスーツのままピットで待機していた彼は、中須賀を精神的にサポートする大きな存在だったに違いない。
 そしてこの2勝目をきっかけに、中須賀の奇跡的な大逆転に向けたシナリオが動き始めた。「残るレースは全部勝つ」。そう心に誓って臨んだ第8戦は、相性のいい岡山国際サーキットが舞台。予選で今季2度目のポールポジションを獲得した中須賀は、決勝レースも中盤まで柳川と激しい首位攻防を展開。その後、バックマーカーを巧みに利用してトップに立つと、一気にスパート。終わってみれば、2位の柳川を約4秒も引き離す独走で3勝目を飾った。
「バックマーカーを抜くのが難しいコースなので、コース上が混み合ってくるタイミングを狙っていた」と、中須賀は会心の笑顔。豊富な経験を生かした作戦勝ちだった。そしてこの結果、中須賀はランキング3位、ポイントリーダー高橋まで7ポイント差に詰め寄り、いよいよ最終戦、2レース制のMFJ-GPを迎えることになった。
 不安材料があるとすれば、鈴鹿サーキットのフルコースを使ったレースで、まだ優勝経験がないこと。だが、今大会に逆転チャンピオンがかかっているのだ。中須賀のモチベーションは極限まで高まっていた。
 11月2日、土曜日の公式予選。Q1とQ2で最速タイムをマークした中須賀は、レース1、レース2ともにポールポジションスタートとなった。なかでもQ2では2分06秒226のコースレコードを樹立。決勝レースに向けて準備がすべて整った。
 そして迎えた決勝レース1。中須賀は、チャンピオン候補の高橋、柳川、津田に秋吉を加えた5人でトップ集団を形成し、激しいポジション争いを展開。そのなかで、中盤、秋吉をかわすと一気にスパートし、2位の柳川に3秒1の大差をつけて逃げ切った。この時点で、柳川がポイントリーダーに浮上。中須賀も2ポイント差のランキング2位となり、勝負はレース2へと持ち越された。
 しかし、そのレース2は波瀾の展開。予想どおり序盤から中須賀、秋吉、高橋、柳川の間で激しい首位攻防戦が繰り広げられたが、途中で雨が降り始め、トップグループは減速を余儀なくされた。この間、後方から差を詰めた渡辺一樹(カワサキ)がレースをリードするが、すかさず中須賀もペースを上げて追従。7周目に逆転すると、その後は独走で自身最多のシーズン5勝を達成。2位に滑り込んだ柳川をわずか1ポイント差で逆転し、2年連続・通算4度目のチャンピオンを獲得したのだ。
「予選のコースレコード更新が大きな自信になり、今回の混戦を勝ち抜くことができた。開幕当初はどうなることかと思ったけれど、僕自身もチームも、決してあきらめることなくがんばってきた。その成果がチャンピオンにつながったのだと思う」

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達成感と悔しさが交錯した
鈴鹿8時間耐久そして日本GP

 全日本選手権がサマーブレイクに入った7月後半。中須賀は、昨年に引き続きMONSTER ENERGY YAMAHA -YARTからFIM世界耐久選手権シリーズ第2戦 鈴鹿8時間耐久ロードレースに参戦した。パートナーはブロック・パークスとジョシュ・ウォーターズ。鈴鹿サーキットでもレース経験を持つ2人だが、計時予選では中須賀が2分07秒629を叩き出し、暫定トップを獲得。さらに上位10台で争われたトップ10トライアルでもトップタイムを記録し、チームを2年連続ポールシッターに導いた。
 7月28日の決勝レースでは、3人のライダーが的確に状況判断しながら、それぞれのライディングパートで想定どおりのペースをキープ。着々と上位のポジションを固めていたが、99周目、油圧センサートラブルが発生。ピットで長時間の修復作業を強いられ、完走こそ果たしたものの、210周・8位に終わった。
 また、中須賀にとってもうひとつのスペシャルなレースが、10月27日のMotoGP日本ラウンドだった。昨年のバレンシアGPで2位に入った実績を持ち、多くのファンや関係者の大きな期待が寄せられたが、YZR-M1開発スタッフで構成されたヤマハ・YSP・レーシング・チームからの出場であり、「マシン開発が最優先。まずは転倒せずに各セッションをきちんと走りきることが目標」とコメント。悪天候によりスケジュールが大幅変更されるなか、予選は12位にとどまったものの「ウェット路面でたくさんのデータを残すことができたので、とりあえず満足」と充実した表情を見せた。
 しかし、決勝レースは単独走行の11位。2年連続JSB1000チャンピオンという立場からすれば、もちろんこのリザルトは満足できるものではなかったが、「今回のGP参戦はYZR-M1の開発を兼ねたもので、マシンにはテストパーツが組み込まれていた。きちんと完走して開発チームにいいデータを渡すことができたし、これからやるべきことも明確に見えた。来年はさらにいいマシンに進化すると思う」
 MotoGPマシン開発と全日本選手権、2つの顔を持つプロフェッショナルライダー中須賀克行とヤマハの2013シーズンは、こうして多くの収穫と新たな課題を得て幕を下ろした。

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