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ヤマハ発動機株式会社 Revs Your Heart

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八代俊二YZF-R1インプレッション

八代氏が中須賀克行選手のYZF-R1試乗インプレッションをご紹介します。

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JRR JSB1000

八代俊二YZF-R1インプレッション|
独自性に満ちた
ハイパフォーマンスマシン!

全日本初登場から2年。2009年はチャンピオンマシンとなり、今年も日本最高峰JSB1000の舞台で高いポテンシャルを発揮してきた中須賀克行のYZF-R1を、八代俊二が試乗。独創的で個性の強いキャラクターのなかに高い戦闘力を見いだした。


2011年で参戦3年目となるこのモデル。来年はチャンピオンを奪還に向けスタッフの皆さんのモチベーションも高く更なる進化が期待される(右から2番目が八代俊二)
八代俊二 PROFILE: 1960年8月26日生まれ。全日本ロードレース選手権、世界選手権GP500に参戦。現在はジャーナリストとして二輪専門誌を中心に活躍中。MotoGPマシンをはじめ各メーカーのファクトリーマシンの実力を肌身で知る数少ないジャーナリストのひとり。

他を寄せ付けない中須賀専用車

 中須賀克行選手のYZF-R1を初めて試乗した昨年は半乾きの難しい路面コンディションに加え、コンパクトだが体の預けどころが分かりにくい一種独特なライディングポジションに馴染めず、自分の思い通りにマシンを動かすことができなかった。ただし、中須賀選手の卓越したライディングセンスと、ライダーの希望通りにマシンを仕上げたチームの総合力に唯々感心したことを思い出す。
 レコードラインがほぼ乾いた最後の走行時間帯にYZF-R1の試乗を持ってきた今年は、最初から安心してマシンをバンクさせられる分、思い切って体を預けられるようになったので、昨年よりマシンに対する違和感は少なくなった。
 まず外見から判断すると、中須賀号は見るからに背が高く、シート位置も高いことに気付かされた。跨がると、小柄な私だと頑張って爪先を伸ばしても両足が地面に付かないほどだ。実際、中須賀号の前に2台のCBR1000RRと1台のZX-10Rに試乗したが、中須賀号のシートの高さは突出していることがわかる。
 JSB1000参戦マシンの中でレスポンスが最も鋭い中須賀号のアクセルを慎重に開けながらピットロードを走り出す。ピックアップが良いエンジンとスリムで背の高いYZF-R1は空を飛ぶかのように加速する。走り出して真っ先に感じたのは、重心位置がとても高いということ。先に乗った3台と比べると自分が乗っている位置が明らかに高く、ヘッドパイプ及びその周辺に重量感がある。しかし、重心位置が高いからといって倒し込みが緩慢なわけではない。多少倒し込み初期に粘りがあるものの一旦バンクし始めたら、YZF-R1特有の素直に倒れ込んでいくフィーリングは健在だ。
 2009年型と違いがあるとするならば倒れ込んでいく過程でヘッドパイプからFタイヤまでの距離が遠く、Fタイヤの存在感(グリップ)が希薄になったように感じることだ。倒し込みでヘッドパイプが若干残るような粘りがあるのでマシンの存在感は強いのだが、マシンが倒れ始めてからはFタイヤの存在感が希薄でコースのどの位置を通過しているのかが把握しづらいのだ。これは体がマシンに馴染んできた3周目でも変わらず、鈴鹿サーキットのヘアピン先のシケインや最終コーナーのシケインでは、まったく理想のラインに乗せることができなかった。進入時に荷重が前後にどれくらいの配分で掛かっているのかが非常に分かりづらい。しっかりとFタイヤの接地感(グリップ)を感じようとアクセルを閉じたままで待っていると車速が落ちすぎて、シケインでマシンが浮き上がってしまう。サスペンションが伸び上がるとタイヤ表面のグリップ力だけが頼りになるので、シケインの中でマシンの挙動が不安定になってしまう。また、シケイン進入時にアクセルを戻している時間が長くなると、空気が不足した(チョーキングされた)エンジンはアクセルを開けた瞬間に鋭く反応するので、切り返しでアクセルを開閉するのが難しくなる。進入ではスピードを落としすぎず、コーナリングGでサスペンションを沈めたまま切り返し、コーナー立ち上がりでは素早くアクセルを開けて加速体勢を整えるのがこのマシンをスムーズに走らせる方法だが、これら一連の動作をスムーズにつなげられるようになるには、マシンに慣れるための時間が必要だと思った。

イメージイメージイメージ

クロスプレーンクランクシャフトの恩恵

 一方、2009年型からYZR-M1と同じクロスプレーンクランクシャフトを採用しているエンジンはアクセル開度に対して忠実に反応するのでアクセルを開けやすいが、10,000rpm付近からの吹け上がりは鋭く、瞬く間にレブリミットの14,750rpmに達してしまう。2009年型に比べ2010年型は確実にパワーアップしていると感じた。
 なかでも、低中速域は力強さが増し、レスポンスも鋭くなっている。反面、パワフルになった分だけ、アクセル操作が難しくなっているようにも感じた。また、中速域での力強さに比べ、高回転域でのそれは勢いが削がれる感じがする。エンジンが吹け上がる勢いに比べ車速が伸びないように感じられるのだ。それはフラットなエンジン特性に起因しているのか、それともライバル達に比べて背が高いカウリング、つまりドラッグが多い車体の影響なのかは分からないが、最後のひと伸びが物足りないのは気になるところだ。
 着実にパワーアップし、車体の剛性感も増した2010年型は、全体的にハードな仕上がりになっているように感じた。最終戦での転倒によりタイトルの連続記録が途絶えたYZF-R1だが、その実力がトップレベルであることに疑う余地はない。連続記録が途切れた悔しさを晴らすべく2011年型YZF-R1がどの様な進化をみせるのか、今から楽しみである。


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