上■ 中期経営計画の策定については、ほぼ完成に近い段階で社外取締役に提示され、それに対して社外取締役が意見を述べるような会社もあるでしょう。しかし、ヤマハ発動機では、料理に例えれば生煮えのような段階から、私たち社外取締役への説明がありました。それから何度も議論を重ねながら策定していきましたので、新中計には私たちの意見も随所に反映されています。また、その過程で、執行側の皆さんも私たちの意見から触発されることもあったようですし、一緒に計画をつくり上げていくという連帯感を持ちながら意欲高く議論に参加することができました。 河合 連帯感という観点でお話しすると、私が社外監査役に就任して最初のうちはコロナ禍の影響によって、監査役会や取締役会、またそれらの事前の打ち合わせなどもすべてWeb会議でした。しかし、私は新任で専門分野が金融や教育ということもあり、ヤマハ発動機の事業や業界についての知識不足をWeb会議だけで補うのは難しいと感じていました。そのあたりの懸念をご相談しましたら、コロナ禍が若干落ち着いたタイミングで工場見学をアレンジしてくださったり、事業や戦略について別途時間を設けて説明してくださったりしました。社内とのスムーズな連携によって、 私としても業務を理解した発言ができたと感じます。 田代 そうですね。私たち社外役員の意見を取り入れるための仕組みが整ってきています。取締役会も私が最初に参加した頃と比べて、議論の中身がかなり濃くなりました。「議論するにあたって、こういうことを説明してください」とお伝えすると全部答えてくださいますし、事前の資料も充実していますので、社外役員の関与が深まり、取締役会が非常に深化してきていると感じています。 上■ 私はいくつかの会社で社外取締役を務めています。どの企業も変わってきており、取締役会での議論はかなり活発になっています。それに伴って社外役員に求められることも増えていますので、ある意味社外役員の負荷は高まっているのですが、ヤマハ発動機を含め日本企業のガバナンスが良い方向に進んでいることを嬉しく思っています。 田代 ヤマハ発動機の皆さんはさまざまな機会を設けて、 私たち社外役員の意見を取り入れてくださっています。例えば、 社外取締役が過半数を占める役員人事委員会の機能も年々充実してきました。先ほど上■さんがおっしゃったように私たちの負荷が高まってはいるものの、こちらが提言したことに対していつも真■に対応していただけるので、前向きに取り組めています。 河合 社外役員の意見を取り入れるための独自性の高い仕組みとして、ヤマハ発動機にはCEO懇談会がありますね。初めて参加したとき、上■さん、田代さんをはじめ、社外役員の皆さんが本当に幅広い観点から、CEOの日髙さんに対してさまざまな意見をぶつけていらっしゃり、驚きました。CEO懇談会は、ガバナンスの実効性を高める重要な機関としての役割を果たしているように思います。 63全く忖度をせず、時には厳しい意見を述べられていて、まさに独立社外役員としての役割が機能していると感じています。
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