統合報告書2021年 日本語版(2020年12月期)| ヤマハ発動機
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キャッシュ・フロー(販売金融除く)財務体質の強化と成長戦略 2020年後半から現在に至るまで、強い需要に対して供給が過少な状態、つまり在庫水準が低い状態が続いています。お客さまや販売店さまには多大なご迷惑をお掛けしている状況ではありますが、財務面から見るとキャッシュ的にはポジティブな状況であり、在庫減少による運転資金の減少でキャッシュが増加し、販売促進費の抑制により収益性が向上することは、PL、BS、CFすべての数字にポジティブに働いています。2020年は、コロナ禍により在庫が少ないことによるメリットをすべての事業・拠点が否応なしに再認識することができた年となりましたが、これを機に、在庫および経費の適正なマネジメントの“体質化”を図ります。キャッシュ・フローやバランスシートを重視した財務戦略を進めるため、KPIとして導入した各指標、CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)は大幅に改善しており、拠点経営の重要指標としての定着を目指していきます。  現在は2020年の危機対応のために積み増したキャッシュが残っている状態となっていますが、成長戦略実現のために機動的に活用していくことも視野に入れています。なお、今回の危機対応は機動性を重視して銀行借り入れを中心に手当てしましたが、将来的には資金調達手段の多様化も図っていきます。また、成長性(CAGR)と資本効率(ROIC)を軸としたポートフォリオマネジメントの考え方については、次期中計策定の中で整理を進めており、2022年からの実装・実行を行っていきます。 持続的な成長に向けて 中長期戦略を実行するための成長投資の対象を選定する上で、当初からサステナビリティについては意識をしていましたが、昨今の脱炭素へ向けた動きの加速化を背景に、モビリティ系の投資ではカーボンニュートラルに貢献するものでなければならないという新たな判断基準を加えました。また、成長戦略を実現するためには従来の組織体制では不十分なことも痛感しており、成長戦略実現に特化した専任組織を強化すること、そして、各コア事業の中でも成長領域を明確に位置づけ、通常の事業経営の判断を超えた意図的な資金配分ができる管理体制を作ることを検討しています。 カーボンニュートラルに取り組むにあたっては、ただ「対応」するだけではなく、「攻め」に回ることが重要であると私は考えています。ヒューマンサイズの総合モビリティメーカーである当社にとっては、事業領域を拡げるチャンスです。元々、二輪や三輪は人々が機動的に移動できる合理的な乗り物で、四輪と比べてコンパクトであるため、環境負荷が圧倒的に小さい乗り物です。それを電動化等によってカーボンニュートラルに対応していくことは、合理性を重視し環境への意識が高い人々、特に世界中の若い世代に広く受け入れられる可能性があると思っています。長期ビジョン「ART for Human Possibilities」の実現に向けて、既存の二輪や三輪だけでなく、全く新しいカーボンニュートラルなモビリティも投入していきます。 当社は今後も安定的な財務基盤を構築しながら、既存事業の継続とともに、新しい事業領域の拡大を目指します。2019年2020年Cash-InCash-outCash-InCash-outCash-InCash-out2021年(予想) 当期利益  運転資金増減他  償却費 成長投資  株主還元  設備投資稼ぐ力を改善し、キャッシュを 成長投資と株主還元に再分配する。+92億円+646億円CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)*(日) 全社  米国  欧州  インドネシア  インド * 販売金融事業は除く0601201802019年2020年2021年(予想)31Yamaha Motor Co., Ltd. Integrated Report 2021

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