統合報告書2021年 日本語版(2020年12月期)| ヤマハ発動機
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社長メッセージ長期ビジョンの実現に向けて 新規事業の開発 外部環境が激しく変化し、人々の価値観の多様化が加速する中で、ヤマハ発動機として社会に提供していきたいと考える価値、方向性を明確に示したものが長期ビジョン「ART for Human Possibilities」です。  長期ビジョンの実現に向け、本中計ではコア技術など当社の固有資産を活用し、社会課題の解決に貢献しながら持続的に成長していけるようなビジネス領域を見極める期間と位置づけ、新規事業開発を進めてきました。そして、次期中計において選択と集中を行う方針でしたが、投資資金として見込んでいた中期のキャッシュ・フローが創出できない可能性を考慮し、前倒しで選択と集中に取り組むべきと判断しました。  これまで継続的に進めてきた「モビリティサービス」「低速自動運転」「農業」「医療現場の省人化」の各分野は、当社の技術・知見を活かし、強みを発揮できる領域です。これらの中から特に有望な案件を絞り込み、リソースを集中していきます。医療にかかわる案件は新型コロナウイルス感染症の流行により若干停滞していますが、それ以外については順調に進捗しています。  モビリティサービスでは、特に新興国におけるラストワンマイルのデリバリーや、渋滞の解消に向けたニーズが高まっています。このようなニーズに応えるべく、アフリカのプラットフォーマーに出資し、当社が生産する二輪車や部品を提供するなど協業を進めることで、デリバリーやモビリティサービスでの エコシステムの構築を目指しています。国内では、ランドカーをベースにした電動の低速モビリティを移動ソリューションとして提供する実証実験が各地で進められています。また、農業領域は密になることが少ないフィールドで行われることから、感染症拡大の大きな影響を受けることなく、さまざまな実験を 実施するなど技術開発が進展しました。 カーボンニュートラルへの対応 脱炭素の動きが世界的に加速しています。当社は2018年12月に「ヤマハ発動機グループ環境計画2050」を策定し、「持続可能な社会に積極的に取り組む企業」としての姿勢、目標、活動計画を打ち出してきました。このたび「環境計画2050」を更新し、2050年までに事業活動を含む製品のライフサイクル全体のカーボンニュートラルを実現する新たな目標を設定しました。詳しくは本冊子の「気候変動への取り組み」をご覧 ください。  当社のようにエンジン技術で成長してきた会社にとっては、カーボンニュートラルへのチャレンジは大きなリスクであると言わざるを得ません。しかし、「守り」として既存製品の電動化への置き換えを進める一方で、「攻め」として今までにない新しいモビリティの創造に取り組んでいく考えです。  まず、「守り」についてです。パワートレインの電動化については、お客さまにとっての価値と、規制の強化といった社会の要請の2つの視点を考慮する必要があります。電動化は技術的には可能であるものの、コストや航続距離などの面で現時点では商品性が低く、真にお客さまのニーズを捉えた商品の実現は非常にハードルの高い課題です。現実的には日常の移動を支える小型コミューターから、お客さまにとっての価値を見極めて既存製品の電動化に取り組む考えです。この状況を 今後30年で変えることは容易ではありませんが、一つひとつ着実に取り組みを進めていきます。  「攻め」の視点では、当社の強みである「小型パワートレインをベースにしたモビリティの技術」と「生産技術から生まれたロボットの技術」を組み合わせることにより、今までにない新しいモビリティの創造を目指します。例えば小型電動立ち乗りモビリティ「TRITOWN(トリタウン)」は、当社がラストワンマイルのモビリティの領域を攻めるとどうなるか、という視点で開発した製品です。現在は実証実験中ですが、ヤマハらしい提案16持続的な成長に向けてYamaha Motor Co., Ltd. Integrated Report 2021

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