中長期戦略の推進 2018年、当社が2030年に目指す姿として、長期ビジョン「ART for Human Possibilities」を策定しました。これは、 外部環境が激しく変化し、人々の価値観の多様化が加速する中で、ヤマハ発動機として社会に提供していきたいと考える価値、方向性を明確に示したものです。私は、排出ガスの規制強化や電動化、先進国における高齢化、ITやAI技術の発展などの社会の変化によって、当社が貢献できる領域は拡がっていると捉えています。これまで培われてきたコア技術と先進技術を組み合わせ、ビジネスパートナーとの共創を図りながら、人々が根源的に持つ能力や可能性を拡げる製品やサービスの提供を通して、より良い社会と生活の実現を目指していく考えです。 そのための戦略が「ART for Human Possibilities」ですが、この戦略における「ロボティクス」とは、制御やAIなどの先進技術の総称であり、全事業活動の次なる成長に向けた基盤となるものです。「ヤマハらしいソリューション」は、例えば実証実験を進めているような低速自動運転システム(LSM)の提供など、ソフト面でのソリューションの提供を、そして「変革するモビリティ」とは、「LMW(Leaning Multi Wheel)*」やEV製品に代表されるハード面でのソリューションの提供を意味しています。 本中計は、長期ビジョンの実現に向けた変革を進める最初の3年間という位置付けであり、経営基盤の刷新と、成長戦略の推進に取り組んでいます。2019年12月期は、前述の通り業績こそ厳しい結果とはなりましたが、成長戦略については計画通り順調に進捗することができました。* モーターサイクルのようにリーン(傾斜)して旋回する3輪以上の車両の当社での総称。経営基盤の刷新 開発・技術領域、製造領域、コーポレート領域の各領域で、 最新デジタル技術やデータを活用した基盤の刷新を進めて います。 開発・技術領域では「MBSE(Model Based System Engineering)」を進めています。設計から検証までの開発 プロセスにおいてシミュレーションモデルを活用し、強度解析、流体解析等を実施し、早期に問題点を抽出・解決することで、開発・製造を効率良く行うことができます。 製造領域では、「スマートファクトリー」の展開を進めてい ます。工場の操業状況を様々なセンサを用いてデジタルデータとして収集し、ビッグデータ解析を行い工場の操業にフィードバックします。異常の早期検知や予測が可能になり、ひいては経営の効率化に結び付いています。 コーポレート領域では、「ERP(Enterprise Resource Planning)」の刷新を推進します。グローバル企業としての 全体最適を目指し、基幹システムの標準化・統一化を図ります。間接業務を効率化してリソースを成長領域にシフトさせ、コスト削減と成長戦略遂行に取り組みます。社長メッセージ12持続的な成長に向けてYamaha Motor Co., Ltd. Integrated Report 2020
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