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「自律制御型無人ヘリコプターによる有珠山火山観測」の 「第33回市村産業賞 貢献賞」受賞について

2001年05月09日発表

 ヤマハ発動機(株)が地上からのパソコンによるプログラム操作で完全自動飛行を行なうことができるよう開発した「自律制御型無人ヘリコプター」による北海道・有珠山火山観測が、このほど産業分野での優れた技術開発功績に対して贈られる「市村産業賞 貢献賞」(主催:財団法人 新技術開発財団)を受賞致しました。

 「市村賞」は、三愛グループの創立者である故・市村清氏の遺志によって設立された財団法人 新技術開発財団(市村財団)の運営によるものです。 これは「科学技術の進歩、産業の発展、文化の向上その他国民の福祉に関し、科学技術上貢献し、優秀な国産技術の育成に功績のあった事業経営者、学術団体ならびに技術開発者」に対して表彰するもので、日本のデミング賞とも呼ばれています。「市村賞」には本賞のほかに、産業分野での功労に対して贈られる「市村産業賞」と学術分野での貢献に対して贈られる「市村学術賞」があり、これまでにも日本を代表する世界的に優れた技術者、学術者たちが受賞しています。

 第33回を迎えた今回は、さる4月27日に東京 ホテルオークラにて、財団総裁三笠宮寛人親王殿下のご臨席を得て贈呈式が行なわれ、「市村産業賞 功績賞」として3社、「同 貢献賞」5社、「市村学術賞 特別賞」1団体、「同 功績賞」1団体、「同 貢献賞」5団体がそれぞれ表彰を受けました。

 「自律制御型無人ヘリコプター」の開発研究は世界各国の大学、研究開発機関で進められていますが、当社は自社製品である産業用無人ヘリコプター「RMAX(アールマックス)」をベースに、GPSセンサーとジャイロセンサーを利用した高精度な飛行制御と、地上からのパソコンによるプログラム操作で完全自動飛行を可能にし、電波遮断時の自動帰還機能などを世界に先駆けて実用化に成功しました。そして2000年4月に建設省土木研究所(当時)の依頼を受けて行なった有珠山での火山噴火災害観測飛行では、有人ヘリコプターでも確認できなかった立ち入り禁止区域での多くの地形変化や火山灰堆積、泥流流出状況などを、機体に搭載したビデオカメラで鮮明な映像としてとらえることができ、復旧活動への貴重な情報として災害対策の一翼を担う事ができました。

 なお、当社では1995年に電動ハイブリッド自転車「パス」が第27回「市村産業賞 貢献賞」を、1997年にガスエンジンの排熱回収システム「Y-HOT」が第29回「市村産業賞 貢献賞」を受賞しており、今回が3度目の受賞となりました。



<参考資料>
自律制御型無人ヘリコプターの主な仕様諸元(RMAXベース)


<機 体>

メインローター径

3,115mm

テールローター径

545mm

全       長

3,630mm(ローターを含む)

全       幅

2,000mm

全       高

1,220mm

自       重

約93kg


<エ ン ジ ン>

種      類

水冷・2サイクル・水平対向

排   気   量

246cc

出      力

21ps

始 動 方 式

セルモーター

燃      料

ガソリン・オイル混合


<性 能>

継続飛行可能時間

約1.5時間

最 大 搭 載 燃 料

11リットル

飛  行  速  度

15~20km/h

飛  行  高  度

対地高度 30~150m

観  測  範  囲

2km圏

搭  載  器  材

ビデオカメラ、投下用スケール、航行用CCDカメラ(3基)


<主な技術的特長>


(1)高精度な飛行制御
・ GPSセンサーとジャイロセンサーの物理的特長を利用するセンサーフュージョン技術により、高精度な速度、位置データを計算。 高い静止性能(指定された空間座標に対して、1m以内に静止=無風時)と機敏な動作性能を両立させました。
(2)簡単な操縦
・ 地上に設置したパソコンの画面上をマウス操作することにより、3次元空間をリアルタイムで移動させる事ができます。またパソコン上の地図データで座標指定することで、ヘリコプターが自動的に移動、座標点を組み合わせる事で簡単にプログラム飛行を行なう事ができます。
(3)高い信頼性
・ ヘリコプター側で電波状況等異常事態を常に監視し、離陸地点を記憶しており、電波遮断等の異常時には離陸地点に自動帰還する事ができます。



当社のスカイ事業の概要について


1. 背景
 ヤマハ発動機(株)では、1983年農林水産省の外郭団体で農林航空事業を管轄する(社)農林水産航空協会から新しい農業用機器としての薬剤散布用無人ヘリコプターの開発委託を受けました。以来、鋭意研究・開発を重ねて来た結果、1987年産業用無人ヘリコプター「R-50」を完成。同年11月、茨城県で開かれた農林水産航空協会主催の「産業用RCヘリコプターの展示デモフライト」に参加、関係者が見守る中で初めて薬剤散布飛行を披露し、12月より市販に向けてのモニターを開始しました。
 産業用無人ヘリコプターは当時、各国で研究・開発が進められていましたが、ペイロード(有効積載量)20Kgを有する本格的な薬剤散布用無人ヘリコプターとしては、当社の「R-50」が世界で初のものとなりました。
 1988年には、長野県農業大学校で産業用無人ヘリコプターの教習カリキュラムに導入、その後の各県農業大学校への普及のさきがけとなりました。
 1991年、農水省は「R-50」による水稲への薬剤散布の指導指針を通達。当社はこれを受けて本格的な販売に踏み切りました。
 1992年には、農水省が無人ヘリコプター活用のための予算を計上、また全国農業共同組合連合会は無人ヘリコプターの普及促進を決定するなど、環境に優しい次世代農業機械として注目されています。
 産業用無人ヘリコプターは、現在農業がかかえている農業生産者の高齢化と後継者不足、農村構造の多様化・混住化による航空防除の補完、農産物の低コスト化など、さまざまな問題の解決に寄与するものとして注目されています。また、水稲以外への用途開発も進み、1992年度から麦・大豆、1993年かられんこん、1994年から大根、1995年から栗への防除も実用化され、さらに果実、野菜への適用拡大も進んでいるなど、水稲の一貫体系利用と合わせて無人ヘリコプターの有用性がますます高まっております。
 そして、従来重労働であった防除作業を軽減できたことから産業用無人ヘリコプターを使った新しい事業としての防除業(NACS)が全国各地で誕生しております。
 1992年からスタートした「全国産業用無人ヘリコプター飛行技術競技大会」は1998年には農林水産大臣賞が授与されるなどの盛り上がりを見せています。
 1995年3月から販売を開始したYACS(ヤマハ姿勢制御装置)によって、操作が難しいと言われている無人ヘリコプターが短時間の教習で散布作業が可能になり、資格を取得したばかりの人や女性オペレーターがおおいに活躍した年にもなりました。
 1997年10月にはペイロード30kgとし、取り扱い作業性を向上させた新機種「RMAX(アールマックス)」を発売いたしました。
 現在、当社の無人ヘリコプターの普及、保有台数は約1100機で、市場全体の約85%を占めています。また、操縦するオペレーターは全国で約6,000名に増加しています。
 2000年は26.8万haを越す散布実績となり、農林水産省が推進している低コスト農業における直播きの一貫作業体系で播種、除草、追肥、防除に使われる多用途な農業機械として、さらにはコントラクター方式で使われる高性能な農業機械として期待が増しています。
 そして現在、農業利用分野以外にも産業用無人ヘリコプターの活用を図るべく、GPSによる自律制御型飛行システムの研究など、新しい技術開発を積極的に進めております。2000年4月にはRMAXをベースとして開発した自律制御型無人ヘリコプターが、活発な火山活動を続けていた北海道・有珠山に建設省土木事務所(当時)の依頼を受けて観測飛行を行い、片道1.5kmという世界初の可視範囲外への実用飛行を成功させました。また2001年2月には東京都の依頼を受け、三宅島の火山活動による被害状況の観測フライトも行ないました。

2. 特約店数
全国23社

3. 主な用途
薬剤散布(水稲、畑作物、果樹ほか)、直播、除草剤散布、肥料散布など

4. 主な販売先
市町村、全農、県経済連、防除組織、農業生産者、防除会社など

5.「スカイテックアカデミー」について
 産業用無人ヘリコプターで薬剤散布作業を行うためには、操縦や薬剤散布に関する技能と知識が必要です。無人ヘリコプターを操縦するオペレーターとなるには、まず(社)農林水産航空協会(農水協)の指定教習施設である「スカイテックアカデミー」の教習を受講しなければなりません。このアカデミーに於て必要とするレベルの操縦技能をマスターし、農水協の発行する「産業用無人ヘリコプター技能認定証」の交付を受けて、資格を取ることになります。「スカイテックアカデミー」は全国各地のスカイテック特約店の所で行われており、現在、60ケ所で開校されています。


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