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モペット型モーターサイクルでオートマチックを達成する新技術 "Y.C.A.T."について 「第41回東京モーターショー2009」に参考出品

2009年10月19日発表

 ヤマハ発動機株式会社は、100~125ccのモペット型二輪車の自動無段変速機構(CVT)として、「Y.C.A.T.」(Yamaha Compact Automatic Transmission)と呼ぶコンパクトなCVTユニットを実用化した。
 当社は「Y.C.A.T.」を「第41回東京モーターショー2009」に参考出品するとともに、2010年モデルのベトナム向け製品を皮切りに、アセアン地域で導入予定のモペット型モデルに順次採用する。

 「Y.C.A.T.」は、スクーター用で実績があるCVTを大幅に小型化したもので、エンジン側と後輪軸間に連結されていた変速ベルトをエンジン内に組み込むことで、モペット型車両の外観のままオートマチック化を可能とするシステムである。この技術は、1)高弾性耐熱樹脂ベルトとの最適化を図ったシーブ(滑車)設計、2)冷却系の最適設計などで可能となった。これにより、モペット型二輪車でこれまで変速機が置かれていた場所にCVTを収めることができ、設計の自由度が広がるため、モペット型車両の汎用性とオートマチックの扱いやすさを両立できる。「Y.C.A.T.」では、シーブ間の距離を通常のコミューター用CVTと比べ約40%、ベルト全長は約60%に短縮し、パワーユニットのコンパクト化に貢献。従来型モペット用エンジンとほぼ同サイズのクランクケースに収まるサイズである。



製品写真

Y.C.A.T.の構造


Y.C.A.T.のメリット
1)従来型のコミューター用CVTでは達成できなかったユニットのコンパクト化
2)車両の設計自由度の拡大(シフトペダル廃止による居住性の向上など)
3)「高弾性耐熱樹脂ベルト」の採用による良好なレスポンスの達成と、伝達効率の向上
(エンジン単体でゴムベルト比20%の効率向上)



開発の背景

 アセアンの二輪車需要は、インドネシア・べトナム・タイ・マレーシア・フィリピンの5カ国合計で年1,055万台規模(2009年見込み)を示し、主体は100cc~125cc。この中で、2002年に当社が投入したCVTモデル(「NOUVO」などのオートマチックコミューター)への人気が高まっているが、一方では、従来からのモペット型二輪車(前後17インチ/変速機付き)にも根強い人気がある。安心感のある走行性、積載性など高い実用性が支持の理由で、シェアは約6割(当社調べ)。1台を家族で共用することも多く、モペット型車両のオートマチック化を望む声も多い。「Y.C.A.T.」は、この背景を踏まえモペット型二輪車の実用性・走行性をそのままにオートマチックの扱いやすさを備える新世代モペット提唱につながるシステムとして開発したものである。



CVTシステムの仕組みと着眼点

 スクーター・コミューター用のCVTは、エンジン側のシーブ(滑車)と、後輪側のシーブをVベルトでつなぎ、リアアームに収まる。変速比を無段階で変えるため、滑らかな走行性を備え、コミューター用には最適な駆動方式であるが、走行中シーブとの摩擦で熱が生じるため、外気が効率よく行き届くよう、ベルトには一定の長さを確保する必要があった。
 当社は、ベルト素材・構造とシーブ特性に着眼点をおき、素材と仕組みについての解析と実走テストを積み重ね、熱への問題を克服。クランクケース内に収まるコンパクトなCVTユニットを開発した。



「Y.C.A.T.」の特徴

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1)高弾性耐熱樹脂ベルトとシーブ(滑車)の最適設計
 「高弾性耐熱樹脂ベルト」は、166個に連なる樹脂ブロック(H型断面)と、ゴムで包まれた心線(アラミド)が密着する構造である。樹脂ブロックはベルトがシーブと密着する力(側面からの力)を受け持ち、心線はベルトを回転させる力(駆動力)を受け持つよう役割分担することで、優れた耐久性(当社社内テスト値/ゴムベルト比約2倍)を持ち、高弾性による優れた駆動レスポンスや、優れた燃費性能にも貢献する。
 このベルトに合わせ、「専用シーブ」を開発した。高回転域では前後シーブは、ベルトの密着で高負荷がかかり冷却性が求められるが、Y.C.A.T.では本ベルトとの最適化を行った。エンジン側シーブには、アルミダイキャスト製を採用し、クロームメッキ処理で十分な硬度を確保、また表面はミクロン単位で最適化した。被駆動側シーブには、ミクロン単位で表面粗度を最適設計したステンレス製を採用、表面の適度な凹凸は、優れた動力伝達性とベルト親和性を備えている。


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2)Y.C.A.T.の性能安定化を図るベルト室設計
 Y.C.A.T.では、外気を積極的にベルト室に取り込み、ベルト室内で空気が効率的に流動してベルトおよびシーブ冷却を促進できる設計としたため、特殊な冷却デバイスを備えることなく効率的に冷却性を確保することが可能となった。また吸・排ダクトの形状最適化により吸気と排出に伴うノイズを最小限とした。 


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